106 / 123
大きな戦いに挑もう
魔道具を見よう
しおりを挟む──そもそも現代チートをする必要って、あるのだろうか?
そりゃあ衣食住を満たすために技術を確信させるならばともかく、武器に関してはそこまで必要性を感じない。
いずれはこの世界の住民が、編み出すであろうからだ。
対魔物か対人かはともかく、戦うための手段とはいつの世も効率を求めるからである。
「──要するに、人はいつだって面倒ごとを避けるために苦労するわけだ」
異世界は魔法を駆使することで面倒ごとを減らしていた。
村人であろうと、魔法で水汲みを避けることができるぐらいだからな。
「地球だと井戸を進化させていたけど、そうしなくても魔法でできるから異なる技術が発展していった……それが魔道具」
魔法術式を保存しておくことで、誰でも等しい効果の魔法を発揮することができる……まあ、魔法の簡易版だよな。
「というわけで、何かいい魔道具を作ろうとしている。俺を楽にさせてくれ」
「……あの、あんまり困らせないでくださいよ。異世界の方って、ここよりもはるかに環境が整っているらしいではありませんか」
「だからこそ、近づけたいっていう気持ちもあるんだよ。『ファーレ』、いろいろやってみようぜ……あいにく、資料は全部兵器関連だけどな」
正式名はもっと長いらしいのだが、面倒臭いのでファーレという略称を名札にさせた。
古山人というモノ作りに長けたドワーフの上位種だが、奴隷になっていたので買って好きに魔道具を作らせているのだ。
……便利グッズって、あればあるほど楽になるからな。
試作品などはうちの奴隷に試させたのち、奴隷がやっている商会から売り捌いている。
「それにしてもこれらの武器は、とことん殺戮に特化していますよね。魔力を使わない、故にレベルが低く魔力をあまり持たない者ならば簡単に殺せる」
「地球は魔法が無いからな。遠くから一方的に殺せるようになることで、より多くの敵を殺せることを目指したんだよ。防御手段なんて最初は無かったからな」
「無いなら無いなりに工夫をするということですが……いい意味でも、悪い意味でも」
「まっ、別に銃があると認識したうえで物理攻撃を防ぐ魔法を使えばいいわけだ……というわけで、まずはそれだな」
クラスメイトを召喚した国は、銃をすべて魔法銃にする方法を考えている。
この国だけなら結界で対策ができるが、それ以外の方法も考えなければならない。
「物理障壁は相当難易度が高い術式なんですよ? 触媒も相当高くなります」
「金は別に、お前ら奴隷が生きていける分があればそれ以上はどうでもいいからな。必要経費なら国から奪えるから、思いっきり要求してくれ」
「……それならそれで構いませんが。イム様は、銃などに興味はないのですか?」
「どうでもいいな。わざわざ目標を定めて引き金を引かなきゃいけない面倒臭い兵器よりも、目を瞑っていても相手を殺せる魔法の方が便利だろう」
まあ、俺の場合は和弓女子からコピーした必中スキルがあるので、一度視認したものなら……それこそ目を瞑っていても中てることができるんだけどさ。
「面倒さが理由なんですね、イム様」
「まあ、そんなことはどうでもいいだろう。それよりも、できるだけ地球の技術をこっちの魔道具で再現したいな……もちろん、兵器とかはどうでもいいから、できるだけ日用雑貨とかを」
「……発明と争いは切っては切れませんよ。どちらかが進めば、必ずもう片方も発展します。これはこの世界でも変わりません」
「任せるさ。たしかファーレは、それが嫌だから奴隷にされたんだろう? だから、自由に研究させているんだ……人々に快適な生活ができるように頑張ってくれよ」
話している内に思いだしたが、たしかそんな事情だった気がする。
強要された兵器作成を断っていたら、いつの間にか冤罪によって捕まっていたと。
だがその腕はとても素晴らしく、故にそんな依頼が来るほどだったのだ。
俺も会ったときに鑑定でスキルを確認したが、思わずコピーを決めたいいスキルを持っていたよ。
「ま、まあ、たしかにできますよ。さ、さっそくですが、前に言われていた物を再現した魔道具をお見せします」
少々吃りながらも、部屋の奥から何かしらの魔道具を持ってきた。
だがその見た目は、指輪やイヤリングなどのアクセサリーである。
「ドライヤーとか冷蔵庫はもうできているんだよな。いったい何を作ってくれたんだ?」
「『すまほ』、というものです。イム様が所持していた物を拝見していましたので、仕組みさえ分かればどうにかなりました」
「……えっ、これスマホなの?」
誰がリング状のアイテムを渡されて、スマホだと認識できるのだろうか。
まあ、時計型のスマホみたいなヤツが出ていたわけだし、その最先端版だな。
「その、『あぷり』とやらはすべてではありませんが、ある程度機能も搭載できたかと。アクセサリー型にしたのは、わざわざその大きさにする必要が無いと思ったからです」
「あの形なのは、そうじゃなきゃいけなかっただけだし……たしかに楽な方がいいか。具体的に何が使えるんだ?」
「魔力を流すことで、連絡を行えます。これならば念話の魔道具でも可能ですが、こちらの魔道具は計算やこの魔道具を持つ者たちの座標を共有できるようになります……それぞれ許可した場合ですけど」
「ふーん、奴隷を呼びだすのに便利ってことか。機能が再現できないのは、材料費とかそういう問題だな」
さっきの話の流れ的に、おそらくはそれが理由なのだろう。
術式が難しいとか、そういう理由ではないのは分かっている……どんな天才だろうと、その才を発揮できる場所が無ければそれは無能と同意である。
「魔石が必要なら、錬金術で作った……これとかがあればいいか?」
なので、必要な物を提供する。
分かりやすい例を挙げるのであれば、ビーチボールとかそんな感じだろうか?
「……たしかに、それだけあれば問題ありませんけど。というか、大き過ぎです。普通、錬金術を用いてもそれだけの大きさにはならないはずですよ」
「できたんだから仕方ないだろう。たぶん、イメージの違いじゃないか? 物語とかだとよくあるぞ、成分とか原子とかそういう細かい部分まで意識してやると成功するやつ」
「……なるほど、そういった説もありましたね。今度、教えていただけますか?」
「面倒臭いな……まっ、アプリが使えるようになるためだし、協力するさ」
天才は一を教えれば十も百も理解する。
俺が数十秒苦心すれば、それ以上の価値を得ることができるだろう。
どこまで再現できるのか……楽しみだな。
0
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
俺の召喚獣だけレベルアップする
摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話
主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った
しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった
それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する
そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった
この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉
神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく……
※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!!
内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません?
https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる