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異なる世界に行ってみよう

精神を操作されよう

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 翌日、クラスメイトたちのテンションはダダ下がり……まるで葬式でもしているかのようなムードだ。

 いつもはうるさいと思っていても終わることの無かったトークの声は完全に聞こえず、静寂が場を支配する……家なら当たり前の環境が、他人と居る場でも久しぶりに味わえている。

 ──と思っていたのだが。

「みんな、少し良いかな?」

 我らの【勇者】ユウキ様が、自身の食事を終えた後にそう言い始めた。
 すると、クラスメイトは何やらそわそわし始める……ああ、面倒なことになりそうだ。

「昨日のダンジョンで、大切なクラスメイトが僕たちを庇って崖の底に落ちてしまった。だけど、ヤマト君が僕たちを庇ったのは、こうして悔やむためじゃない!」

「──(省略)前を向いて進むためにも──(省略)彼の有志を無駄にしないためにも、僕たちだけであの迷宮ダンジョンを攻略しようじゃないか!」

 あ~あ、やっちゃった~。
 ヤマト君が誰か、最初は分からなかったが今は分かる。

 ヒ……ヒメジってのは偽名だったんだな。
 俺にわざわざ偽名を使っていたのは、もしかしたらすでにチートを持っていたからか?

 まっ、俺はそのまま呼べば良いか──新しく覚えるのも面倒だし。

 ユウキは一つやらかした──それは、その彼ことヒ……ヒフミ君を死んだということにしたことだな。

 だって見ろよアッチを──

「大丈夫、アユミ?」

「う、ううん、大丈夫だよ。ヒデ君は絶対に生きてる。だって約束したもん──」

 ヒ……ヒトシ君のヒロインがやる気になってるじゃないか……というか約束って、いったいいつしたんだろうか。

 イジメられっ子って、異世界だと意外とモテる者なんだな。

「────」

 それからも、ユウキによる演説は続いていた……が、本当にどうでも良かったので、自分の意識を遮断してジッと終わるのを待つことにした。

  ◆   □  暇潰し  □   ◆

 さて、ダンジョン帰りの俺のステータスを見てみようか──

---------------------------------------------------------
ステータス
名前:イム・トショク(男)
種族:【異世界人Lv3】
職業:【停導士Lv2】

状態異常:催眠

HP:130/130(JOB+100)
MP:130/130(JOB+100)

ATK:50(JOB+10)
DEF:51(JOB+10)
AGI:50(JOB+10)
DEX:51(JOB+10)
MIN:52(JOB+10)
LUC:0

通常スキル
(言語理解)(鑑定)

唯一スキル
【停導士】
L(催眠魔法)(過剰睡眠)(意識遮断)
NEW
(解晰夢)〔+(限界突破)〕

祝福
(地球神の加護)
---------------------------------------------------------

 種族値が上がると、その間に行った動作によってHPとMP──身力値──かLUC以外の下のヤツ──能力値──にポイントが自動的に割り振られる。

 これは『異世界人』に問わず全種族共通のことで、割り振られる確率に差異はあれどだいたい同じ……なんだとか。

 ゲームっぽいシステムだと思っていたが、まさかの[ヘルプ]機能まであったんだよ。

 うん、『OK,Goodgle』みたいな感じでこれは何と訊ねると、勝手に頭の中に答えが返ってくるというわけだ。


 閑話休題へい、シリ


 他の説明も……いちおうしておくか。

 状態異常はそのまんま、俺自身に催眠を施しているからだ。
 理由は説明するのが面倒なので、今はやらないでおく。

 JOBと書かれた部分は、【停導士】の能力によって得た補正値である。

 導いた人数に応じて、補正が入る……これは個人情報が関わっているからか[ヘルプ]機能も応えてくれなかったので詳細不明だ。

 まあ、あのリュウハン君が魅了していた鑑定を使える女……名前は思い出せないが、ソイツを導いた後に増えた補正なので、二人以上が条件だったのかもしれない。

(予想外だったのは、本当にスキルがコピーできることだよな。なんとなくできると思ってはいたが、まさか夢越しにそれができるとか……限定的だけど過去に干渉できるって、本当チートっぽいな)

 レベルアップした【停導士】が新しく解放していたスキル──(解晰夢)。

 失敗する可能性もあるが、過去を再現した夢の中で使われたスキルを、一つだけコピーできるという能力である。

 なんとなくで感じ取った条件だと、俺とのレベル差やそのスキルのレア度、あとは解析に掛ける時間などが条件らしい。

 あとは運も関係するらしいが……そこは0なのでどうでもいいだろう。

 コピーしたスキルは別のスキルをコピーするとリセットされるらしいのだが、その前に自力で使えるようにすればそのまま習得できるらしい。

 ゲーム的に考えれば──熟練度を借りている間にマックスにしておけば、リセットされてもそのまま使えるということだ。

 コピーしたのは──ユウキの(限界突破)。
 俺には絶対に会得できないと理解できていた、だからこそコピーしたスキルである。

「──────」

 ……ってまだ演説してたのかよ。もう二十分は過ぎてるんじゃないのか?

 聴覚を催眠でカットしていたため気づいていなかったが、まだユウキのお話は続いていたみたいだ……催眠終了っと。

「──みんな、強くなろう。もう誰も失わないように!」

『オォォォオオッ!!』

 あっ、ちょうど終わったみたいだ。
 クラスメイトの瞳にも、何やら熱いものが籠められている気がする。

 ……うんうん、青春だね~。

  □   ◆   □   ◆   □

>儀式魔法“真理誘導”の影響が確認されました
→影響を無効化しますか?

     〔YES〕/〔NO〕

  □   ◆   □   ◆   □

 ……全然青春じゃ無かった。
 儀式魔法って、凄い怪しい単語が脳裏には表示されていたよ。

「そういや、こういうヤツって鑑定できるのか?(ピコンッ)……うん、本当にできちゃうのか」

 その情報もまた、脳裏にって……これもどうにか[ログ]とかで出ないか……また同じ音が頭に過ぎって、視界に表示された──

---------------------------------------------------------
魔法名:真理誘導

属性:精神 系統:干渉 階級:儀式級

■■■…………

[■を開示するには、条件が満たされておりません]
---------------------------------------------------------

 表示はできていたが、詳細の方は確認できなかった。
 だが、その部分だけ分かれば充分だ。

(精神干渉魔法……真理が心理と掛かっているのか? 結局どちらにせよ、誘導されていることには変わりないしな……。誰が使ったかは分からないが、どうせ王道のパターンなら、俺たちのクラスを軍事運用か?)

 クラスメイトのスキルリストに、儀式魔法に関する物は存在していなかった。

 たとえ先のレベリングで入手できた物だとしても、儀式なんていかにも時間の掛かりそうなものを昨日そこらで準備できるはずが無いだろう。

「……ああ、やっぱり面倒だな」

 結局俺は、いつものように悩まされる。

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