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外国へ遊びに行こう
エレベーターに乗ろう
しおりを挟むバカ一直線の第二王女と、面倒なことを思考したくない俺ではいいアイデアなど浮かぶわけもなく……愚直と楽優先の考えが一致した結果──都市中枢へ乗り込むことになる。
やはり金持ちは高い所が好きなようで、なぜかこの世界にも存在する高層ビルのような建物の中に入った。
「──承りました。すぐに確認します」
クラスメイトが会いに来た、というだけで会ってくれるのだからコネは楽だ。
アキラ……とかいうクラスメイトも、ずいぶんと学友とだけでセキュリティを軽くしてくれる。
ビル一階で受付嬢にそう伝えると、電話らしき魔道具で何やら連絡を行う。
その隙に俺と第二王女は、改めて最後の確認をしておく。
「なあ、イム。本当に行けるのかよ」
「まあ、実際入れてるわけだし……もともと外交の書状を使えば捻じ込めたはずだぞ? それなりに価値はあるんだからな」
「そうなのか?」
「そうなのかって……本当、お前って第二王女なのに王女感が無いよな」
第一と第三は腹黒さが表に出てくるほどに禍々しいというのに、コイツだけはポンコツというかある意味ピュアというか……。
まあ、要するに浄化装置だな、きっとあの王もそういうことを考えているだろう。
「……さすがに分かってるよ」
「そうそう、正直になればいいんだよ」
「殴っていいか? というか、殴る」
「はいはい、ダメだぞダメダメ」
などと時間を潰していると、先ほどの女性が戻ってきて行き先を指定する。
案内されるのも面倒だったので、言われた場所に二人で向かう。
「ここの二十階……最上階か。本当、バカと煙は高い所が好きだよな」
「お、おいイム……床が揺れるぞ!」
「エレベーター……まあ、これの場合は下から風で押し上げているんだよ。空間魔法じゃないから、コスパもいいみたいだな」
「な、なんでそんなに落ち着いてんだよ!」
こういうの、創作物にも在ったし。
そういうのを見て開発したんだろうな、王族である第二王女が知らないということは。
それともどこかの国にはあるのか? 外交全然していない王女だからな。
「名前を知っている。つまりは知っていたということだ。俺の世界には、魔法が無くてもこれができる仕掛けがあったんだよ」
「す、スゲェな……」
「その気になれば作り方も思いだせるだろうけど……要るか?」
「い、要らねぇ!」
まあ、こういう運搬の仕方を考えているという構想そのものは伝えておかないとな。
地球版と魔法版、一般人には考え付かない使い方が浮かぶかもしれないし。
移動時間はエレベータ同様、モノの数十秒で到着。
ただ、魔法で辺りを索敵したり時間を遅くしていたので、それなりに時間がかかったんだが……早いと掛かる重力もアレだしな。
「えっと……この部屋か。本当、ガラス張りとかバカじゃねぇの」
「…………」
「第二王女、落ちないから大丈夫だ。だから俺の服を掴むな」
「べ、別にそういうことじゃねぇし! た、高い所が怖いわけじゃねぇぞ!」
なんだか顔面蒼白な上にガクブル状態の第二王女、高所恐怖症か?
いや、それだと移動にアシを使ったときに問題があるはずだし……ああ、乗り物と自分で立つのは別問題ってやつだな。
「そんなに怖いなら魔法で怖くならないようにしてやろうか?」
「だ、だからそうじゃ……だが、せっかくだから試してやろうではないか」
「……なんか、口調が変わっているぞ。まあいいや──『第二王女、お前は高い所なんていっさい怖くない。少なくとも、俺を手元に抑える限りは』。これで大丈夫だろ」
「…………本当によくなった」
まあ、こればかりは催眠魔法の力を借りるのがもっとも手っ取り早い。
精神魔法でも安定させることは可能だが、維持するのが少々面倒だ。
しかし、催眠魔法であれば条件さえ整えればいつどんな状況であろうと、対価無くその刻んだ暗示を実行することができる。
今回の場合は……言った通り、俺が近くに居れば高所恐怖症にならないってことだな。
「ほら、さっさと行くぞ」
「お、おう!」
たしか、クラスメイトの名前はアキラだったな…………誰だっけ?
◆ □ ◆ □ ◆
「久しぶり…………アキラ」
「お前、イムか! なんだなんだ、どうしてお前がここに!」
「ん? まあ、こちらにいらっしゃる高貴なお方の護衛だよ」
どこにでもいる普通の学生……はずいぶんとイメチェンしているようで。
どうにか記憶の中から引っ張り上げたアキラという学生とは異なり、さまざまな宝石で自身を装飾している。
そのすべてが魔道具という点を加味したとしても、さすがに多いと思える量……何か事情でもあるのか?
なんてことを考えている内に、第二王女がいつの間にかアキラとやり取りをしている。
内容は……まあ、どうでもいいから適当に聞き流しているけど。
さすがに第二王女でも、どストレートに開発を止めろなんて言わない。
あくまでヴァ……あの国へ情報を横流ししているヤツの情報を、それとなく聞き出そうとしているだけだ。
「──お、教えていただけませんの?」
ただ、口調がとてつもなく気持ち悪いが。
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