上 下
87 / 119
外国へ遊びに行こう

一人を選ぼう

しおりを挟む


 アッシーを呼んで王城に乗り上げた。
 毎度のことながら『助けてッス』とほざくダメ亜竜には、ご褒美をプレゼントすけんをつきつけることで張り切ってもらった。

 呼ばれているのは俺で、誰が呼んだのかを理解している王城内部の関係者は、ただ不憫そうな目でこちらを見てくる。

 ……妹のパシリとして動いている時も、そういう目が多かった気がするな。

「──たのもー、帰っていいか?」

「いきなりだな。だが、聞くべきこととやるべきことがあるから駄目だ。聴いておいた方が身のためだぞ?」

「……はぁ、分かったよ」

 侵入した王の間に、すでにスタンバイしているメイドのリディア。
 勝てない相手には極力逆らわない主義なので、大人しく王様の話を聞いておく。

「うむ──結論から言えば、異世界人が原因の問題だ」

「……本当、クソだなアイツら」

「イムも含めて、異世界人は問題を引き起こしやすい。どこかの問題児イムは別として、ほぼ全員がヴァ―プルの儀式魔法によって本性を曝け出しやすくなっているからな」

「……面倒だからツッコまないぞ」

 俺以外にも、たしか効いてなかったヤツがいたはずなので問題児は俺じゃないはず。

 それとヴァ―プルの儀式魔法、たしか言うことを聞くだけでやる内容まで縛らないはずだし……悪いのはアイツら自身じゃん。

「目的地はオーニキ。商人たちが集まる都市なのだが……最近は異世界の技術に悩まされていてな。どうやら、経済に悪影響が起きているそうだ」

「ふぅん、そりゃあ大変そうだ」

「技術はすべてヴァ―プルに吸い上げられ、異世界人はそれに構わずアイデアだけを送り続ける……このままでは、金の天下がヴァ―プルのモノになってしまう」

「まあ、それは大変なことですわ! ……これでいいか?」

 しっかりと驚いたリアクションをしたはずなんだが……どうやらお気に召さなかったみたいだ。

「……フレイアの声でそういったことを言うのは止めてくれ。で、できるなら、もっとこう……『パパ、大好き』など」

「──何を言っているの、父上?」

「フ、フレイア!?」

「あら、本物が帰ってきたわ……ああ、お帰りフレイア」

 残念、お父さんの細やかな願いは叶う間もなく防がれてしまった。
 ご本人が来たのなら、当の本人にやってもらうのが一番だしな。

「なんで、イムの方が速いの?」

「俺には便利な乗り物アッシーがあるからな」

「そう……それより父上、先ほどのお言葉はどういうことですか?」

「うぐっ! そ、それは……」

 さて、俺に関してはどうしようもないと理解しているフレイアは、視線をすぐに自分の父親に向けて凍えさせる。

 だがそんな事情はお構いなし。
 声を直した俺は、改めて話を聞く。

「それで、俺はそこに行けばいいのか?」

「う、うむ。だが、これは外交も兼ねてのことだ。誰か一人、娘を連れて行ってほしい」

「…………」

「なんだ、その目は?」

 そう尋ねると、プイッと別の方向に顔を逸らすフレイア。
 メイドリディアは何故かフレイアと俺を見て笑っているが……本当、なんでなんだろうか?

「まあ、いいや。ここに来るまでに、誰と行くかは決めてある」

「! …………」

「ふむ、してそれは誰だ?」

 そして、その名を告げる。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 空を飛んでのまったり移動したかったのだが、着地点が無いのと外交だという理由のせいで歩いていくハメになった。

 百歩譲っても、空間属性の魔法かスキルを使えばよいものを……。

「……い」

「まったく、面倒な旅路だよ。やる気が無い奴にはそれなりのサービスを用意しておくのが相場だというのに」

「……おい」

「とりあえず、目的地までは寝ておくか。やることは済んだし、あとはどうでもいいや」

 誰かが呼んでいる気がするが、暗示で必要だと思った声以外はシャットアウトしているはずなので気のせいだろう。

 そう、あくまで同行者の声以外はしっかり遮断しているので──

「おい、話を聞けよ!」

「……なんだ、人の耳元でそんなに大声を出して。仮にも王女様だろ? ならもっと、お上品さを大切にするべきだ」

「わざわざテメェに敬語を使う必要なんてあるのか? って、そうじゃねぇ! どうしてずっと無視してやがった!」

 咆える第二王女を適当に嗜めるのすら面倒だったので、そのまま無視……したかったのだが、体を強引にシェイクされてしまってはどうしようもない。

 まあ、スキルの補正で体の器官は無事だし回復魔法である程度は治せる。
 何より暗示を掛けているので、そこまで辛くはならない。

「はい、はい。もう、分かった、から。それで、何が、言いた、い?」

「──なんでオレなんだよ!? フレイアが行きたそうだっただろ!」

 とりあえずシェイクから解放してもらったので、そのお礼に質問に答える……なんだかマッチポップ感がいたたまれないが。

「じゃあもし、俺がフレイアを連れていこうとしたら?」

「ぶん殴る!」

「じゃあもし、俺がお前の姉を連れていこうとしたら?」

「ぶん殴る!」

 つまり、選択肢など最初から存在しなかったわけだ。

 重度のシスコンである第一王女より、物理的に干渉してくる分、第二王女の方が面倒だと感じたのでこちらを連れてきた。

 ──そんなこんなで、俺と第二王女による旅が始まったってことで。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。 賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!? フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。 タイトル変えました。 旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~ ※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。 あまりシリアスにするつもりもありません。 またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。 感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。 よろしくお願いします。 想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。 ※カクヨムさんでも連載はじめました。

実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。

処理中です...