上 下
75 / 123
外国へ遊びに行こう

掃除をしよう

しおりを挟む


 魔族からの目もだいぶマシになった。
 力こそが尊ぶべきモノと考えられる脳筋国家ともなれば、その国民たちもまた単純な奴らが多いわけだ。

「おめでとう、イム。これで立派な外交官として、魔族にも認められたよ。そして、これからは人類連合の敵決定だ」

「人類連合?」

「ヴァ―プルが提案した、勇者を旗頭とした魔王討伐同盟だよ。勇者の同郷者が裏切ってこっちと内通しているって……面白いよね」

「ヴァ―プルってどこの国だ?」

 え゛っ? と驚く魔王だが……本当に心当たりがないんだよな。
 すぐに召喚をした国だと説明されるが、覚えてなかったのだから仕方ないだろう。

「まあ、そのヴァ―……パープルのことはどうでもいい。それより、例の話は?」

「そっちは了解。すぐに書状でも書いて、イムに持たせるよ……それとも、使いでも用意した方がイイかな?」

「いちいち面倒だから要らねぇ。そんなの用意するぐらいなら、俺が直接繋いでやるよ」

「それも良さそうだけど、今は止めておこうかな。もう少し、準備した方がいいからね」

 文字通り、悪魔的な頭脳を手に入れている魔王の考えなんて俺には分からない。
 思考停止、と言われても構わないが……本当にどうでもいいんだよ。

「帰るときに書状は渡す。だから、イムには少しの間ここに居てもらうよ」

「──ハッ? 嫌に決まってるだろ。それならこっちにも条件がある」

「条件? まあ、言ってみてよ」

 俺がそう言うのは分かっていたのか、間を開けることなくそう言ってくる。

 そう言ってくれることはこちらもなんとなく理解していたので、すぐに自分の望みを伝えておく。

「大使館でも造って、そこを俺専用の住処として提供しろ。そこは外交特権……たしか、法の枠外だっけ? にしておくんだな」

「…………ああ、そういうことね。それぐらいなら、構わない。イムが少しでもこの街に居たいと思えるなら、軽い条件だよ」

 外交特権とは要するに、勝手に侵入することを認めなくする素晴らしいモノだ。

 捕まえられないし、助けを求めれば保護してくれる……たとえあっちの国を追い出されても安心だな。

「けど、犯罪に関しては……」

「そっちはこっちルールで構わない。ただ、日常生活で俺を束縛するな。楽ができるように貰うモノを弄るが、それが法に引っかかっても無視してほしいってだけだ」

「ふーん……建物はすぐに用意できるよ。ただ、そこが嫌なら少し時間が掛かる」

「曰く付きってことか。人が死んだとか、悪霊が居るっていうぐらいならそれでもいい」

 それって、この世界だとプラスにしかならないと思うようになった。
 えっ、なんでかって? それは──

  ◆   □   ◆   □   ◆

 案内されたそこは、問題物件だ。
 そのような表現ができないような、禍々しさが感じられてしまった。

「本物って、あるんだな」

 地球でも怪談として挙げられ、芸能人が調査するような番組がいくつもやっている。

 そういうヤツを演出する施設もあったし、ほとんど淘汰されていたとも言える存在が悪霊といったスピリチュアルな存在だ。

 だが、はっきりと分かった……いや、正しくは分かってしまった。
 死霊系のスキルが見せるのは、怨念渦巻く恐怖の館。

 ──証明してしまったよ、そういうモノは実在するんだって。

「さて、さっさと弱体化させますか」

 ここで便利な神聖魔法と空間魔法を合わせて使う、神聖空間という安直な魔法スキル。
 全力全開でやるとさすがにバレるので、俺の周囲に展開して屋敷に近づいていく。

「おっと……『防音』」

 聴覚を遮断する暗示を施し、怨霊たちが呻く声をスルーできるようにしておく。
 いちいち喚く奴らにキレて、力を解放するなんてことはしたくないからな。

「レッツ探索だー」

 さっき挙げたが、テレビでこういう番組を見たことがあるのでなんとなく言ってみた。

 死霊魔法は死霊を感知することもできるので、探すというより追うと表現する方が正しいよな。



 見つけだしては、空間に取り込んでいく。
 弱らせた悪霊は再利用する価値を見出しているので、成仏はさせずにキープだ。

 また、悪霊でないのならば成仏できるように今は放置しておく。
 異世界転移がある世の中だ、転生という概念もあるに違いない。

 善行を重ねておけば、俺も報われるかもしれないからな……なんて適当な理由は別にしても、善いことをしておけばイイことが返ってくると思っているんだよ。

「一階は探索完了。地下と二階、さてどちらから始めようか……」

 当然というか、王道というか悪霊の数は地下の方が多かった。
 そのため、悩んだのは一瞬であって二階を選択することになる。



 それなりに広い屋敷だが、迷宮のように空間が拡張されているわけでもないので歩けばいつかゴールに辿り着く。

 悪霊が居なくなったのを確認してから、地下へ足を踏み入れる。

「……オゥ」

 だが、さすがに予想していなかった。
 魔王曰く、この屋敷はだいぶ前から生きていた魔族が持っていた屋敷なんだとか。

 年季が入っている分、住民も多いというわけだな……全然笑えないけど。
 視界を埋め尽くす霊体の数々を拝み、そんなことを思いだした。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

魔法少女のなんでも屋

モブ乙
ファンタジー
魔法が使えるJC の不思議な部活のお話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

処理中です...