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外国へ遊びに行こう

異名で呼ばれよう

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 ボス戦の様子はカットしよう。
 龍と鮫を掛け合わせたような魔物が大暴れしたのだが、シスコン王女を上手く使って闘わせることで経験値として利用した。

「ハァ……ハァ……」

「はいはい、お疲れ様。いつまで休憩する気か知らないが、もう解体も終わったぞ」

「い、いつの間に……」

「倒れ込んですぐだ。まあ、一気にレベルを上げたのも疲労の原因だろう。一度休んだ方がいいと思って放置していたが、そろそろ体も馴染んだだろう」

 レベルアップ酔い、というヤツか。
 酒と違って三半規管云々ではなく、一気に向上した肉体性能に馴染まない感覚器官がまるで酔っているかのような状態になってしまうことらしい。

 ──俺はそんな経験ないけど。

 それが異世界人だからか職業の方のレベルが上がりづらいからかは分からないが、そういう奴も居ると奴隷たちが教えてくれた……人によって耐えられる範囲があるんだろう。

「あ、あぁ……速く助けねぇと」

「下に行く隠し扉は在ったが、その下はまだ探知できない。本当にピンチって感じでもないんだろう?」

「た、たぶん」

「ゆっくりでもいいと思うんだがな。姉は聖者で強いんだろ? 面倒だし、のんびりでもいいと思うぞ」

 妹が急げと言うときは、だいたい商品があと一個しかない場合だった。
 逆に急かさず脅すだけのときは、数量限定の品でも少し余裕があったな。

 ……あと、急いで買いに行ったあと、店を出ると買おうとしている奴が来ていたな。

「えっと、仕掛けはここか──ほれ、開錠しましたっと」

「……どうやったんだ、それ?」

「企業秘密だ」

 この言葉、かなり便利だろ。
 企業じゃねぇというツッコミを受けても隠し通せるし、何より話す気がないとすぐに分かるから相手もすぐ諦める。

 催眠と洗脳でどうにかしようとするレベルの問題でもないし、第三王女にやったようなヤツでもないとメイドに殺されるだろう。

 実際はクラスメイトの一人が持っていた罠関係のスキルを使ったんだが、それをわざわざ説明する必要はない。

 国としては俺の能力をスキルの早熟関係だと考えているらしい……これは盗聴したから間違いないぞ。

「開けたら座標も分かった。やっぱり人工的に造った階層みたいだな」

「な、なら速く!」

「座標が分かっても、油断はできない。あの国の迷宮は転移系のヤツがないけど、もしかしたら転移対策の罠が用意されているかもしれない……ここは慎重に、確実に救える道を選んだ方がいいぞ」

「くっ……分かったよ!」

 罠探知系のスキルも同梱されていたが、本当に罠に関しては設置されている。
 直接乗り込まないと解除まではできないので、しっかりと歩くことを勧めておいた。

「さぁ、隠し部屋に行くとしよう」

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──さて、これで終わりだな」

 たった数分で終わる救出作業。
 姉妹が感動の再会を済ませ、解除した転移罠を潜り抜けて脱出した。

「七面倒な話なんてどうでもいい、さっさと出てこいよ」

「……なんだ、気づかれてたのかよ」

「わざわざすまないな。こっちもシスコン王女の命令で来たんだが、約束もあって必ず救わなきゃ目的が果たせなかったんだよ」

「いや、逃げられるだけの隙を用意していたこちらの不手際だ。やれやれ、手の込んだ仕掛けのはずだったんだがな」

 わざわざ過去を振り返るのは面倒なのでそこもカットするが、索敵に数人の反応があったので予想はしていた。

 もともと魔族が居る、という前提で動いていたんだ……それぐらい考えておくさ。

「初めまして、だな。俺はイム、アポイントメントはしてあったんだが……そちらの方は何か訊いているか?」

「アポイントメント? なんのことだ」

「……またダメか。仕方ない、お前たちにも仕事をしてもらおうか」

 洗脳した奴を遣いに出しているんだが……もしかして、殺されたか?
 厳しい上司が失敗と死をイコールで繋げているなら、それもありえそうだな。

「……その光、まさか貴様も聖人か!」

「ああはい、違ぇよ違ぇ。俺は異世界人の一人、イムだ」

 弓を仕舞い剣を抜く。
 そこに宿した聖気を見た魔族は驚愕する。
 なぜ、その光を持っているのかと……答えは簡単──パクったからだ。

「いい加減、会ってもらいたいんだがな。お前たちのボスは、どうしてそこまでして俺に会おうとしたいんだか」

「……思いだした。お前、異世界人を名乗り魔王様に会おうとする『魔族狩り』か!」

「なんだ、その名前は。それに俺は、一人として殺していないぞ。なのにお前たちは、殺人者扱いかよ──ウワサ、聞かせてもらってもいいか?」

 いつの間にそんな有名になってたのか。
 名前だけ出させて奴隷に狩らせている場合もあるんだが、それも俺の犯行としてカウントされているのかもな。

「……ソイツに会った奴は、必ず異世界人と会うように魔王様に申告しようとする。だから同一人物による犯行として、俺たちは認識していた」

「お、おい、なんで言ってるんだよ!」

「あ……あれ? どうして俺は、敵にこんなことを言って……そもそも、敵? 俺はいったい何を言って……」

「『デバッグ』──やっぱり弱めると、効かなくなるのが魔族の抵抗力だよな」

 さて、今度こそ成功させたい。
 いつになったら会えるのか……ある意味胸がざわつくな。

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