上 下
245 / 2,712
DIY、出合い出遭う

VSカエル

しおりを挟む


「おっと、ここか。広い場所に出たな」

 少年とカエルを追いかけた先で見たのは、小さな泉であった。
 泉を超えた先が次の区画のようだが、今はどうでもいい。

「少年は……いた、あれか」

 現在、少年はカエルと泉の間に位置する場所でジリジリと後退していた。
 手探りで自身の体をペタペタと触れていることから、なんとなくアイテムが尽きたのでは? と思えてくる。

 カエルはその様子を楽しんでいるのか、自身の舌をプラプラさせながら、少年が何か行動をするのを待つ……その際、舌から零れた粘液が地面に落ちた途端、禍々しい色の煙を上げていた。

「そろそろ介入かな? ──すみませーん」

「!?」

「手伝いって、必要ですかー?」

 俺の声に反応して、バッとこちらを向いてくる少年。
 本当に危機的な状況だったのか、あるいはこれから行う手段が人に見せられないようなものだったのか。

「ぜひ、お願いします! アイテムが足りなくて、どうやって倒そうかと悩んでいるところでした!」

「アイテムの分配は?」

「貴方優先で分けましょう!」

 よし、これでアイテムはゲットだな。
 言質も取ったので、さっそく動く。



「とりあえず、くらっとけ!」

 まず投擲したのは、爆発ポーション。
 何かに当たり、試験官が割れて気化した途端──炸裂する。

 ボムッと音が鳴り響き、カエルの背中からモクモクと煙が漂い始める。
 威力は抑えてあるので、火傷も自前の再生力ですぐに治るだろう。

 するとカエルは後ろを向き、俺の方へ飛び跳ねて近づいてくる。

「ほらほら、こっちだこっち!」

 ある程度少年との距離を取り、少なくとも伸ばした舌が届かない場所まで移動する。
 泉を外周するように動き、鈍足で可能な限り逃げ回ってから──再び投擲していく。

「そぅいやぁっ!」

 再び試験管を投擲する。
 カエルも学習したのか、それを触れることなく文字通りカエルジャンプで躱す。

「バカめ、宙では自由に動きなど取れま──なんだと!」

 その隙だらけの状態へ投擲を……したのだが、まさかの空中で二段ジャンプという離れ技を繰りだし、カエルは試験管の回避に成功した。

 二段ジャンプが限界なのか、その後は普通に地面に降りてくる。
 ヌメヌメと輝く舌をブラブラと振り、俺の絶望を煽りだす。

 ──しかし、俺は不敵な笑みを浮かべてカエルに告げる。

「甘い、甘すぎるぞカエルよ。お前はその場所に着地した時点で、敗北していたのだ」

 そう、すでに勝負は決まっていた。
 カエルの降りた場所には、一本の試験官が割れた状態で転がっている。

「さらばだ、カエルよ──しばらく眠れ」

 気化した睡眠毒ポーションを吸い、カエルはそのまま深い眠りに着いた。

「……さて、少年の所に戻らないと」

 カエルを仕舞い込み、俺は再び少年の元へ向かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください

黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。 自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。 崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。 勘違い系コメディです。 主人公は初めからずっと強くならない予定です。

【完結】捨てられ令嬢は王子のお気に入り

怜來
ファンタジー
「魔力が使えないお前なんてここには必要ない」 そう言われ家を追い出されたリリーアネ。しかし、リリーアネは実は魔力が使えた。それは、強力な魔力だったため誰にも言わなかった。そんなある日王国の危機を救って… リリーアネの正体とは 過去に何があったのか

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

運極さんが通る

スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。 そして、今日、新作『Live Online』が発売された。 主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。

異世界は黒猫と共に

小笠原慎二
ファンタジー
我が家のニャイドル黒猫のクロと、異世界に迷い込んだ八重子。 「チート能力もらってないんだけど」と呟く彼女の腕には、その存在が既にチートになっている黒猫のクロが。クロに助けられながらなんとか異世界を生き抜いていく。 ペガサス、グリフォン、妖精が従魔になり、紆余曲折を経て、ドラゴンまでも従魔に。途中で獣人少女奴隷も仲間になったりして、本人はのほほんとしながら異世界生活を満喫する。 自称猫の奴隷作者が贈る、猫ラブ異世界物語。 猫好きは必見、猫はちょっとという人も、読み終わったら猫好きになれる(と思う)お話。

処理中です...