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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その19
しおりを挟む邪悪深殿 九十九層
時間を止めるというチート臭い手段で、どうにか九十層を突破した。
次の層からのボスラッシュという展開も無く、最終層に備えて準備を整えている。
「百層には間違いなく『騎士王』が居る。出来得る限りの対策を、万全な状態にまで仕上げておかなければ……」
肉体のスペックに関しては、エクリなので問題なし。
もしも貧弱さを求めるなら、“星記改悪”で普段通りの数値に直せばいいだろう。
アイテムもフル補充済み、ドローンで散布可能だし工場の方で量産も行っている。
毒や薬、化学兵器なども揃えているが、害する系のアイテムはほぼ無意味なはず。
「基本的に、嵌め技が通じないからな。そうなるとやっぱり、直接的な戦闘になるわけだが……それが一番面倒だし」
《現時点においても、『騎士王』の底は図り切れておりません。実地での解析である程度改善はされるでしょうが、それでも戦闘プログラムでの圧倒は難しいはずです》
「おまけに魔術も天才的、魔法だって必要ならいくらもでも使えるだろう。魔力そのものが圧倒的な量だし、初撃で全開の身体強化の一撃を受けたらそこで終了かもな」
何より、『騎士王』は『騎士王』である。
その名が冠する権能は、ありとあらゆる才覚を保有者にもたらす──加えて、どんなアイテムも使える効果もあったんだっけ。
また、異様なまでに高い成長速度が、土壇場で得た力であろうと瞬時に昇華させる。
そうして代々の『騎士王』が得たすべて、今代の『騎士王』が保有していた。
「まさに、『ぼくのかんがえたさいきょう』そのものだよな……ついでに言うと、俺が渡した星の鑓とか元から持ってる星の剣とかもあるし。遺製具だって継承でたくさんあるだろうから、むしろできないことが無いだろ」
《旦那様、勝率ですが──》
「あー、あー。聞きたくない。いや、限りなくゼロに近いのは分かるんだけどな。でも、今回は勝つことが目的じゃない。あくまで、外に出られれば俺たちの目的は果たされるわけだし……それを忘れないようにな」
もちろん、勝てるなら勝ちたい。
だがそんな思いだけで、どうにかなるほど世の中は甘くないわけで。
己を犠牲にしてでも、成し遂げたいこと。
それを果たすことが、今回のすべてなのだから──あの少女を外へ、そして救いを見せなければならないのだ。
「手札は全部切れるか?」
《…………はい、可能です》
「相手が本気、しかも全力で行けるならそれしかないだろう。アイスプルの【救星者】として、やれることは全部やるぞ」
かつて聞いた、俺が『騎士王』に勝ち得る可能性。
そこにはまだ届いていない……だから、強引にでも手を伸ばしてやろうじゃないか。
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