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DIY、偽装工作に走る

密入準備 後篇

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 密入国ならぬ魔導世界への密入界の協力者である『愚かな賢者』。
 彼(女)の協力を得るため、取引に出したのは同格の存在『八大星魔』の術式提供。

 普通ならできないだろう……しかし、俺は星から刺客を差し向けられる身。
 最低でも一人は可能だろう、問題となる術式の獲得方法を見せることになった。

「顕現せよ──『賢者の軌跡』」

「ふむ……これは?」

「私オリジナル……と言いたいところではありますが、ある方の協力を(勝手に)得て創り上げた特殊な魔道具です。実演します、何か術式をお見せいただけますか?」

「何でもよいじゃろう? ──ほれっ」

 手を振る仕草をした『愚かな賢者』。
 瞬間、俺の視界が一瞬だけ下に落ちた……かと思えば元に戻った。

 原因は不明、だがその事象自体はたしかに起きたこと。
 俺が筆を構えると、宙に──[メニュー]に表示したメモ画面に──手が勝手に動く。

「…………」

「えー、見ての通りこの筆は術式を解析して自動的に書き記す能力を持ちます。通常のソレとは異なり、私が持つこれは本来のモノが持つ能力にオミット掛けることでこの能力のみに特化させています──完成です」

「なるほど、見せてみよ」

「これは……なるほど。すみませんが、私の実力では先ほどのものより、かなり劣ったものとなるでしょうが──『模倣術式01』」

 改めて[ログ]を確認してみたところ、俺が殺された理由は重力魔法。
 ただ、威力を確認したところあえて弱めに設定されていた……俺が虚弱過ぎたわけだ。

 そんな術式をそっくりそのまま、今度は魔力をインクに宙で描く。
 すると魔法陣が完成し、『愚かな賢者』に向けて放たれる。

「……この感覚、間違いない。なるほど、術式の模倣は何度もできるのか?」

「一度済ませれば、登録数を超えない限りは可能ですよ。しかし、アレは無力化のためのものですか?」

「うむ、術式の警備をする者たちを殺すと面倒じゃしな。この術式で昏倒させ、その間に拝借しているのじゃが……まさか威力を高めるとあのようになるのじゃな、また一つ勉強になったわ」

「人体への作用は難しいですし、あそこまでの現象は極端な差が無いと起きないとは思いますがね」

 ともあれ、『愚かな賢者』は俺が術式の模倣が可能であることを理解した。
 これで前提条件を満たしたわけだが──果たして、結果は?

「──いいじゃろう、儂への術式提供を忘れぬと誓いを立てるならば……おっとと、冗談じゃよ冗談。口約束で構わぬよ。だから、その鑓を下げよ『騎士王』」

「『生者』、魔導世界へ行っても決して術式による誓いは立てないことだ。最悪、権能があろうと逃げられぬことになるからな」

「なるほど、分かりました。ということですので、確約はできませんが可能な限りお約束しましょう……差し当たっては、あの時とは別に厄介な術式が出ておりまして。そちらについてご相談を」

「…………ほう、詳しく聞かせるのじゃ」

 まあ、そんなこんなで魔導世界へ行く手段も手に入ったということで。
 どんな場所だろうか……うん、今からワクワクが止まらないな!

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