2,142 / 2,712
DIY、偽装工作に走る
第二回プレオープン その08
しおりを挟む偽装都市の地下、そこには問題を起こした者たちを収容する『牢獄』が存在する。
自発的か誰かの仕込みか、目を覚まさない休人たちに俺は手を伸ばす。
「管理者権限、音声識別コード『────』実行」
宝石──『プログレス』に触れると、俺はそう呟く。
すると、『プログレス』から数字の羅列が浮かび上がり──切り替わる。
「緊急事態による閲覧の実行、認証開始」
管理者権限、『プログレス』の生みの親である俺に与えられた裏技。
それを用いることで、俺は他者のあらゆる履歴を辿ることができる。
ただし、そのままではいろいろと揉めるので一つの条件が。
それはこの認証で、相手が拒めばできなくなるという至って真っ当なもの。
……しかし休人たちは現在、何らかの要因で目を覚まさない。
ここで拒否が出るなら、それはそれで問題無いのだが…………うん、通った。
「つまり、完全にダメな状態か。思念での拒否も可能な仕様な以上、まさに緊急事態ってことになるな」
数字の羅列が意味のある文字に。
それは、休人たちが取ったすべての行動が記された[ログ]そのもの。
どんなスキルを使用し、どんな発言をしたのか……世界に示した行動のすべて、心中以外の情報が全部記載されている。
「ついでに、誰かに何かをされたっていう情報も見れるんだけど……あった、これだ」
俺が見つけたのは『???より『???』の干渉……抵抗に失敗しました』という一文である。
分からなくなっているのは、当事者が相手の認識を正しくしていないから。
もし名前を分かっていても、それが本当の名前じゃないなら表記は謎のままだ。
「『この内容は、対応するスキルを所持していないため非表示となります』と……耐性スキルのレベルが足りなかったか?」
だいぶ前に語ったが、特定のスキルを持つことで[メニュー]系のスキルは使い勝手が向上する。
先ほどの説明も、戦闘職で必要なスキルしか持っていなかった彼らだからこそ。
鑑定やら看破やら、あるいは欺瞞に関する耐性を持つスキルがあれば話は別だった。
「すでに起きたことだから、その辺を洗い直すのは難しいか……せめて目撃者、しかも相応のスキルの持ち主が居れば話は別だったかもしれないがな」
時間の流れとは不可逆なもの、少なくともただの人にそれを覆すことはできない。
彼ら自身の情報しか見れない以上、これより深くは探れないだろう。
「とりあえず、裏で誰かが何かを企んでいたことは確実だ。なら、対応も少しだけ優しくしておくか」
アイスプルからの帰還だけはできるようにしてやろう……うん、それとは別にいろいろ協力してはもらうがな。
0
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください
黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。
自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。
崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。
勘違い系コメディです。
主人公は初めからずっと強くならない予定です。
【完結】捨てられ令嬢は王子のお気に入り
怜來
ファンタジー
「魔力が使えないお前なんてここには必要ない」
そう言われ家を追い出されたリリーアネ。しかし、リリーアネは実は魔力が使えた。それは、強力な魔力だったため誰にも言わなかった。そんなある日王国の危機を救って…
リリーアネの正体とは
過去に何があったのか
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
異世界は黒猫と共に
小笠原慎二
ファンタジー
我が家のニャイドル黒猫のクロと、異世界に迷い込んだ八重子。
「チート能力もらってないんだけど」と呟く彼女の腕には、その存在が既にチートになっている黒猫のクロが。クロに助けられながらなんとか異世界を生き抜いていく。
ペガサス、グリフォン、妖精が従魔になり、紆余曲折を経て、ドラゴンまでも従魔に。途中で獣人少女奴隷も仲間になったりして、本人はのほほんとしながら異世界生活を満喫する。
自称猫の奴隷作者が贈る、猫ラブ異世界物語。
猫好きは必見、猫はちょっとという人も、読み終わったら猫好きになれる(と思う)お話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる