上 下
49 / 2,712
DIY、冒険の地に向かう

人工知能

しおりを挟む


 アイプスル

「……よし、これでバッチリだ」

 一度『アイプスル』へ帰還し、言われた通りの作業を行う。

 あっ、『アイプスル』ってのは、俺が最初に居た星の名前だ。
『SEBAS』に適当に付けてくれと指示したら、こんな名前になった。
 ……意味がまったく分からんのだが、どういう意味なんだ?



 契約を受けた翌日。
 行っているのは、納品をするポーションを必死に希釈する作業である。
 どうして薄める作業の方が、作る作業よりも大変なんだろうな。

 ギルド長はあれから、厳しく薄さを指定してきた。
 それにピッタリ合わせる努力……これは、必要なのことなのだろうか?

「しかし、生物が育ってきたな~。俺を襲う奴はまだいないけど」

『SEBAS』主導になって管理するようになったこの星は、俺のいない間にもグングンと成長していた。
 自然は芽生え、空気は澄み、動物は陸へと上がって来る。

『SEBAS』が調整しているのか、魔力が関係あるのか……多種多様な生命が、地上でも育つようになっていた。

「なあ『SEBAS』。あの選択を、俺は間違っていないとは思うけどさ……ポーションは、ギルド長が言った通りの代物なのか?」

《すでに解析は行っていますが……医療を遥かに凌駕する効果を持つ以外のことは、未だに解明できておりません。魔力と呼ばれる理が新たに演算に加わる分、通常より時間が掛かります》

「……でも、できるんだろ?」

《執事ですので》

 創作物でよくある『召使い万能説』って、意外と本当なのかも知れないな。
『SEBAS』に俺の作業を任せてみたら、実際に俺以上の結果を出してくれたし……。
 仕事も任せたら楽になるのかな?

「……いや、それは駄目だな」

《そもそも。そういった件に関しては本当に必要な時以外、私は一切手を出しませんよ》

 ここで手なんて無いだろ? 的な無粋な発言はしちゃいけないよな。

「ああ、それで充分だよ。仕事を機械が奪うのが云々なんてのも、ネットにあったろ?」

《旦那様、それはたしかにありましたが……特に気にする必要もありませんよ。人が楽を求める限り、必ず進化と退化を行い続けていきます。私という存在が人を遥かに超越した先にいることは、旦那様に作られている過程で把握していました》

《いずれ地球の機械が私の劣化品に近づけるように、必ずその未来は訪れるでしょう。しかし、その間に挟まる過程から学習することで、またその事実から逃れることも人には可能なのです》

「えっと……つまり?」

 長くなってきたので、分かりやすく纏めてもらおう。

《折り合いを付けますし、世界から仕事がなくなることはありませんよ》

「へえ~。そうなのか」

 ゲームなんだし、細かいことは考えなくてもいいよな。
 前の交渉で色々と頭を絞りすぎたんだよ。
 次からは、『SEBAS』と一緒にやることをしてみよう。

 ……こっちでまで商談なんて御免だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください

黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。 自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。 崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。 勘違い系コメディです。 主人公は初めからずっと強くならない予定です。

【完結】捨てられ令嬢は王子のお気に入り

怜來
ファンタジー
「魔力が使えないお前なんてここには必要ない」 そう言われ家を追い出されたリリーアネ。しかし、リリーアネは実は魔力が使えた。それは、強力な魔力だったため誰にも言わなかった。そんなある日王国の危機を救って… リリーアネの正体とは 過去に何があったのか

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

運極さんが通る

スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。 そして、今日、新作『Live Online』が発売された。 主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。

異世界は黒猫と共に

小笠原慎二
ファンタジー
我が家のニャイドル黒猫のクロと、異世界に迷い込んだ八重子。 「チート能力もらってないんだけど」と呟く彼女の腕には、その存在が既にチートになっている黒猫のクロが。クロに助けられながらなんとか異世界を生き抜いていく。 ペガサス、グリフォン、妖精が従魔になり、紆余曲折を経て、ドラゴンまでも従魔に。途中で獣人少女奴隷も仲間になったりして、本人はのほほんとしながら異世界生活を満喫する。 自称猫の奴隷作者が贈る、猫ラブ異世界物語。 猫好きは必見、猫はちょっとという人も、読み終わったら猫好きになれる(と思う)お話。

処理中です...