上 下
1,770 / 2,712
DIY、今度は開く

探索イベント後日談 その09

しおりを挟む


 虎型の願望機を初期起動、そして停止することに成功した。
 ……やり方はいつもの如く、無限残機を利用してのアレではあったが。

 ともあれ、確保したその機体を今度はプログラムの改竄も含めて改造していく。
 前提として他の願望機を検知しても、破壊しないようにするのは必須である。

「──というわけで、そういった諸々の改良が終わりました!」

『────!!』

「えー、今回皆さんにお集まりしていただきましたのは、そのお披露目のためです……ほとんどの皆さんは、そちらではなくご用意した御馳走がメインだとは思いますが」

『────!!』

 アイスプルに住まう住民、その大半はもともと森に生息していた魔物だからな。
 成長して高い知性を得たものの、本能に忠実である部分が多い。

 進化先的に暴走する可能性がある個体も居るが、そこは風兎が対応。
 何でも、彼らに対してのみ絶対的な差を示す能力があるんだとか。

 まあ、そんなこんなで、彼らも純粋に料理のためにこの場に集まっていた。
 虎型の願望機を見に来た者は……この場に居る一割程度だろうな。

「さぁ、ご登場していただきましょう──メカトラ!」

『ガウッ!』

 神・世界樹に取り付けたスポットライトがパッと灯り、ある場所に光を浴びせる。
 光が当たるそこには、一匹の虎が咆えている……ただし、その大きさが特殊だ。

 その虎の大きさは、約1mほど。
 虎の赤子よりもなお小さいその体躯で、大人のように高々に咆える姿に……一部の住民が盛り上がっている。

 特にアイスプルの守護獣であるエンキは、とても楽しそうだ。
 うん、新しい友達を見つけた、みたいな反応である。

「と、いうわけでメカトラだ。メカドラ同様に、基本的にはこの世界に滞在する予定だ。エンキ、これからいっしょに居られるぞ」

「クキュッ!」

 とても嬉しそうなエンキの姿に、他の住民たちもほっこり。
 一番若い個体、かつ世界の守護獣だからこそ、丁重に扱われているのだ。

「クキュ?」

『ガウッ!』

「クッキュウ!」

『ガウゥウ!』

 今さらだが説明すると、メカトラもメカドラ同様にアナウンス機能は消去した。
 あれ、付けておくと識別が変わるのだ……説明はまた別の機会。

 しかしそれを消しておけば、いちおうだが従魔として扱うことができるようになる。
 あとはアイスプルの管理者として、受け入れをちょいちょいっと行えば……完了だ。

 晴れてメカトラはこの世界の住民として、正式に星から認められる。

「しかし、願望機ねぇ……実はまだ、稼働している機体が在ったりして」

《絶対に不可能、ということはありません。神すらも欺く欺瞞が働いていれば、あるいは可能かと》

「……さてさて、どうなることやら」

 それが可能な存在も、各世界に居るかもしれないわけだ。
 ……やっぱりメカトラの探知機能、別の形で再現した方がいいかな?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください

黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。 自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。 崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。 勘違い系コメディです。 主人公は初めからずっと強くならない予定です。

【完結】捨てられ令嬢は王子のお気に入り

怜來
ファンタジー
「魔力が使えないお前なんてここには必要ない」 そう言われ家を追い出されたリリーアネ。しかし、リリーアネは実は魔力が使えた。それは、強力な魔力だったため誰にも言わなかった。そんなある日王国の危機を救って… リリーアネの正体とは 過去に何があったのか

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

運極さんが通る

スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。 そして、今日、新作『Live Online』が発売された。 主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。

異世界は黒猫と共に

小笠原慎二
ファンタジー
我が家のニャイドル黒猫のクロと、異世界に迷い込んだ八重子。 「チート能力もらってないんだけど」と呟く彼女の腕には、その存在が既にチートになっている黒猫のクロが。クロに助けられながらなんとか異世界を生き抜いていく。 ペガサス、グリフォン、妖精が従魔になり、紆余曲折を経て、ドラゴンまでも従魔に。途中で獣人少女奴隷も仲間になったりして、本人はのほほんとしながら異世界生活を満喫する。 自称猫の奴隷作者が贈る、猫ラブ異世界物語。 猫好きは必見、猫はちょっとという人も、読み終わったら猫好きになれる(と思う)お話。

処理中です...