1,520 / 2,712
DIY、多世界と交流する(物理)
多世界バトル前篇 その13
しおりを挟む少年ことソイドはショウと同じく剣士のようだが、純粋な剣術を磨いた休人らしい。
剣技、ではなく剣術……つまり武技を前提とした戦い方のようだ。
攻撃と攻撃の合間に武技を挟み、クールタイム中は自分の腕で勝負。
また、ここぞのタイミングで半セルフの武技を用いては致命傷を防いでいる。
「なかなかお上手です。さすがは二回戦、先ほどの男性よりもご自身の戦闘スタイルを理解しているのですね」
「……なら、一発ぐらい掠れよ」
「それはできない相談ですね。生憎ながら、そうする義理も筋合いもございませんので」
剣はことごとく俺のすぐ近くを通過し、何も斬ることなく戦いは続く。
最適化された『バトルラーニング』は、そういった芸当も容易く成し得る。
俺がいっさい反撃をしてこないことに、苛立ちを隠せていない。
だが、“オートカウンター”が使えないので、反撃はセルフで無いとダメなわけで。
予選のときはなんとか誤魔化す時間が用意できたが、ここでは一瞬の隙が勝敗を決めてしまう……命令コマンドを書き換えると、確実にラグが生まれるからな。
「仕方ありません。覚悟の上で、やらせていただきましょうか」
「! そこだ──“切斬”」
俺が『バトルラーニング』へ指示を送ったその瞬間、生まれた隙を少年は突く。
すぐさま反応しようとしていたが、体はそれに追いつかず──斬撃が体へ命中する。
勝利を確信した少年。
斬撃はもろに命中して、体を貫通しているほどに食い込んでいるからだ。
しかし、浮かべた笑みはだんだんと強張り引き攣っていく……ゆっくりと、口が動く。
「な、で……どうして」
「企業秘密です。ですが、これだけは──まだ戦いは終わりませんよ」
「う、うわぁああああ!」
埋まった剣をそのままに、俺は少年の方へ歩み寄る。
必死に引き抜こうとしているが、恐怖で本来の身体能力を発揮できていない。
対する俺は死後硬直というヤツで、通常よりも筋肉が固くなっている。
それでも『バトルラーニング』が最適な動きを取ってくれるので、動作に問題はない。
「現在、私がセットしている[称号]の話をしましょう。死亡時に、辺り一帯に受けたダメージ分の爆発を生み出すというものです」
「……『人間、爆弾』」
「おや、ご存じでしたか? この能力、本来であれば当然発動者の方が爆発の中心に居るため、こういった場でも無意味なものなのですが……さて、何故そんな[称号]を私は付けているのでしょうか?」
「! やめ──」
うん、まあそういうことだ。
トドメの一撃は彼の斬撃と同火力の爆発を以って──こうして俺は、無事(?)に二回戦を突破するのだった。
0
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください
黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。
自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。
崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。
勘違い系コメディです。
主人公は初めからずっと強くならない予定です。
この世界をNPCが(引っ掻き)廻してる
やもと
ファンタジー
舞台は、人気が今一つ伸びないVRMMORPGの世界。
自我に目覚め始めたNPCたちによって、ゲーム内は大混乱。
問題解決のため、奔走する運営スタッフたち。
運営×NPC×プレイヤーが織りなすコメディ。
//////////////////////////////////////////////////////
やもと、と申します。宜しくお願い致します。
誤字脱字などありました際は、ご連絡いただけますと幸いです。
週1、2回更新の予定です。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる