上 下
1,438 / 2,712
DIY、お祭りを満喫する

聖獣祭終篇 その08

しおりを挟む


 ──侵雪蝕界[スノウエスト]。

 かつて、世界に現れた災凶種。
 氷属性の微精霊だったソレは、あるとき突然変異した。

 その理由が何なのか、一説によればそうなる直前に足を踏み入れた者が居たそうだが、それがどう関わるかは不明だ。

 現在も『侵雪』と名の残るその現象は、過去に振り撒かれた雪の残滓である。
 触れたモノを奪い、閉じ込め、喰らい──雪は無限に増えていった。

《──そして、最終的には当時の精霊種の頂点や特級職業によって封印されました。封印は神々に回収されましたが……現在のように用いられているのですね》

「ふぅ……頑張りますか──“華焔カエン”」

 その手に仙丹を変換した炎を宿して、厄災に向き合う。
 あくまで模造品、意志のようなものは感じられない……当時の動きをなぞるだけだ。

 それでも存在感、やっていることは同じなのでその死の予感は本物だろう。
 結界を張っていなければ、すぐにでも俺は当時の人々と同じ悲劇を味わっていた。

 俺が火を燈したのは、何もしなければ雪の猛威が結界にも喰らい付いていたから。
 魔力を蝕む雪は、俺を包む結界をも取り込もうとしていた。

「だからこそ──“灼凪嵬シャクナゲ”、“炎天渦エンテンカ”」

 炎の量を増やし、結界の周辺の領域を確保していく。
 自然エネルギーである仙丹を用いる以上、普通に魔法を使うよりかは効果が出ている。

 本物が相手だったらどうなったか分からないが、模造品である以上成長や発展などはしないだろう……少しずつ、可能な限り自分に有利な状況を広げていく。

「とりあえず一発──『火竜の呑柱』」

 しくも、一度目の獣神様の神練で得られたアイテム。
 火竜が放った息吹、それを再現できる筒の形をした魔道具だ。

 魔力……の代わりに残っていた仙丹を流し込んで起動する。
 ただのアイテムではなく、『死天』の権能で生み出したからこそできること。

 魔道具は仙丹を用いたアイテム──宝具となり、その性能をさらに高める。
 そして、筒が尋常ではないほどに熱を帯びると……空間を焼き焦がす火を噴き放つ。

 俺は自死ならばどれだけ死んでも構わないし、聖獣様も結界で守られている。
 つまりこの空間ごと攻撃しても、被害を受けるのは[スノウエスト]のみ。

 だからこその大火力攻撃、普通の攻撃が通らない精霊の災凶種でも、自然エネルギーで攻撃すれば通じるだろう……そう思っていたのだが。

《攻撃の全吸収を確認。攻撃は雪に変換されました》

「……吹雪いてきましたね」

 ただ闇雲に攻撃しても、『侵雪』が増えていくだけのようだ。
 ちゃんとした攻略法を見つけないと……どうすればいいのだろうか。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください

黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。 自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。 崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。 勘違い系コメディです。 主人公は初めからずっと強くならない予定です。

この世界をNPCが(引っ掻き)廻してる

やもと
ファンタジー
舞台は、人気が今一つ伸びないVRMMORPGの世界。 自我に目覚め始めたNPCたちによって、ゲーム内は大混乱。 問題解決のため、奔走する運営スタッフたち。 運営×NPC×プレイヤーが織りなすコメディ。 ////////////////////////////////////////////////////// やもと、と申します。宜しくお願い致します。 誤字脱字などありました際は、ご連絡いただけますと幸いです。 週1、2回更新の予定です。

ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~

ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。 ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!! ※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

運極さんが通る

スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。 そして、今日、新作『Live Online』が発売された。 主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。

処理中です...