上 下
1,250 / 2,712
DIY、一先ず配達終了

ラグナロク その05

しおりを挟む


 俺が[アライバー]に乗って無双していると、それに挑んでくる者たちが。
 ……英霊たちもうずうずしていたが、さすがに状況が状況なので諦めていた。

 死者と戦乙女で構成されるヴァルハラチームにおいて、唯一の生者である俺。
 なので生者を憎む亡者、魔物などが襲い掛かってくる。

 そしてそれだけではなく、英霊たち同様に武に対する意欲から俺に挑もうとする者たちも居た……神族、北欧神話で語られる強者たちが仕掛けてきたのだ。

「まあ、乗っている機体が他でもない。この単独生存特化型魔道操機[アライバー]で無ければ、やられていたかもな」

 世界蛇ことヨルムンガンドを討伐した姿を見られ、狙われ始めていた。
 自在に大きさを変えられる[虚膨]もネタが割れてしまい、不意打ちには使えない。

 それでも[アライバー]にはもともと搭載していた機構が、いくつも存在している。
 それらを巧みに使い分け、俺は今もなお生存していた。

「……それもこれも、主神格の奴らが潰し合いをしてくれているからか。さすがにこちらに手を伸ばされると、ちょいと不味かったかもしれないし」

 特に厄介なのは、遠くで無双をしている老人の姿をした片目の槍使い。
 まるで未来を見ているかのような動きで、他の神族や巨人を相手に戦っている。

 彼こそが北欧神話における主神であるオーディン。
 相槍であるグングニルを振るい、その道を阻むすべてを薙ぎ払っていた。

「他にも注意すべき奴はいっぱいいるけど。この舞台において、もっとも弱い奴が誰かと訊かれたら──それは『生者』である俺だ」

 勝つことはほぼ不可能だろう。
 しかし、それでも抗う手段はある。
 勝つことと生き残ることは同義ではない、そしてそれに特化した存在こそ『生者』だ。

「『プログレス:バトルラーニング』をインストール」

《了解しました──インストール成功。起動し、能力を行使します》

 俺は普段の戦闘時に、『SEBAS』が解析した他者の戦闘データを転用している。
 結界に組み込むことで、最適な動きを強引に行っているのだ。

 そして、『バトルラーニング』は誰かが目覚めさせたその『プログレス』版。
 見取り稽古のように、自身で認識した動きの再現がやりやすくなるというもの。

「『SEBAS』、共有は可能か?」

《問題ありません。『バトルラーニング』と接続、情報の共有及び条件修正を実行──成功しました。旦那様だけでなく、私の得た情報も学習対象に含まれます》

「最高だ……神の力、頂こうじゃないか」

 他にも武神は幾人も存在する。
 それらすべてを学習の対象に収めれば、さらに強くなれるだろう。

 ……それができるのも、アインヒルドが生きている間だけ。
 まだ大丈夫そうだし、没頭しようか。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください

黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。 自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。 崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。 勘違い系コメディです。 主人公は初めからずっと強くならない予定です。

【完結】捨てられ令嬢は王子のお気に入り

怜來
ファンタジー
「魔力が使えないお前なんてここには必要ない」 そう言われ家を追い出されたリリーアネ。しかし、リリーアネは実は魔力が使えた。それは、強力な魔力だったため誰にも言わなかった。そんなある日王国の危機を救って… リリーアネの正体とは 過去に何があったのか

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

運極さんが通る

スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。 そして、今日、新作『Live Online』が発売された。 主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。

異世界は黒猫と共に

小笠原慎二
ファンタジー
我が家のニャイドル黒猫のクロと、異世界に迷い込んだ八重子。 「チート能力もらってないんだけど」と呟く彼女の腕には、その存在が既にチートになっている黒猫のクロが。クロに助けられながらなんとか異世界を生き抜いていく。 ペガサス、グリフォン、妖精が従魔になり、紆余曲折を経て、ドラゴンまでも従魔に。途中で獣人少女奴隷も仲間になったりして、本人はのほほんとしながら異世界生活を満喫する。 自称猫の奴隷作者が贈る、猫ラブ異世界物語。 猫好きは必見、猫はちょっとという人も、読み終わったら猫好きになれる(と思う)お話。

処理中です...