1,141 / 2,712
DIY、新たな理と共に
プログレス配布前篇 その10
しおりを挟む「──これでいいかしら?」
「まあ、充分だ。じゃあ……『プログレス』百機、進呈ってことで」
「とりあえず、これぐらいね。追加で用意してもらうには、どうすればいいのかしら?」
「ん? 何に使うんだ?」
地下世界の情報を得る対価として、百機もの『プログレス』を売り渡した。
それだけでも、『冥王』の配下に配る分はあると思うんだがな。
「先に言うけど、転売はダメだぞ」
「当たり前よ。ワタシのことを何だと思っているのかしら」
「言っていることは正しいけど、いろいろと隠しているヤツ」
「…………貴男の権能が、ワタシと非常に相性が良いことに感謝しなさい」
死を支配する、それが『冥王』の権能。
たとえ地下世界のどこに逃げようと、彼女の領域にある限りその存在は掌握される。
だが、俺は『生者』。
死神様から賜ったその力は、完全にその効果を無効化することができる……というか、死んでもすぐに蘇えられるからな。
「単なる餌よ。冥界で『プログレス』を所有しているのは、ワタシとその配下だけ。便利な力なんだから、欲しがる奴は無数にいる。あとはそれをコントロールするだけよ」
「……さっき聞いた世界の中に、面白そうな場所があったからそこには行くぞ。それをやるなら、範囲はここだけにしてくれ」
「分かっているわよ。ただ、どうせなら一度死んだらプログレスは剥奪してほしいわね。死後も欲しいならワタシに従う、そんなルールならどれだけ楽になるのやら」
「移植してない奴なら、たぶんそうなる。そこはユーザーの問題だし、好きにしてくれ」
俺と『SEBAS』で作り上げた大作──それが『プログレス』なのだ。
忌避感から移植はせず、かといって装備のみをし続けるならば……仕方がない。
休人の場合、これから始める新人は全員移植していくことになった。
それ以前の使用者も、装備枠を減らさず使える優位性から、移植することになる。
……まあ、彼らの場合は死に戻りをするだけなので、『冥王』のお世話になることがそもそも無いだろうけど。
◆ □ ◆ □ ◆
帰り道、統率された死者たちを見ながらふと思った。
「……『プログレス』って、使えない存在がいるのか?」
《ございません。霊体でも概念の塊であろうと、そこに『プログレス』と認識したうえで扱える知性さえあれば》
「……神様も、使えるんだよな」
《間違いなく》
恩人……いや、恩神である皆さま方は、果たして『プログレス』をどうするのやら。
いろいろと気になることを想いつつ、次の場所を目指すのだった。
10
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください
黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。
自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。
崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。
勘違い系コメディです。
主人公は初めからずっと強くならない予定です。
ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~
ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。
ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!!
※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
異世界は黒猫と共に
小笠原慎二
ファンタジー
我が家のニャイドル黒猫のクロと、異世界に迷い込んだ八重子。
「チート能力もらってないんだけど」と呟く彼女の腕には、その存在が既にチートになっている黒猫のクロが。クロに助けられながらなんとか異世界を生き抜いていく。
ペガサス、グリフォン、妖精が従魔になり、紆余曲折を経て、ドラゴンまでも従魔に。途中で獣人少女奴隷も仲間になったりして、本人はのほほんとしながら異世界生活を満喫する。
自称猫の奴隷作者が贈る、猫ラブ異世界物語。
猫好きは必見、猫はちょっとという人も、読み終わったら猫好きになれる(と思う)お話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる