410 / 2,712
DIY、闇に潜む
情報ギルド その03
しおりを挟む「──なるほど、ここが情報ギルドの本部ですか。大きいですね」
少年の案内で辿り着いた、目的地。
日本の首都に在りそうな、超巨大ビルのような物がそこにはあった。
周りの建物もまた、さすがにそこまでではながビルだし……。
文明感をいろいろと無視しているな。
カジノであったり、ビルであったり……どこまで時代をスルーした街なのだろう。
「そうだよ、おじさん。この長い建物が情報ギルドさ」
「ありがとうございます……あっ、これはおまけに取っておいてくださいね」
再び画面を操作して、三枚の硬貨を取りだすと──スッと少年の掌に乗せる。
驚く表情をする少年、まあとっくに支払いは済ませてあるもんな。
「お、おじさん。チップ──って、だから金貨じゃないって! しかもこれ、純金の硬貨じゃん! ……さっきの銅もそうだったし、おじさんって実はお金持ち?」
「いえ、そうではありませんよ。休人より頂いた物です」
そう、ささっと取りだしたのは金色の硬貨である。
……ちなみにだが、休人が出す硬貨はすべて純正なので商人には好まれるぞ。
収納したコインを自動査定されて、額が表示される──なので、騙されてもすぐに気づけるというのも利点の一つだろう。
「……へー、休人か」
「もしや、この街も休人が来てから何か変化があったのですか?」
「…………」
「先ほど、金貨を渡しましたよね?」
「そうだった、うっかりだったよ」
割と少年も強欲みたいだ。
しかしそれは取り繕った表情であり、実際にはなんだか引き攣っているように見える。
「……アイツらの情報は、知らないものばっかりだったから。最初の内はどっちも得ができたんだけど……どいつもこいつも、同じようなことばかり言うんだぜ? たまに一度聞いたヤツを詳しく言う奴もいたけど、ソイツはソイツでわけが分からないし……」
前者がにわか知識、後者が理系か?
アニメ系の知識は魔法関連であれば貴重な情報になるだろうし、ビルのような建物がある神代文明に繋がる情報もある。
「……やりすぎた、わけですか」
「アイツらが勝手に言ったことなのに! その巻き添えで、口封じされた奴もいる……悪いのはこの街を欲しがる奴らだ、オイラたちは今の街で満足してるのに」
人は時に、共有すべき知識を禁忌と定義付け拒絶することがあった。
情報が渡ることを恐れ、封殺し、誰の手にもいかないようにするのだ。
「……君にとって、この街はどうあってほしいのかな?」
「オイラは他の街なんて知らないし、休人が言っているような街が理想でしかないことも分かる。だから、今の街でいいんだ」
そう言った少年の顔は──少し寂しげなものに見えた。
10
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
異世界立志伝
小狐丸
ファンタジー
ごく普通の独身アラフォーサラリーマンが、目覚めると知らない場所へ来ていた。しかも身体が縮んで子供に戻っている。
さらにその場は、陸の孤島。そこで出逢った親切なアンデッドに鍛えられ、人の居る場所への脱出を目指す。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
(完)そこの妊婦は誰ですか?
青空一夏
恋愛
私と夫は恋愛結婚。ラブラブなはずだった生活は3年目で壊れ始めた。
「イーサ伯爵夫人とし全く役立たずだよね? 子供ができないのはなぜなんだ! 爵位を継ぐ子供を産むことこそが女の役目なのに!」
今まで子供は例え産まれなくても、この愛にはなんの支障もない、と言っていた夫が豹変してきた。月の半分を領地の屋敷で過ごすようになった夫は、感謝祭に領地の屋敷に来るなと言う。感謝祭は親戚が集まり一族で祝いご馳走を食べる大事な行事とされているのに。
来るなと言われたものの私は王都の屋敷から領地に戻ってみた。・・・・・・そこで見たものは・・・・・・お腹の大きな妊婦だった!
これって・・・・・・
※人によっては気分を害する表現がでてきます。不快に感じられましたら深くお詫びいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる