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第1章 何故森なんですか!

第4話 初めての武器作成

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俺は、恐る恐る洞穴の中を覗いた

まっすぐ続く通路は、大人二人がようやく通れるかといった幅と高さしかない。俺はゆっくり、音を立てずに通路を進んだ

今の所『狩人の感覚』に反応はない、それでも油断せずに進む。通路は五メートルほど進むと広い空間に出るようだ

俺は、壁に背を預け、顔だけで中を覗き込んだ

「・・・・いないな。やっぱりさっきの奴だけか。」
どうやらこの洞穴は、先程の穴熊ネズミが新しく作り上げたものらしい。空間の真ん中には、穴熊ネズミの寝床であろう草が高く積まれている

「う~ん、ちょっと暗いけど、広さは充分だな。問題は灯りだな。」

そう言いながら草にダイブする
「あ~、案外悪くないな。こうなって実感するけどベッドって偉大な発明何だな~・・・・・・はっ、やばい寝落ちするとこだった。」

この2日間色んな事がありすぎて疲れがたまっていたのか
危うく寝落ちしそうになる

「いかん、いかん。とりあえずここを拠点として今後動いて行こう。さて、家も決まった所で次に・・・」


そう言って俺は、地面に今後しなければいけない事をメモしていく

1.火の確保、
2.水の確保
3.食料の確保
4.武器作成

「う~ん、とりあえずこんなもんかな。火はやっぱ生活する上で、絶対必要になってくるしな。
 食料か、俺が今持ってるのエネルギーバー1本と食べれるか分からないネズミの肉だけだもんな。森だしキノコとか
果物ぐらいはあると思うんだよなー。」

そう言いつつ外に穴熊ネズミの素材を置きっ放しだった事を思い出し、順番に素材を洞穴の中に入れていく

あとは、40キロの肉だけとなった所で俺はふと、この肉食べれるのか?と、疑問が浮かんだ

あっ、ネズミの肉に鑑定かければわかるんじゃね、と思いつく

早速ネズミの肉に対して鑑定をかけてみた

ーーーー
・穴熊ネズミの肉   レア度1

・この世で最も多く食べられている肉。一体からかなりの量が取れるため、一般家庭、冒険者などに好まれている。
味は、意外にも豚肉に似ている。
一般的な宿屋に泊まる際スープなどに入っている肉は大抵この肉である。

ーーーー

「良かった、食べれるんだな。しかし豚肉って・・・。」

食べれる事に喜びつつも、味が豚肉な事に驚く

「あとは、やっぱ生で食うわけにはいかないし、火の確保は絶対しなくちゃな。でも、火のつけ方がなぁライター何て高校生の俺が持ってるわけねぇしなぁ。
はぁ~こんな時こそ魔法が使えればなぁ。」

無い物ねだりしたって仕方がないとは思いつつもやっぱり欲しいと思ってしまう

「・・・俺が知ってる火のつけ方って一つしかねぇぞ。」
そう、木の棒と板で火を起こす、錐揉み式発火法と呼ばれるものである。小学生の頃、キャンプで父親とやってみた事があったが一時間たっても火がつく気配はなく、諦めた苦い記憶が蘇る

でもやるしかない、十年越しのリベンジである
まず、必要な木の棒と板、更に火を起こせると信じて薪を集める事にした

・・・20分後
「さて、準備はできた。あの頃から比べたら体格も良くなってるし意外とすぐつくかな?」

そこから地獄が始まった



・・・2時間後 

目の前には、パチッパチッと、ときおり弾けながら燃える焚き火がある

「だ、だめだ・・・死ぬ。」

2時間の激闘の証か、腕が上がらずプルプルと震えている

「誰だよ意外とすぐつくんじゃねとか言ったやつ・・・・・・・俺か。」

十分ほど経つと腕のダルさがある程度ましになった

「さて、折角火を起こしたんだし、肉焼いてみるか。」

俺は、洞穴に戻るとネズミの肉をある程度の大きさに切って適当な枝に刺し、火で炙り出した

「鑑定では、食えるって言ってたけどほんとに大丈夫なのか?名前がネズミだしな・・・」

焼きあがった肉は脂が滴り落ち、見た目も確かに豚肉に見えないこともない

俺は、意を決してかぶりつく

「・・・・・うまい。うまい、何だこれ!何も調味料とか使ってねぇのに美味すぎる。」

まぁ2日間でエネルギーバー1本しか食べてないのもあるかもしれないが普通の豚肉より脂がしつこくなくて甘みが強く調味料なしでも充分おいしいと感じた

「ふぅ~、腹一杯だ。まさかこんなにうまいとは。
さて、腹も膨れたところで2つ目だな。」
この頃になると腕の調子も大分ましになってきた

次は水の確保であるが、同時に3つ目の食料の確保も行う事にした

準備を整え、出発する。まぁ準備と言っても特にないのだが愛用のカバンを持っていくぐらいのものである

崖を落ちて来た為こっちの森に入った事はない
慎重を期して最初からナイフを手に進む事にした

・・・・

入って10分たったが今の所魔物の姿は見えない、俺は、少しホッとしながら歩みを進める

不意にどこからか水の流れる音が聞こえた

「ん?今、水の音がしたような・・・」

水の音がしたと思われる方に進んで行く
少し歩くと森が開け岩の隙間から水が湧き出していた

「おおっ、あった!良かったー、ここなら意外と洞穴からも近いしこれから・・・・」

そう言って水を汲もうと近づこうとした時だった
開けた向こうの茂みが揺れ、何かが茂みから出てきた
俺は、驚きすぐに近場の木の影に隠れる

茂みから出てきた魔物も水を飲みに来たようだ
『狩人の感覚』が反応してない以上まだこちらに気づいてないようだ

俺は、木の影から魔物を鑑定してみる

ーーーー
・ホワイトメタルリザード   Lv.37   (680/680) ランク4
【戦闘スキル】
・噛みつきLv.4  ・土魔法Lv.3
【補助スキル】
・同化Lv.3 ・身体強化Lv.2 ・硬化Lv.4

・通常時は全身が柔らかい鱗に覆われているが敵を認識した瞬間その鱗は白く、硬くなりまるで金属を思わせる様な
光沢をみせる。攻撃手段は噛み付く、もしくは土魔法の2つしかないがその大きさからは想像出来ない素早さをほこる。硬いその鱗は、皮を使った装備などに使われ、中級冒険者に愛用者が多い

ーーーー

「Lv.差36とか無理だろ・・」
見つかれば一貫の終わりだと思い息を殺し早く立ち去ってくれと願う

幸いこちらに気づいてないようでホワイトメタルリザードは水を飲むとまた茂みに戻って行った

「ふぅ~、急すぎる・・心臓が止まるかと思ったー。」
また、さっきの奴が戻ってくるんじゃないかとビクビクしながら急いで水を汲んでその場を離れた

「水場が近くにあるのはいいけど、汲みに来る時は慎重にならなきゃなー。」

次は食料だなと思いながら歩いていると、音が鳴りステータスに何かが表紙されている

ーーーー
経験値が溜まったため、スキルが進化しました

即席鑑定(仮)→即席鑑定 new

ーーーー

「進化?」
俺は、そう言いながら即席鑑定を鑑定してみる

ーーーー
【補助スキル】
即席鑑定    (0/500)

・10回の使用により、お試し期間が終わり進化したスキル。(仮)の間はMPを消費しなかったがこれからは1回使用事にMPを5消費する。進化により、魔物、素材のレア度5までの物を鑑定できる。
ーーーー
「スキルって進化するのか・・じゃあ名前の横の数字が必要経験値って事か、俺のMPが30だから今日は後6回しか使えないのか。」

小説の主人公なら幾らでも使えるのに、なんて思いながら
歩みを進める

一度、洞穴まで戻り今度は水場の反対の森に入ってみる事にした。さっきあんな奴が出てきたばかりなので周りに注意しながら進む

進む事こちらも10分ほど不意に見上げると木に白い実がなっているのが見えた。見た目は美味しそうだ。一応と思い鑑定をかけてみる

ーーーー 
ホワイトリップル   レア度4

・その果肉は、ほどよい噛み応えとスッキリとした甘さをほこり、平民、貴族変わらず愛されている果実。その美味しさからジュース、タルト、ジャムなど使い道は多い。
この世にある最も古い文献にも登場するほど昔から存在し
、その色は「神聖・清純」を意味するとされ貴族が結婚する際女性側から男性側に渡され男性がそれを食べるといった儀式がある
余談ではあるが、その儀式の裏には「清純」を意味する事から私は乙女ですよといった意味が込められており、男性がそれを食べる、つまり乙女を食べる・・・まぁそういう事である
ーーーー

「・・なんか余談が追加されてる。」
そこまで知りたいわけじゃないのにと思いながらも木に登りカバンに詰めれるだけ詰めて持ち帰る事にする

「結構重いな。」
カバンがパンパンになるほど詰めると意外と重かった
それを肩に担ぐようにしながら来た道を戻る

「ふぅ~、やっと着いた。しかし重かったなこれ。」
洞穴に着くとそう言いながら1個取り出し食べてみた。味は鑑定に書いてあった通りほどよい噛み応えとスッキリとした甘さがある
2日ぶりの甘味に少し感動しながらベッド(草)に背中を預ける

「・・・いよいよ武器か。」
そう、2つ目3つ目をクリアした今次の目的は武器の製作である。俺にはナイフがあるが剣術や短剣術といったスキルは持っていない。そうなれば作る武器は一つである。
そう、弓だ

「弓かー、今更だけどいい思い出ないんだよなぁ。」
思い出される苦い記憶

あれは、高校に入り隣の席の女の子、藤堂さんと仲良くなろうと、弓道部である彼女と話す切っ掛けの一つとして弓について色々調べていた時の事・・・

当時俺は、藤堂さんと話す切っ掛けとして弓について図書室、ネットなどを使い調べていた

弓にも色々ある
弓道で用いられているのは「和弓」であり、アーチェリーで使われているのが「洋弓」である

和弓はどちらかというとスポーツというより武道である為
的に的中させるのと同時に、その所作の美しさも求められる。一方アーチェリー(洋弓)は、ひたすら的に的中させる事を追求したスポーツでありその為、使う道具にも色々違いがある

調べる内に弓の魅力にはまった俺は実際にやってみようと思いアーチェリー場に向かったのである。ここの時点で完全に思い違いをしていた。そう、藤堂さんはアーチェリーじゃなく弓道をしているという事を・・

その事を完全に忘れていた俺はアーチェリー場で更にショックを受ける事になる
アーチェリー場に着いた俺は、レンタルで道具を借りてやってみた。
・・・当たらない、いや当たらないどころか的にすら届いていない、まぁたまたまだど思い直しもう一度射る
・・・・・・届かない。そう、何度やってみても的にかすりもせず、全ての矢が的の数メートル先で地面に刺さる
しまいには、そこにいた人達、更には受付のお姉さんからも可哀想な人を見るような目で見られた俺は、泣きながら家に帰るといった今思い出しても悶絶するほどの恥ずかしい記憶がある

ちなみにその事を藤堂さんに話してみると
「そう・・私アーチェリーの事はよくわからないの。」
と言われ二重の意味でショックを受けた。当然仁に爆笑されたのは言うまでもない

そんな苦い記憶を思い出し、少し暗くなりながら俺は立ち上がり外に出た
一応カバンの中にリップルを何個か詰めて持って行く


さて、気持ちを切り替え武器の材料集めである

俺は、弓の弦意外、木製で作ろうと考えている
恐らくこの異世界に竹なんて存在してないだろうと思ったからだ。

リップルが取れた木を通り越し更に奥に向かって行く
弓を作るのに良さそうな木はないかと探していた時だった
木と木の隙間から何かが見えた
俺は、瞬時に木の影に隠れると顔だけ出し様子を伺う

「・・・・・・亀?」
そこにいたのは背中の甲羅から一本の木が生えた亀がいた
俺はすぐに鑑定してみる

ーーーー
ホワイトウッドタートル  Lv.10  ランク3
【戦闘スキル】
・風魔法  Lv.3 ・火魔法Lv.1
【補助スキル】
・防御力上昇Lv.6 

・背中から一本の白い木が生えた亀型の魔物。性格は温厚で、攻撃しない限り襲ってくる事はない。だが、無理矢理木を取ろうとすると怒り、手足頭を甲羅の中にいれ、それぞれの穴から風の刃を出し回転しながら攻撃してくる
背に生える木は固くしなやか。また、魔物自体が風魔法を持っているため、その木には風属性が最初から付与されており、その木から作られた杖を愛用する魔法士は多い。
その木が欲しい時は、その木の色と同じリップルをあげるとおとなしく切らせてくれる。木は1日もすればまた生えてくる
余談ではあるが亀型からなのか、それとも背に木があるからか日光浴が好き
ーーーー

「鑑定した限りでは、こちらが攻撃しなければ大丈夫らしいが・・・」
意を決して木の影から出て魔物の方に向かう

ホワイトウッドタートルはこちらに気づいたようだが何もしてこず、こちらをじっと見ている
俺がカバンからホワイトリップルを取り出すとそれをみた途端こちらにゆっくり近づいて来た
ホワイトリップルを地面に置くと嬉しそうに食べ始めた
俺は、もう2個ほど置くとゆっくり背中の木に触れてみる 
一瞬こちらをみたが特に気にした様子もなくまた食事を続けている

俺はナイフで木を切ろうとして、少し躊躇した。見た感じ木の幹自体は30cmほどだ

「・・ナイフで切れるのか?」
しかし、これ以外に木を切れるような物は持っていないと思い、刃を入れてみる

「・・・えっ?」
不思議な事にナイフの刃は抵抗感を感じる事なく木を切り倒す事が出来た

ナイフを見ても特に変な所はない
不思議に思いながらもいらない枝を落としていく
一本の丸太になったそれを担ぐと俺は元来た道を歩き出した、それをホワイトウッドタートルがじっと見ているとも知らずに・・・

洞穴に戻ってくると洞穴の前にそれを置き一息着いた

「あ~、重すぎるだろこの木。まぁ丁度いい感じに見つかってよかったけど。」
軽く愚痴を零しつつドカッと座り込む。

消えそうになっていた焚き火に薪をくべ、気合を入れると武器の製作に取り掛かった

製作自体は『造形 初級』の効果もあり、つつがなく進み
1時間後、目の前には木で出来た弦がない弓がある

ここで俺は悩んでいた。案は2つある

一つ目は穴熊ネズミのヒゲを使って弦にする案とそして二つ目があいつの尾を弦に出来ないかという案である

まぁある程度予想は出来るが俺はあいつの尾をカバンから取り出すと造形のスキルでどうにか出来ないか試してみる
すると案の定あの表示がステータス画面に浮かぶ

ーーーー

造形初級に対して素材の格が違い過ぎる為加工出来ません。
ーーーー

「はぁ、やっぱりか。ある程度予想が出来たとはいえ改めて見ると文字通り格の違いってやつを実感するなぁ。」
何度目かわからないあいつの凄さを実感したところで俺は、大人しく穴熊ネズミのヒゲで弦を作る事した

穴熊ネズミのヒゲはその体の大きさに比例してある程の太さ、張りもある。初めて弓を作るならこれで充分であろう
スキルと自分の知識を頼りに出来ている弦のない弓に穴熊ネズミのヒゲを張る

張り終わった後軽く指で弾き張り具合を確認し、完成である
スキルがあったとはいえ初めて自分で作った弓に俺は軽く感動していた。出来た弓に鑑定をかけてみる

ーーーー
白き狩人の弓 (製作者 砂霧 幸人) レア度3
【属性付与スキル】
・風射Lv.1

・ホワイトウッドタートルの背中の木と穴熊ネズミのヒゲを材料とし作られた白い弓。ホワイトウッドタートルの属性、風の特性を受け継いでおり矢を射た際威力に補正がかかる

威力+8%
ーーーー
 
「・・初めて作った弓か、なんか感慨深いな。しかも属性も付与されてるしこれは嬉しい誤算だな。」
大きさは俺の頭一個分小さいつまり大体1、5メートルほどである。

早速試し射ちしてみようと思ったのだが、一瞬止まった後大事な事を思い出した。

「あっ、そういえば矢がない。はぁ~、完全にやらかしたな弓作るのに夢中になりすぎて失念してた。」

そう言うと弓を作った余りの木で『造形 初級』を使い矢を20本、一束分作ったところで大事な事を思い出す
そう、矢の後ろにつける矢羽がないのだ。無ければ無いでもいいのだがあるのとないのでは、矢の方向の正確さが違う

はぁ~とため息一つ吐くと立ち上がり出来たばかりの弓矢持って森に入る準備をする。矢筒なんて持ってないから当然手で持って行く

目的地は、リップルの木周辺だ
俺は、木の影に隠れながら確認する

「いた。」木にはリップルをついばんでいる白い鳥がいる
俺は素早く鑑定する

ーーーー
ホワイトリトルサンバード Lv.1 (40/40) ランク2
【戦闘スキル】
・風魔法Lv.1 ・光魔法Lv.1
【補助スキル】
・気流操作Lv.1

・この世でゴブリンと肩を並べる程弱いとされている魔物。攻撃手段は風魔法しかなく、それも当たっても少し痛い程度なのであまり意味がない。だが、光魔法を持っている事から敵に出会った際全身を発光させ目眩しをしてくる。
その光を放つ姿から「小さな太陽」と名付けられた。
余談ではあるが、その綺麗な6本の尾羽は白を基調にその個体によって様々な色と模様をしている。その為、貴族に人気があり結婚する際、花嫁に送り花嫁がその尾羽を使ってベールやドレスを着飾るといった事が一つのステータスとなっている。

ーーーー

「・・・安定の余談機能だな。」
鑑定に少し呆れながらも弓を構える。弓の扱いはスキルが教えてくれる
「心を静めろ。集中しろ。スキルがあるんだ、届かないなんてことは絶対にない。」
一瞬苦い記憶が蘇りかけるが気合で押し込め狙いを定める

「・・・ここだ!」
リップルをついばんでいたホワイトリトルサンバードを狙い矢を射る。的中したかに思われた矢は狙った方ではなくリップルに当たってしまいホワイトリトルサンバードは飛び立ってしまった

「くそっ!やっぱり矢羽がないと正確さに欠けるな。だけど獲物には届いてた、・・・いける。」
気をとりなおし二つ上の枝でリップルをついばんでいるやつを狙う。今度はズレを計算して射る

シュッ、・・・当った!喜びが爆発しそうになるのを抑え
あと二羽ほど仕留める
「ふぅ~、なんとか目標達成だな。しかし俺でも弓を射る事が出来た、ほんとスキルってすごいな。」
そんな事を思いつつ手早く三羽の足を穴熊ネズミのヒゲで結び意気揚々と洞穴に戻る

戻ると焚き火に薪をくべ、一息つく、空を見上げればもう茜色に染まっている
もうひと頑張りと気をとりなおし作業を始める

『解体 初級』の力を借りてまず素材にしその後、『造形初級』を使い、すでに出来ている矢と尾羽を組み合わせる
三羽から十八本の尾羽しか取れないので作るのは六本だけだが出来上がった頃には日は完全に落ち、辺りには夜の闇と静けさが漂っている

「出来た~、あ~疲れた。」
出来上がった矢と弓を見るとつい笑みがこぼれてしまう

達成感と疲労からつい、うとうとしていると後ろの茂みが揺れた

音でハッとなりすぐに弓を構える

茂みから何かが出てきた。緊張しながらも弓を射ろうとした瞬間茂みから現れた存在にぽかんっとしてしまう

茂みから出てきたのは昼間俺がリップルをあげ木を切らしてもらったホワイトウッドタートルだったのだ
そいつは俺の近くに来ると「ボエェ」と鳴き、止まると見上げてくる。その瞳は何かを物欲しそうにしている

「あっ!」俺は、理解するとカバンをゴソゴソしてホワイトリップルを取り出し差し出してみた
すると、見た目で分かるほど嬉々とした表情でそれを食べ始めた

食べるその姿をじーっと眺める。ホワイトウッドタートルは満足したのか何故か俺の住居である洞穴の方に向かい中に入っていく

「・・・えっ?いやいや、入るの。」
俺は、慌てて追いかけるもそいつは草のベッドの横ですでに鼻ちょうちんを浮かべて寝ていた

「え~、まさか居つく気か?・・・・まぁいいか。」
こちらから何かしなければ害はない、そう思いほっとく事にし、俺も草のベッドに横になる

「ふぅ~、色々あり過ぎた一日だったけど、これからなんとか・・やって・・・いけ・・・そう・・か。」
草のベッドの寝心地は意外にも良く自然と眠りを誘った


こうして異世界に来てから2日目の夜は、人間1人と亀1匹の寝息と共に過ぎていくのであった・・・・





次回予告
奇妙な同居人?同居亀?も出来、ようやく異世界生活を始めた幸人は翌日、自身のレベルアップの為にも生活を良くする為にも狩りに出かけるのであった。そこで見つけたあるものとは。
ヒントは日本人の心の洗濯である
次回!!
「隠れて射って、また射って」
お楽しみに!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふぅ~、なんとか5話目を上げる事が出来ました
こんにちは眼鏡羊でございます

今回は武器製作という事で鑑定、説明が多めです
余談機能少しでも楽しんでもらえたら嬉しく思います

さて、次回はいよいよレベル上げです。正面きって戦える様なスキルはありませんのでひたすら隠れて射るといった感じだと思います 
そして狩りの末見つけたものとは!
まぁヒントで丸わかりかなと

えっと今回5話目に到達しましたのでよろしければ
ご意見、ご感想などお待ちしております
作者はメンタル弱めですご意見の方はオブラートに包んで頂けると大変ありがたいです

それではここらへんで
閃けアイデア! 成長しろ文章力
眼鏡羊でした
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