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第5話:『六本木ストックホルダー』
◆10:呪殺というシステム−2
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「ええ、肩を。血を採られてしまったのは間違いないようです」
「そうですか……となると、このままだと半永久的に水池氏は狙われることになりますね」
「おい、どういう意味だそれは!?」
おれは、四捨五入して敵の使う呪術と『絞める蛇』についての説明を行った。
「術者の血を混ぜることによって生み出された『絞める蛇』は、水のあるところに自在に潜み、移動することが出来ます。その体躯の大きさは術者の呪力で決まるのですが、あれほど大きなモノは、おれも聞いたことがありません」
一人前の術者でも、己の身長程度の蛇を操れる程度である。あれほどの大蛇を操るとなれば、その力はケタ外れていると言っていいだろう。
そして、まず術者は『絞める蛇』に、呪う対象となる相手を襲わせる。そして、ターゲットの”血”をすすることが出来れば、恐怖の呪殺のシステムが起動するのだ。
『絞める蛇』は、飲み込んだターゲットの血を元に、新たな”子供”を生み出す。その子供は、記録されている血の情報に従い、”親”であるターゲットに襲いかかるのである。
「つまり、一度目の襲撃の時に、貴方の血の味はあの『絞める蛇』に覚えられてしまったと言うことです。あとの話は簡単です。奴は水がある限り大きくなり、また殖え続ける。どこかの水道に潜んで、子供を次々と生み続ければ、術者である『蛇』は何もせずとも、貴方を脅する事が出来る」
「つまりこういう事か。もう相手は何もせずとも、勝手に使い魔が……」
「何度でも水池さんを攻撃し続けるってこと?」
真凛達のコメントにおれと門宮さんがうなずく。呪術の本領、ここに極まれり。そもそも呪いというものは、相手と己が顔を合わせないままに害を加えることに利点がある。
この業界でも攻撃呪文を得意とする派手好きな魔術師崩れは多いが、わざわざ相手に接近して電撃やら火の玉をぶつけるのであれば、現在なら銃や爆弾、あるいはナイフを使った方が余程安上がりなのだ。
相手から姿を隠して、だが確実にじわじわと追い詰める。防ぎにくいのも事実だが、何より着実に相手の精神を摩耗させる点が恐ろしい。
「そして、貴方がそれに恐怖すると、それが”血”を介してますます『絞める蛇』に力を与えることになるわけです」
呪術というのは、その気になれば誰でも出来るのだ。
もっとも初歩では、誰かに向かって「今日は良くないことが起こるよ」と言えばいい。不幸の手紙でもかまわない。それ自体になんら効果はないが、それを相手が気にして”何となくイヤな気分に”なれば、精神は集中を欠き、ほんの少しだけ良くないことが起こる確率が上がる。それが呪術なのだ。
実際、呪術とは、かけられた相手が”気にする”事で最大限に効果を発揮する。相手が恐怖すればするほど、精神は揺らぎ、より強力な呪いを仕掛けることが出来るようになるのである。特にランカーエージェント『蛇』の能力の恐るべき点は。
「失礼ですが、今日は水分を摂られましたか?」
力なく首を横に振る水池氏。
「朝、ペットボトルの水にも……いつの間にか穴を開けて入り込んでいたんだ。開けるとそこから蛇が出てくるんだ!」
そう、敵も小蛇ごときで門宮さんの守りを突破できるとは考えていないのだ。「怖くて水が飲めない」……水分を摂らずして活動できる人間は居ない。ましてそれが何時終わるとも知れないとなれば尚更だ。脅迫の手段としては誠に有効なのだった。
「犯人、というか、『蛇』の雇い主に心当たりはあるんですか?」
「あるわけないだろう!……だが、そうだな、ミストルテインの奴らならやりかねないか」
「では、犯人を捜す方が早いのでは」
「……それは問題ない。買収話が決着すれば、奴らの脅迫など意味が無くなる」
ふむ。そういう回答か。
「なるほどね。それで、門宮さん経由でおれ達を呼んだわけですか」
「そうですか……となると、このままだと半永久的に水池氏は狙われることになりますね」
「おい、どういう意味だそれは!?」
おれは、四捨五入して敵の使う呪術と『絞める蛇』についての説明を行った。
「術者の血を混ぜることによって生み出された『絞める蛇』は、水のあるところに自在に潜み、移動することが出来ます。その体躯の大きさは術者の呪力で決まるのですが、あれほど大きなモノは、おれも聞いたことがありません」
一人前の術者でも、己の身長程度の蛇を操れる程度である。あれほどの大蛇を操るとなれば、その力はケタ外れていると言っていいだろう。
そして、まず術者は『絞める蛇』に、呪う対象となる相手を襲わせる。そして、ターゲットの”血”をすすることが出来れば、恐怖の呪殺のシステムが起動するのだ。
『絞める蛇』は、飲み込んだターゲットの血を元に、新たな”子供”を生み出す。その子供は、記録されている血の情報に従い、”親”であるターゲットに襲いかかるのである。
「つまり、一度目の襲撃の時に、貴方の血の味はあの『絞める蛇』に覚えられてしまったと言うことです。あとの話は簡単です。奴は水がある限り大きくなり、また殖え続ける。どこかの水道に潜んで、子供を次々と生み続ければ、術者である『蛇』は何もせずとも、貴方を脅する事が出来る」
「つまりこういう事か。もう相手は何もせずとも、勝手に使い魔が……」
「何度でも水池さんを攻撃し続けるってこと?」
真凛達のコメントにおれと門宮さんがうなずく。呪術の本領、ここに極まれり。そもそも呪いというものは、相手と己が顔を合わせないままに害を加えることに利点がある。
この業界でも攻撃呪文を得意とする派手好きな魔術師崩れは多いが、わざわざ相手に接近して電撃やら火の玉をぶつけるのであれば、現在なら銃や爆弾、あるいはナイフを使った方が余程安上がりなのだ。
相手から姿を隠して、だが確実にじわじわと追い詰める。防ぎにくいのも事実だが、何より着実に相手の精神を摩耗させる点が恐ろしい。
「そして、貴方がそれに恐怖すると、それが”血”を介してますます『絞める蛇』に力を与えることになるわけです」
呪術というのは、その気になれば誰でも出来るのだ。
もっとも初歩では、誰かに向かって「今日は良くないことが起こるよ」と言えばいい。不幸の手紙でもかまわない。それ自体になんら効果はないが、それを相手が気にして”何となくイヤな気分に”なれば、精神は集中を欠き、ほんの少しだけ良くないことが起こる確率が上がる。それが呪術なのだ。
実際、呪術とは、かけられた相手が”気にする”事で最大限に効果を発揮する。相手が恐怖すればするほど、精神は揺らぎ、より強力な呪いを仕掛けることが出来るようになるのである。特にランカーエージェント『蛇』の能力の恐るべき点は。
「失礼ですが、今日は水分を摂られましたか?」
力なく首を横に振る水池氏。
「朝、ペットボトルの水にも……いつの間にか穴を開けて入り込んでいたんだ。開けるとそこから蛇が出てくるんだ!」
そう、敵も小蛇ごときで門宮さんの守りを突破できるとは考えていないのだ。「怖くて水が飲めない」……水分を摂らずして活動できる人間は居ない。ましてそれが何時終わるとも知れないとなれば尚更だ。脅迫の手段としては誠に有効なのだった。
「犯人、というか、『蛇』の雇い主に心当たりはあるんですか?」
「あるわけないだろう!……だが、そうだな、ミストルテインの奴らならやりかねないか」
「では、犯人を捜す方が早いのでは」
「……それは問題ない。買収話が決着すれば、奴らの脅迫など意味が無くなる」
ふむ。そういう回答か。
「なるほどね。それで、門宮さん経由でおれ達を呼んだわけですか」
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