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第一話 我神なり
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我神なり
「危ない」
今まで人生平々凡々に生きてきたとは残念ながら言えない。
バブルとバブルの世代に挟まれた一番割を食った世代。
恋人とか結婚とか考えている余裕など無く必死に生きていた。
受験戦争、就職難、リストラ地獄etc。
上と下の世代を見てこの世で一番不幸だと思っていた。
分かっているよ、それでも結婚し年収何千万の勝ち組はいる。
でもそんなのは幸運と才能に恵まれた者達のこと。
才能も運も平凡な人間など世間の荒波にあっという間に呑まれてしまう。
生きているだけで精一杯で結婚している奴らなどこの勝ち組どもがと妬んでいた。
だがそんな感情も歳と共に磨耗していき段々と達観していき修行僧の如く。
人間万事塞翁が馬、あるがままに精一杯生きる。
そんな悟りまで開けてきた矢先、今まで憎しみの対象だった勝ち組の幸せの結晶「子供」がダンプに轢かれそうになる寸前、俺の躰は動いていた。
勝ち組の親ですら動けない中、俺はダンプの前に飛び出し。
子供守り、そして死んだ。
我神なり。
ダンプに潰され肉体が死んだ瞬間魂が覚醒した。
幾億の転生を繰り返し魂を磨き。
数千の条件を満たす。
そして今最後の二つの条件
一つ 分霊せず
二つ 人の為に死す
を満たして魂は覚醒する。
俺の魂は人のものから一段階上の神の魂へと覚醒していく。
覚醒が終われば俺は神としてこの世に降臨することになる。
俺の魂は段々と天に上がっていき下界を見下ろしていく。
下には俺の潰れた躰が見え、その脇で母親が子供を抱き抱えているのが見える。その頭には犠牲になった俺のことなど片隅にもない。
これぞ母の愛。
まあ子供が助かったようで良かった。
おやおや、お優しいことで。
誰だっ。神と覚醒していく俺の魂に何かが嘲るように話し掛けてくる。
誰とは無粋ですね。神ですよ。
神?
そうです貴方の遙か昔に覚醒した神です。
神に目覚めてやっと特別に成れたかと思えば、やっぱり違うというのか。神に成れてすら特別じゃ無いと言うのか。
俺は用心深く聞く。
その神が何のようだ?
いえいえ簡単なことですよ。ここは私の縄張り、新参の神なんて受け入れる余裕なんて無いんですよ。
それって。
有り体に言えば消えて貰います。
まっまて。
消えろ。
何かが俺を覆い尽くそうとする意思を感じた。
何かをしなければここで終わってしまう。
刹那の攻防。
俺は抵抗より逃走を選んだ。
まだ覚醒してない俺では神として覚醒し熟成してきた神に勝てる道理はない。
必死だった。何処をどう逃げたのかも分からない。
気付けば俺は何も無い空間を漂っていた。
何も無い空間を漂う。
辛うじて消滅を逃れたが覚醒しきっていない半神の身の魂では永遠の無には耐えられない。
いずれ消滅する。
だがそんな俺の魂に何かが呼び掛けてくる。
助けて。
切実なる呼び掛け。
助けて。
切実なる祈りの俺の魂が引かれていく。
まっまて汝神を呼ぶ代償に何を捧げる。
残念ながら無償の愛は無い。そんな神はかつて地球上に存在したことがなく、俺も成るつもりはない。
どうも俗世っぽいが、本来完全に覚醒していればこんな気持ちも捨て去っていたのかも知れないが、残念ながら俺は神に邪魔され半分人間のままにある。
この身を。
肉体か悪くない、この消えそうな魂の一時の拠り所にちょうどいい。
汝身を捧げて何を願う。
姉さんを助けて。
汝の願い聞き届けた。
カッ、瞬間今までどこかふわふわ夢の中のような感覚だったのが、目覚めたように現実に返った。
見上げる空は何処まで蒼く澄み渡る。
地に寝る背中には大地の暖かさ。
植物の香りがする。
俺は再び肉体を持って顕現したようだ。
俺はまず寝ていた体を起こすと、赤く燃える炎を背景にした木々が目に入る。
どうやら俺は森の中の草むらに寝ていたようだが、あの背後の炎森林火災か?
体を見ればゆったりとした着物のような青い服を着ていてなぜか腹の部分が裂け、血でどす黒くなっていた。
この肉体の持ち主は腹を剣で刺されたのか、絶命するほどの怪我のようだが俺がこの肉体に降臨する時に修復はされている。
この肉体の持ち主は少年だったようだな、その少年が死の淵で祈った願いで俺はここに肉体を持って顕現する。
さて、願いを叶えなければな。
俺は神として自ら立ち上がった。
「危ない」
今まで人生平々凡々に生きてきたとは残念ながら言えない。
バブルとバブルの世代に挟まれた一番割を食った世代。
恋人とか結婚とか考えている余裕など無く必死に生きていた。
受験戦争、就職難、リストラ地獄etc。
上と下の世代を見てこの世で一番不幸だと思っていた。
分かっているよ、それでも結婚し年収何千万の勝ち組はいる。
でもそんなのは幸運と才能に恵まれた者達のこと。
才能も運も平凡な人間など世間の荒波にあっという間に呑まれてしまう。
生きているだけで精一杯で結婚している奴らなどこの勝ち組どもがと妬んでいた。
だがそんな感情も歳と共に磨耗していき段々と達観していき修行僧の如く。
人間万事塞翁が馬、あるがままに精一杯生きる。
そんな悟りまで開けてきた矢先、今まで憎しみの対象だった勝ち組の幸せの結晶「子供」がダンプに轢かれそうになる寸前、俺の躰は動いていた。
勝ち組の親ですら動けない中、俺はダンプの前に飛び出し。
子供守り、そして死んだ。
我神なり。
ダンプに潰され肉体が死んだ瞬間魂が覚醒した。
幾億の転生を繰り返し魂を磨き。
数千の条件を満たす。
そして今最後の二つの条件
一つ 分霊せず
二つ 人の為に死す
を満たして魂は覚醒する。
俺の魂は人のものから一段階上の神の魂へと覚醒していく。
覚醒が終われば俺は神としてこの世に降臨することになる。
俺の魂は段々と天に上がっていき下界を見下ろしていく。
下には俺の潰れた躰が見え、その脇で母親が子供を抱き抱えているのが見える。その頭には犠牲になった俺のことなど片隅にもない。
これぞ母の愛。
まあ子供が助かったようで良かった。
おやおや、お優しいことで。
誰だっ。神と覚醒していく俺の魂に何かが嘲るように話し掛けてくる。
誰とは無粋ですね。神ですよ。
神?
そうです貴方の遙か昔に覚醒した神です。
神に目覚めてやっと特別に成れたかと思えば、やっぱり違うというのか。神に成れてすら特別じゃ無いと言うのか。
俺は用心深く聞く。
その神が何のようだ?
いえいえ簡単なことですよ。ここは私の縄張り、新参の神なんて受け入れる余裕なんて無いんですよ。
それって。
有り体に言えば消えて貰います。
まっまて。
消えろ。
何かが俺を覆い尽くそうとする意思を感じた。
何かをしなければここで終わってしまう。
刹那の攻防。
俺は抵抗より逃走を選んだ。
まだ覚醒してない俺では神として覚醒し熟成してきた神に勝てる道理はない。
必死だった。何処をどう逃げたのかも分からない。
気付けば俺は何も無い空間を漂っていた。
何も無い空間を漂う。
辛うじて消滅を逃れたが覚醒しきっていない半神の身の魂では永遠の無には耐えられない。
いずれ消滅する。
だがそんな俺の魂に何かが呼び掛けてくる。
助けて。
切実なる呼び掛け。
助けて。
切実なる祈りの俺の魂が引かれていく。
まっまて汝神を呼ぶ代償に何を捧げる。
残念ながら無償の愛は無い。そんな神はかつて地球上に存在したことがなく、俺も成るつもりはない。
どうも俗世っぽいが、本来完全に覚醒していればこんな気持ちも捨て去っていたのかも知れないが、残念ながら俺は神に邪魔され半分人間のままにある。
この身を。
肉体か悪くない、この消えそうな魂の一時の拠り所にちょうどいい。
汝身を捧げて何を願う。
姉さんを助けて。
汝の願い聞き届けた。
カッ、瞬間今までどこかふわふわ夢の中のような感覚だったのが、目覚めたように現実に返った。
見上げる空は何処まで蒼く澄み渡る。
地に寝る背中には大地の暖かさ。
植物の香りがする。
俺は再び肉体を持って顕現したようだ。
俺はまず寝ていた体を起こすと、赤く燃える炎を背景にした木々が目に入る。
どうやら俺は森の中の草むらに寝ていたようだが、あの背後の炎森林火災か?
体を見ればゆったりとした着物のような青い服を着ていてなぜか腹の部分が裂け、血でどす黒くなっていた。
この肉体の持ち主は腹を剣で刺されたのか、絶命するほどの怪我のようだが俺がこの肉体に降臨する時に修復はされている。
この肉体の持ち主は少年だったようだな、その少年が死の淵で祈った願いで俺はここに肉体を持って顕現する。
さて、願いを叶えなければな。
俺は神として自ら立ち上がった。
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