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第七話 女の子は残酷だ
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薄暗い路地裏。
俺は、数人の不良に囲まれていた。
「おら、金だせよ」
虎のように威嚇してくる不良達、どうしたものか。
実際問題、お金は千円ほど持っている。
千円を諦めれば、無事でいられる。
悩むまでもない、人生平穏無事が一番。
怪我しないで済むなら、千円諦めよう。
俺は、財布を取り出そうとした。
「そうそう、素直が・・・・・・」
俺に何か言おうとしていた不良の頭上に、問答無用の踵がめり込み。
不良はぶっ倒れ、代わりに赤毛の少女が目の前に映った。
見るからに、平穏無事の四字熟語の反語を生きている姿。
Gパンの片方は千切られ生足を晒し、筋肉で盛り上がってる。
上もデニムのチョッキの下に来ているTシャツを捲り上げてヘソ出しルック。
晒した腹は腹筋で見事に締まっている。
極め付けは、ブルドックがするようなとげとげの首輪をしていること。
なんでここまで危険に撒き餌を巻くような姿をしているんだろう、信じられない。
この子は神様の静かに暮らしなさいという教えに、そんなに反抗したいのか?
「ボクこういうの嫌いなんだよ」
ボーイッシュにまとめた髪を、掻き上げながら少女は、意気揚々と不良共を睨む。
彼女は宇宙人?危険に飛び込んできて、何が楽しいの?マゾ?
「なんだ、こいつ女だぜ」
不良共は、彼女の膨らんだ胸を見て、やっと気付いたようだ。
「けっ男女。裸に剥いてやる」
不良共は、少女を見て劣情という平穏無事な生活から外れる第一歩の感情を抱いたようだ。
「ふっ」
赤毛の少女は、それはそれは、
鴨が葱を背負って丼になったとばかりに、楽しそうに笑った。
コークスクリューが決まり不良の一人が地に伏し、回し蹴りで更に一人倒れる。
残るは一人。
「ちしょう。舐めるなっ」
不良はナイフを出した。
ナイフの先は、ぷるぷる震え定まらない。
本気で刺す根性はないようだ。ここで、うまく引けば場は収まるかも。
「本気~?」
なのに、彼女はそれはそれは小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「本気だーー」
顔を真っ赤にした不良は、ガムシャラに突っ込んできた。
「ロケットヘッドアタック」
少女は、いきなり自分の首を引っこ抜くと、不良に投げつけた。
このあまりに意表をつく攻撃に、不良は避けるのも忘れて、唖然。
顔面に頭突きをくらって、一発KO。
「ふう~終わった」
少女は自分の首を拾い上げ、身体にくっつける。
ついでに、不良の懐も探って、自分のポケットに入れていく。
ファイトマネーファイトマネーって何か呟いてるけど、あれで自己弁護のつもり?
あの首とか凄い興味を引かれるが、我慢我慢。
下手な好奇心は、身を滅ぼす。
知らなくていいことは、知らない方がいいのだ。
「さてと、君大丈夫」
うぐっ、判断が遅かった。消えようと思ったタイミングで振り向かれてしまった。
「まあ」
「何か覇気がないな~。そんなだから不良に絡まれんだよ」
「すみません」
「もう。なんなのその覇気のなさ。イライラする。
こんな女の子に言われて、何か一つくらい言い返さないの?」
「別に口惜しくないですから。
まあ、助けて頂いてありがとうございました」
ちょんと御礼を言って、後腐れ無く別れよう。
これ以上関わってはいけない。
「では」
「ちょっと、待った」
振り返ろうとした肩が、ロックされた。
「なんですか」
「ボクのど渇いちゃった」
あっけらかんと言ってくる。
「君を助けるために、戦ったからだよ」
これじゃ、不良と同じじゃないか。
おねだりカツアゲじゃないか。
「だめ」
どうしよう。下手に断るとつきまとわれそうだし。
この際手切れ金だと思おう。
「分かりました、御礼しますよ。
それとたこ焼きも奢ってあげますよ」
退職金の上乗せだ。これで円満お別れよ。
中央公園のベンチに、俺と彼女は仲良く座っていた。
そういえば、名前聞いてないな。でも聞くと縁が出来そうだから聞かない。
「ねえ、ボクはサキって言うんだ。君は?」
サキはたこ焼きを頬張り、ほくほく顔で尋ねてきた。
エスパーなのか、さっきからこちらの先手先手を打ってくる。
しかし、名乗られた以上名乗らないと怒りそうだし。
「俺は、翼賀 充。じゃあこれで帰るね」
「なんだかな~。
今一君覇気がないね。目の前に、こんな可愛い子がいるんだよ。
もっと、ものにしてやるぜとか、ぎんぎんギラギラのオーラが出てこないの?」
どうだろう、デュラハンみたいな女の子に欲情する男っているのか?
「女の子をものにしようなんて、思いませんね」
「なんでよ」
「そんなこと思うと、周りの男達を争うことになるじゃないですか、人生は平穏無事が一番ですよ」
「かーーーーーーーー何それ?
あんた、天下取ってやる是くらいの野望とか。
叶えたい、夢とかないの?」
「ありませんね。
この腹が膨れること、それで十分です」
「つまんなくない?」
「はあ~っ」
俺は溜息をついてしまった。
全く人はどうして、こういう生き方をつまらないと決めつけるんだろう。
いい迷惑だ。俺は好きで植物のように生きたいんだ。
「じゃあ、今度こそこれで」
「ううん。もう逃げられないよ」
「何がです?」
「だって、君、あんな溜息ついたんだもん。
折角ピンクの悪魔から助けようとおもったけど、ボク、君があんまり好きじゃないから。
ここからは、ドライに行くよ」
さっきまでの人懐っこい声が、背中に汗を滲ませる声に変わった。
なんだ?何が起こるんだ?
「くるくるくるくる、くるくるリン」
風に運ばれ、歌が聞こえてくる。
振り向けば、そこにはピンクのトリプルテールをした可愛い女の子。
すっごい可愛い、でもデュラハン少女の方より、恐怖を感じる。
俺の本能が、あれに関わると平穏無事な生活が終わると告げている。
立ち上がって逃げるより早く、俺は羽交い締めにされた。
「何をするんだ、サキさん」
「ごめんね~。これお仕事なの」
「そんな、たこ焼き奢ったじゃないですか」
「仕事は非情なのよ」
俺が動けない内に、ピンクの少女は俺の前に立って見上げてきた。
「溜息ついて、お兄さんどうしたりん?」
「それは、だ・・・・」
俺は、いきなりサキに口を塞がれてしまった。
「ちゃんと理由は聞いといたわよ」
「さっすがサキちゃん、仕事ができるりん」
「でしょでしょ。
それでね、充君。自分にハングリー精神が無くて困っているんだって」
「うごうご」
困ってない困ってない。俺は充たされているんだ。
ごめんね~ボク覇気のない男って嫌いなんだ~と、サキが耳元で囁きやがる。
お前の好みなんて知ったことかっ、離せ。
「わかったりん。そのお願い叶えるりん。
サキちゃん押さえててね」
「オッケー」
「くるくるくるくる、くるくるりん。
あなたのお願い叶えます」
ああ、目の前でリンの背中から翼が生えて、天使の輪っかが表れた。
天使なのか?天使なのか?
なら俺は神様の言うとおり、静かに暮らしたいんだから構わないでくれ。
「ズボッと、諸手突き」
腹を突き破る、真っ赤な衝撃が襲ってきた。
人生17年生きてきて、これほどの衝撃を受けたことがない。
俺の腹を突き破ったリンの手が、俺の胃を掴んだ。
「やめて、死んじゃう」
俺は口から血をだらだら垂らしながらお願いした。
「だいじょうぶりん。天使は絶対に人を殺せないりん」
にっこりと微笑み返す。その顔はこれ以上何かすると言っている。
何だ何をする気だ。
胃が胃が強烈に横に引っ張られた。
縦に引っ張られた。
ぐおお、胃に意識が吸い込まれる。
「縦縦、よこよこ、まるかいてちょん」
俺が体中の穴から、液体を出しまくって苦しんでいるのに、リンは楽しそうに鼻歌交じりに胃をいじくるのを止めない。
止めてくれない。
「よし」
やっと、解放されリンの手が俺の身体から抜き去られた。
その瞬間。
「どう」
覗き込んできたサキの、たこ焼きを奪い取り一気に飲んだ。
「ああ、ボクのたこ焼き~」
駄目だ足りない、足りないぞ。
こんなんじゃ、腹が減ってしょうがない。
倍以上に広がった胃には足しにもならない。
野生の本能を司る胃が俺を支配する。
ハングリー
ハングリーーー
ハングリーーーーーーーーーーー
求めよ、貪欲に。
飯を女を、腹充たすまで。
「うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
お前、いい女じゃないか俺に抱かせろ」
俺は突き上げる欲望のままに、サキに飛び掛かった。
望み通り野望にギラギラした男になったんだ、文句ないだろ。
「ご免なさい。乱暴な男は好みじゃないの」
見事なカウンターの回し蹴りを喰らって、吹っ飛んだ。
お前が俺をこんな男にしたのに、それはないよ。
女の子は、残酷だ。
俺は、数人の不良に囲まれていた。
「おら、金だせよ」
虎のように威嚇してくる不良達、どうしたものか。
実際問題、お金は千円ほど持っている。
千円を諦めれば、無事でいられる。
悩むまでもない、人生平穏無事が一番。
怪我しないで済むなら、千円諦めよう。
俺は、財布を取り出そうとした。
「そうそう、素直が・・・・・・」
俺に何か言おうとしていた不良の頭上に、問答無用の踵がめり込み。
不良はぶっ倒れ、代わりに赤毛の少女が目の前に映った。
見るからに、平穏無事の四字熟語の反語を生きている姿。
Gパンの片方は千切られ生足を晒し、筋肉で盛り上がってる。
上もデニムのチョッキの下に来ているTシャツを捲り上げてヘソ出しルック。
晒した腹は腹筋で見事に締まっている。
極め付けは、ブルドックがするようなとげとげの首輪をしていること。
なんでここまで危険に撒き餌を巻くような姿をしているんだろう、信じられない。
この子は神様の静かに暮らしなさいという教えに、そんなに反抗したいのか?
「ボクこういうの嫌いなんだよ」
ボーイッシュにまとめた髪を、掻き上げながら少女は、意気揚々と不良共を睨む。
彼女は宇宙人?危険に飛び込んできて、何が楽しいの?マゾ?
「なんだ、こいつ女だぜ」
不良共は、彼女の膨らんだ胸を見て、やっと気付いたようだ。
「けっ男女。裸に剥いてやる」
不良共は、少女を見て劣情という平穏無事な生活から外れる第一歩の感情を抱いたようだ。
「ふっ」
赤毛の少女は、それはそれは、
鴨が葱を背負って丼になったとばかりに、楽しそうに笑った。
コークスクリューが決まり不良の一人が地に伏し、回し蹴りで更に一人倒れる。
残るは一人。
「ちしょう。舐めるなっ」
不良はナイフを出した。
ナイフの先は、ぷるぷる震え定まらない。
本気で刺す根性はないようだ。ここで、うまく引けば場は収まるかも。
「本気~?」
なのに、彼女はそれはそれは小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「本気だーー」
顔を真っ赤にした不良は、ガムシャラに突っ込んできた。
「ロケットヘッドアタック」
少女は、いきなり自分の首を引っこ抜くと、不良に投げつけた。
このあまりに意表をつく攻撃に、不良は避けるのも忘れて、唖然。
顔面に頭突きをくらって、一発KO。
「ふう~終わった」
少女は自分の首を拾い上げ、身体にくっつける。
ついでに、不良の懐も探って、自分のポケットに入れていく。
ファイトマネーファイトマネーって何か呟いてるけど、あれで自己弁護のつもり?
あの首とか凄い興味を引かれるが、我慢我慢。
下手な好奇心は、身を滅ぼす。
知らなくていいことは、知らない方がいいのだ。
「さてと、君大丈夫」
うぐっ、判断が遅かった。消えようと思ったタイミングで振り向かれてしまった。
「まあ」
「何か覇気がないな~。そんなだから不良に絡まれんだよ」
「すみません」
「もう。なんなのその覇気のなさ。イライラする。
こんな女の子に言われて、何か一つくらい言い返さないの?」
「別に口惜しくないですから。
まあ、助けて頂いてありがとうございました」
ちょんと御礼を言って、後腐れ無く別れよう。
これ以上関わってはいけない。
「では」
「ちょっと、待った」
振り返ろうとした肩が、ロックされた。
「なんですか」
「ボクのど渇いちゃった」
あっけらかんと言ってくる。
「君を助けるために、戦ったからだよ」
これじゃ、不良と同じじゃないか。
おねだりカツアゲじゃないか。
「だめ」
どうしよう。下手に断るとつきまとわれそうだし。
この際手切れ金だと思おう。
「分かりました、御礼しますよ。
それとたこ焼きも奢ってあげますよ」
退職金の上乗せだ。これで円満お別れよ。
中央公園のベンチに、俺と彼女は仲良く座っていた。
そういえば、名前聞いてないな。でも聞くと縁が出来そうだから聞かない。
「ねえ、ボクはサキって言うんだ。君は?」
サキはたこ焼きを頬張り、ほくほく顔で尋ねてきた。
エスパーなのか、さっきからこちらの先手先手を打ってくる。
しかし、名乗られた以上名乗らないと怒りそうだし。
「俺は、翼賀 充。じゃあこれで帰るね」
「なんだかな~。
今一君覇気がないね。目の前に、こんな可愛い子がいるんだよ。
もっと、ものにしてやるぜとか、ぎんぎんギラギラのオーラが出てこないの?」
どうだろう、デュラハンみたいな女の子に欲情する男っているのか?
「女の子をものにしようなんて、思いませんね」
「なんでよ」
「そんなこと思うと、周りの男達を争うことになるじゃないですか、人生は平穏無事が一番ですよ」
「かーーーーーーーー何それ?
あんた、天下取ってやる是くらいの野望とか。
叶えたい、夢とかないの?」
「ありませんね。
この腹が膨れること、それで十分です」
「つまんなくない?」
「はあ~っ」
俺は溜息をついてしまった。
全く人はどうして、こういう生き方をつまらないと決めつけるんだろう。
いい迷惑だ。俺は好きで植物のように生きたいんだ。
「じゃあ、今度こそこれで」
「ううん。もう逃げられないよ」
「何がです?」
「だって、君、あんな溜息ついたんだもん。
折角ピンクの悪魔から助けようとおもったけど、ボク、君があんまり好きじゃないから。
ここからは、ドライに行くよ」
さっきまでの人懐っこい声が、背中に汗を滲ませる声に変わった。
なんだ?何が起こるんだ?
「くるくるくるくる、くるくるリン」
風に運ばれ、歌が聞こえてくる。
振り向けば、そこにはピンクのトリプルテールをした可愛い女の子。
すっごい可愛い、でもデュラハン少女の方より、恐怖を感じる。
俺の本能が、あれに関わると平穏無事な生活が終わると告げている。
立ち上がって逃げるより早く、俺は羽交い締めにされた。
「何をするんだ、サキさん」
「ごめんね~。これお仕事なの」
「そんな、たこ焼き奢ったじゃないですか」
「仕事は非情なのよ」
俺が動けない内に、ピンクの少女は俺の前に立って見上げてきた。
「溜息ついて、お兄さんどうしたりん?」
「それは、だ・・・・」
俺は、いきなりサキに口を塞がれてしまった。
「ちゃんと理由は聞いといたわよ」
「さっすがサキちゃん、仕事ができるりん」
「でしょでしょ。
それでね、充君。自分にハングリー精神が無くて困っているんだって」
「うごうご」
困ってない困ってない。俺は充たされているんだ。
ごめんね~ボク覇気のない男って嫌いなんだ~と、サキが耳元で囁きやがる。
お前の好みなんて知ったことかっ、離せ。
「わかったりん。そのお願い叶えるりん。
サキちゃん押さえててね」
「オッケー」
「くるくるくるくる、くるくるりん。
あなたのお願い叶えます」
ああ、目の前でリンの背中から翼が生えて、天使の輪っかが表れた。
天使なのか?天使なのか?
なら俺は神様の言うとおり、静かに暮らしたいんだから構わないでくれ。
「ズボッと、諸手突き」
腹を突き破る、真っ赤な衝撃が襲ってきた。
人生17年生きてきて、これほどの衝撃を受けたことがない。
俺の腹を突き破ったリンの手が、俺の胃を掴んだ。
「やめて、死んじゃう」
俺は口から血をだらだら垂らしながらお願いした。
「だいじょうぶりん。天使は絶対に人を殺せないりん」
にっこりと微笑み返す。その顔はこれ以上何かすると言っている。
何だ何をする気だ。
胃が胃が強烈に横に引っ張られた。
縦に引っ張られた。
ぐおお、胃に意識が吸い込まれる。
「縦縦、よこよこ、まるかいてちょん」
俺が体中の穴から、液体を出しまくって苦しんでいるのに、リンは楽しそうに鼻歌交じりに胃をいじくるのを止めない。
止めてくれない。
「よし」
やっと、解放されリンの手が俺の身体から抜き去られた。
その瞬間。
「どう」
覗き込んできたサキの、たこ焼きを奪い取り一気に飲んだ。
「ああ、ボクのたこ焼き~」
駄目だ足りない、足りないぞ。
こんなんじゃ、腹が減ってしょうがない。
倍以上に広がった胃には足しにもならない。
野生の本能を司る胃が俺を支配する。
ハングリー
ハングリーーー
ハングリーーーーーーーーーーー
求めよ、貪欲に。
飯を女を、腹充たすまで。
「うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
お前、いい女じゃないか俺に抱かせろ」
俺は突き上げる欲望のままに、サキに飛び掛かった。
望み通り野望にギラギラした男になったんだ、文句ないだろ。
「ご免なさい。乱暴な男は好みじゃないの」
見事なカウンターの回し蹴りを喰らって、吹っ飛んだ。
お前が俺をこんな男にしたのに、それはないよ。
女の子は、残酷だ。
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