157 / 328
無限エスカレーター
第百五十六話 悠久の時の果てに
しおりを挟む
一瞬で船酔いのような気持ち悪さに平衡感覚を奪われる。気を持ち直そうにも後ろに引っ張られた勢いのままに体がくるくる回る無重力感に狂わされる。
回る視界で捕らえる限り、何も無い。宇宙の方が星空が見えるだけ、よっぽど賑やかとでも言うほど何も無い空間が広がり、視界を遮るものが見えない。
重力もなく、何も無い空間。
何も無いなら座標のとらえ方次第、俺が回るんじゃない、この空間ただ一つの座標である俺を中心に回っている。そう、認識し直せば回転は止まっていた。これでこの空間が俺を中心に高速回転しているのかもしれないが、何も無いので確かめようがない。
白く何も無く広がる空間、無いも無いから実際にどのくらい広い空間なのか認識する手段は無い。何も無いが自分の手を見れば見えるということは、光はある。だが光源が何処にあるのか全く分からない。まるで空間自体が発光でもしているのか、本当は目で見てなどないのか。あまり考えるのはよそう、その思考の先は碌な結論はない。
現実と歪みが生み出す狭間の空間の裏の空間にでも落ちたか。狭間の空間の裏なら現実世界というほど甘くないようだ。
そして、視界が何処までも伸びていく空間に水波の姿はない。水波と俺を繋ぐワイヤーも無くなっていた。これで他者と俺を繋ぐものは無し。信じてくれた水波には悪いが、せめてもう少しマシなところに行けたと祈るくらいしか俺には出来ないようだ。
何も無く広がる空間に俺一人。
脱出への手掛かりなどありはしない、無。
上もなければ下もない。
見上げる者もいなければ見下げる者もいない。
認識するものは俺一人。
認識されるものも俺一人。
時間の概念すら怪しいこの空間
無限に等しい時間、孤独に押し潰され無となるか。
無限に等しい時間、己の意思のみで何かを成し遂げるか。
それは自由。
何も無い空間で覚悟を決めて、精神を集中させる。
どのくらいの時が過ぎたであろうか?
1秒、一分、1時間、一ヶ月、1年、それとも千年。
何も無く重力すらない空間に通常の時間の流れはない、自分が思った時間が流れる。
悠久とも言える時を過ごして俺は目を見開き、俺は自分の先に自分の背中を見る。
何も無い空間、通常のXYZ座標に俺はt座標を付け加え、少し位置座標をずらして10秒後の進化した俺を認識したのだ。
これが悠久の思考と認識の鍛錬の先に産みだした能力。凡人といえど悠久の時の孤独に押し潰されず鍛錬に費やせばこのくらいは出来るようになる。
10秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして11秒後の進化した俺を認識する。10秒の時で俺はそこまで進化した。
11秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして12秒後の進化した俺を認識する。12秒の時で俺はそこまで進化した。
12秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして13秒後の進化した俺を認識する。13秒の時で俺はそこまで進化した。
13秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして14秒後の進化した俺を認識する。14秒の時で俺はそこまで進化した。
15秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして16秒後の進化した俺を認識する。16秒の時で俺はそこまで進化した。
16秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして16秒後の進化した俺を認識する。16秒の時で俺はそこまで進化した。
16秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして17秒後の進化した俺を認識する。17秒の時で俺はそこまで進化した。
17秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして18秒後の進化した俺を認識する。18秒の時で俺はそこまで進化した。
18秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして19秒後の進化した俺を認識する。19秒の時で俺はそこまで進化した。
19秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして20秒後の進化した俺を認識する。 19秒の時で俺はそこまで進化した。
20秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして21秒後の進化した俺を認識する。21秒の時で俺はそこまで進化した。
21秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして22秒後の進化した俺を認識する。22秒の時で俺はそこまで進化した。
1秒づつの進化でも無限の時と空間を使って絶え間なく進化させ、鏡合わせように無限に俺は認識されていき、極限へと能力を進化していく。
進化の果て、能力が頂点にまで高まり極まった俺は、振り返る。振り返ってこの空間における全ての原点たる俺を見て、更にこの空間にあるはずの無いさかのぼった過去の俺を認識する。
「これで分かっただろ。もう俺達がこのエスカレーターに乗って調べることなど無い。
だったら風景でも見ていた方が有意義というものだ」
「これで分かっただろ。もう俺達がこのエスカレーターに乗って調べることなど無い。
だったら風景でも見ていた方が有意義というものだ」
そう言って俺は再び外の風景を見る。外を見ようとベルトに乗りかかった俺の腕に暖かく柔らかいものが押しつけられる。
そう言って俺は再び外の風景を見る。外を見ようとベルトに乗りかかった俺の腕に暖かく柔らかいものが押しつけられる。
「うわっすご」
見れば子供の様に目を輝かせる水波の顔が直ぐ傍にあった。
ここしかない。
「かわいいなっ」
「はえっ」
俺は水波の腰に手を伸ばし、そのままリフティングした。
「ちょっちょっちょ、っとなにこれなにこれ」
「はっはははははっ、そーれそれそれ高い高い」
俺はDNQの如く場所も弁えずはしゃぎまくる。
「ちょっと何あれ」
「バカップルすぎ~」
「雰囲気ぶち壊し、迷惑考えろよ」
騒ぐ俺達に上下にいたカップル達の視線が突き刺さり、群衆の死角は消える。
「ちょっちょ視線が痛い的な~」
「楽しまなきゃそんなんだろっ」
俺を見下げる水波にウィンクして言う。
こうして俺達は冷たい視線に晒されながらも、天空のエレベーターの上に何事も無く辿り着いたのであった。
回る視界で捕らえる限り、何も無い。宇宙の方が星空が見えるだけ、よっぽど賑やかとでも言うほど何も無い空間が広がり、視界を遮るものが見えない。
重力もなく、何も無い空間。
何も無いなら座標のとらえ方次第、俺が回るんじゃない、この空間ただ一つの座標である俺を中心に回っている。そう、認識し直せば回転は止まっていた。これでこの空間が俺を中心に高速回転しているのかもしれないが、何も無いので確かめようがない。
白く何も無く広がる空間、無いも無いから実際にどのくらい広い空間なのか認識する手段は無い。何も無いが自分の手を見れば見えるということは、光はある。だが光源が何処にあるのか全く分からない。まるで空間自体が発光でもしているのか、本当は目で見てなどないのか。あまり考えるのはよそう、その思考の先は碌な結論はない。
現実と歪みが生み出す狭間の空間の裏の空間にでも落ちたか。狭間の空間の裏なら現実世界というほど甘くないようだ。
そして、視界が何処までも伸びていく空間に水波の姿はない。水波と俺を繋ぐワイヤーも無くなっていた。これで他者と俺を繋ぐものは無し。信じてくれた水波には悪いが、せめてもう少しマシなところに行けたと祈るくらいしか俺には出来ないようだ。
何も無く広がる空間に俺一人。
脱出への手掛かりなどありはしない、無。
上もなければ下もない。
見上げる者もいなければ見下げる者もいない。
認識するものは俺一人。
認識されるものも俺一人。
時間の概念すら怪しいこの空間
無限に等しい時間、孤独に押し潰され無となるか。
無限に等しい時間、己の意思のみで何かを成し遂げるか。
それは自由。
何も無い空間で覚悟を決めて、精神を集中させる。
どのくらいの時が過ぎたであろうか?
1秒、一分、1時間、一ヶ月、1年、それとも千年。
何も無く重力すらない空間に通常の時間の流れはない、自分が思った時間が流れる。
悠久とも言える時を過ごして俺は目を見開き、俺は自分の先に自分の背中を見る。
何も無い空間、通常のXYZ座標に俺はt座標を付け加え、少し位置座標をずらして10秒後の進化した俺を認識したのだ。
これが悠久の思考と認識の鍛錬の先に産みだした能力。凡人といえど悠久の時の孤独に押し潰されず鍛錬に費やせばこのくらいは出来るようになる。
10秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして11秒後の進化した俺を認識する。10秒の時で俺はそこまで進化した。
11秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして12秒後の進化した俺を認識する。12秒の時で俺はそこまで進化した。
12秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして13秒後の進化した俺を認識する。13秒の時で俺はそこまで進化した。
13秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして14秒後の進化した俺を認識する。14秒の時で俺はそこまで進化した。
15秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして16秒後の進化した俺を認識する。16秒の時で俺はそこまで進化した。
16秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして16秒後の進化した俺を認識する。16秒の時で俺はそこまで進化した。
16秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして17秒後の進化した俺を認識する。17秒の時で俺はそこまで進化した。
17秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして18秒後の進化した俺を認識する。18秒の時で俺はそこまで進化した。
18秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして19秒後の進化した俺を認識する。19秒の時で俺はそこまで進化した。
19秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして20秒後の進化した俺を認識する。 19秒の時で俺はそこまで進化した。
20秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして21秒後の進化した俺を認識する。21秒の時で俺はそこまで進化した。
21秒後の進化した俺はまた少し位置座標をずらして22秒後の進化した俺を認識する。22秒の時で俺はそこまで進化した。
1秒づつの進化でも無限の時と空間を使って絶え間なく進化させ、鏡合わせように無限に俺は認識されていき、極限へと能力を進化していく。
進化の果て、能力が頂点にまで高まり極まった俺は、振り返る。振り返ってこの空間における全ての原点たる俺を見て、更にこの空間にあるはずの無いさかのぼった過去の俺を認識する。
「これで分かっただろ。もう俺達がこのエスカレーターに乗って調べることなど無い。
だったら風景でも見ていた方が有意義というものだ」
「これで分かっただろ。もう俺達がこのエスカレーターに乗って調べることなど無い。
だったら風景でも見ていた方が有意義というものだ」
そう言って俺は再び外の風景を見る。外を見ようとベルトに乗りかかった俺の腕に暖かく柔らかいものが押しつけられる。
そう言って俺は再び外の風景を見る。外を見ようとベルトに乗りかかった俺の腕に暖かく柔らかいものが押しつけられる。
「うわっすご」
見れば子供の様に目を輝かせる水波の顔が直ぐ傍にあった。
ここしかない。
「かわいいなっ」
「はえっ」
俺は水波の腰に手を伸ばし、そのままリフティングした。
「ちょっちょっちょ、っとなにこれなにこれ」
「はっはははははっ、そーれそれそれ高い高い」
俺はDNQの如く場所も弁えずはしゃぎまくる。
「ちょっと何あれ」
「バカップルすぎ~」
「雰囲気ぶち壊し、迷惑考えろよ」
騒ぐ俺達に上下にいたカップル達の視線が突き刺さり、群衆の死角は消える。
「ちょっちょ視線が痛い的な~」
「楽しまなきゃそんなんだろっ」
俺を見下げる水波にウィンクして言う。
こうして俺達は冷たい視線に晒されながらも、天空のエレベーターの上に何事も無く辿り着いたのであった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
497グラム
ちみあくた
ホラー
深夜の病院で、「俺」は深い眠りから目を覚ました。
酷く記憶がぼやけており、何故、ここにいるのか、すぐには思い出せない。でも、すぐ傍にある新生児用ICU(緊急治療室)の分厚いドアのお陰で、一つだけ大切な事を思い出した。
生まれて間もない「俺」の子が、今、この扉の奥で死にかけている。
何故、こんな羽目に陥ったのか?
いつの間にか、すぐ側に来ていた妻・真奈美に訊ねても、成り行きは判らない。
必死で頭を巡らせる「俺」の前に、深夜の病院を徘徊する異界の住人が姿を現し、思い出せないままでいる「俺」の罪を告発し始める。
真っ暗な病棟を逃げ惑う「俺」が最後に辿り着く真実とは……?
エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しております。
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる