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第6話 いつぞやの、ふたりの背中
しおりを挟むその後、
椿の産んだ女の子は【灯姫】と名ずけられ、大納言家の三の姫として愛情深く育てられた。
そして、やはりわたくしが、男子を!
と決意された牡丹さまは、鬼船神社でご祈願の三日間をすごされ、見事男子をお産みになられた。
月満ちた満月のように曇りなきこの若君は、【望月丸】さま、と名ずけられ大納言家の嫡男として大切に大切に育てられる。
この頃、心身共に休養が必要であったわらわが望月丸さまご誕生のこの時、牡丹さまに何が起きたのか?
知る由もなく。
わが娘、灯姫と・・・。
牡丹さまがお産みあそばされた望月丸さまの無事の成長をただただ楽しみにしておった。
牡丹さまは不思議な女子。
どうも、物の怪・・・。
人でも神でもない存在を惹き付けてしまう力を持っておるようじゃな。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
今日は縁日。
普段、大納言家で厳しく躾られておる望月丸さまと灯姫が遊びにくることになっておる。
二人はかつてのわらわと牡丹さまのように仲がよい。
「望月丸さま❤おおきゅうなられましたなー❤❤❤牡丹さまに、似て、お美しい~わ~❤❤❤」
望月丸さまは日に日に牡丹さまににて可愛くなってきておられる。
京を根城に、妖狐勢力の拡大に尽力しておるわらわの癒しじゃな。
「あー、牡丹さまにお会いしたーい!」
望月丸さまのぷにぷにしたほっぺを両手で包む。
カワユイのう!
「椿さま。母上も会いたがっておいででしたよ。」
引き気味のちいちゃな望月丸と、ちいちゃなお姉ちゃん灯姫。
姉君達のいうところの【大納言家の天使】達は、元気いっぱい遊びたいさかり。
「お母さま、もうそのくらいでもっちー(望月丸)を解放してください!宵祭りにいってまいります!」
椿の手から望月丸を引き剥がす灯姫。
椿同然明るくてしっかりしていて、過保護な姉です。
「あ、これをもっていきなさい、お守りです。」
「わあ!キレイなホオズキ!」
「光ってるー!」
そう、これはホウズキ提灯。
わらわの妖力が注ぎ込まれた狐火じゃ。
これを持っていれば、そんじょそこらの妖怪も悪意のある輩も容易には近寄れないとゆうもの。
「いってきまーす!」
「いってきまーす!」
にこにこ。
仲良く宵祭りに出かける小さな二人の背中を見送りながら、いつぞやの、わらわと牡丹さまを思いだす。
ずっと一緒にいなくとも、牡丹さまを感じられる。
ずっと一緒にいなくとも、椿はいつでも牡丹さまを大切に思い、守っておりますぞ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
コンコン椿。
椿のお宿はどこにある。
コンコンここじゃ。
椿のお宿はここにある。
ー完結ー
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