流れる川

連鎖

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宿場町

祈り②

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 一人で過ごすには十分に広いが、
 二人の大人が入ると、少し狭く感じるような部屋に置いてあるのは、
 布団がひと組と、一人暮らしの男が持っていそうな机。

 部屋の入り口は一枚の開き扉だが、
 エリカが泊まっているような、豪華な廊下が有る部屋でも無いし、
 客が泊まる為に、定期的な掃除をされている感じもなかった。

 そんな窓も無いような小さな部屋で、二人は何かをしていた。

 一人は、美しいと言ってもいいし、若く可愛らしい容姿をした女で、
 無表情とまでは言わないが、男が犯しているのに焦ってもいないし、
 自分が一人だけ全裸でいるのに、寒がって震えてもいなかった。

 もう一人は男で、下半身だけを脱ぐという、
 女性を物としか扱う事しか出来ないような格好で、
 相手の脚を大きく広げさせて、そのまま腰を押しつけて楽しんでいた。

「ぐっじょん。。グッズうううう。ふうぅう。ぐじゅぐじゅ。
 もうちょっと、もうちょっとで逝くから。。もう少し締めて。。もう。」

(おれは。。俺はノーマル。。そうだぁあ。
 こういう女に、発情する。もちろん、ノーマルの男なんだああぁあァ。)

 寝息を立てている全裸の女を犯すだけで、ノーマルだとは思えないが、
 この男が生活している世界では、この程度の事は普通だった。。らしい。

「あ。。アァ。。ハイ。。ぎゅ。。こんな感じでいい?ギュッぐうぅ。」

(ああ。。意識がある。。もう、生きている?動ける。アっ?今って。。)

 自分の意思で、自由に身体を動かせる感動と、
 これからは、好きな事を好きなだけ出来るという、期待感と楽しみ、
 その感情とは違うと思うが、
 心地いい温もりを下腹部に感じて、自分が生きていると思い出していた。

「いう。ひうくうう。。びゅぅう。うぅぅぅ。。ビュッビュうぅう。」
「あっ。。。うぅぅぅ。。熱い。。うぅうう。。モォ。。ウゥ。熱い?」

(あっ。。。私。。。今は。。そう。。いまって。。そうよ。この男。。)

 久しぶりに与えられた、包み込まれるような熱い抱擁と、
 オスが与えてくる、一方的な愛情という欲望を中に出されて、
 それが染み渡って行く快感の渦と一緒に、彼女も何かを思い出していた。

 それは、オスから子種を注がれてしまうと発生する現象で、
 この男の子供をなそうと、この知りもしない強姦魔の子供をつくろうと、
 奥へ精子を運び、早く孕めという、身勝手な身体の動きだった。

「ふうぅ。。ふううう。。びく。。ビクンビクン。いい。いいねぇ。」

(俺は。。できた。そうだよ。俺って。こういう女が好きなんだァあ。)

 正常な若い女を相手に、自分は欲情して射精をし、
 下着などの外ではなく、子宮に流し込む事に感じていると、
 あの異常な思いや行動が、全て間違いであると思い込もうとしていた。

「ウゥ。モおおォ、どうして中に出すんですか?中にですよ!
 中に出されても、困るんですがネ。どうするんですかネェ。」
「あっ。。えっと。あの、そのぉ。うぅうんとぉ。えっとさぁ。あはは。」

「ポロポロ。あはは。ポロポロ。あはは、あはは。ポロポロ。ポロポロ。

 中に出すって。。アハハハハハ。中にですよ。アハハハハハハ。中に。。

 ボロ。ボロボロ。アハハハ。。わた。。わたし。ボロボロ。アハハハ。」

(この感触を知っている。。この感触は?私。。どうして泣いているの?
 どうして泣くの?これって普通?何を泣いているの?何が嫌なの??)

 部屋の中だとしても、意識がない状態で犯されて、
 そのまま中に精子を出された事に、喜んでいるのか、

 無遠慮に中に出されて、
 この強姦魔の子供を身篭ってしまいそうで、怒っているのか、

 起きたばかりなので、
 何が起こっているかわからなくて、実は戸惑っているのか、

 布団の上で目を見開き、狂気が混じった顔で笑いながら涙を流していた。

「イヤああぁ。名器だったもんでなあぁ。アハハハ。いやあぁ。アハハハ。
 ごめんねぇえ。最高に気持ち良かったよぉおおお。いやぁあ。ごめん。」

(これって、神様からのご褒美ですよねぇええ。
 これで確かめろって言いましたよね。俺は悪くないですよね。
 でも、どうして泣くの?何故怒っているの?何が不満なの?
 生きたいんだよね。じゃあ。大丈夫だろ?どうして泣いているんだ?)

 何故いきたいと願った女が、今泣いているのかわからなかったし、
 子供など願わなければ、産むのをやめるのも簡単だった。

 もしかすると、責任をとれと言われているのかもしれないが、
 そんな事を言う女が、いるとは思えないし、
 逆に子種を寄越せと、追いかけられながら言われる事が多いマイルズは、
 泣いている彼女を見ながら、理由を考えていた。

 。

「。。」「俺のって、大きかっただろおぉ!痛かったかなぁ。いやぁあ。」
「。」「ごめん。。いたかっただろ?デカ。。あ゙ぁ、デカすぎただろ?」

「アハハハハハ。そうですねぇ。今も。。んっ。。とっても。。。えっ。」
「ごめんね。大きくってぇえ。ほんとうに、ごめん。」

「アレ?。どうして?何があったの?
 私、何を話していたの?何が悲しいの??何故、泣いていた?」

(私、私は誰なの?どうして泣いていたの?何を思って、口に出したの?
 何故、彼を拒んだ?泣いた??本当に、泣いていたの?)

 ずっと人形として固まっていたハズなのに身体の違和感がなく、
 何かが残っているような、何かをされた跡が有るような気もしない、
 覚えている事が、つい最近のような気もしていた。

(嬉しかった!そうよ。それで嬉しくって、そういう事よね。アハハハ。)

 もしかして、自分が人形にされたのは最近の事で、
 微かに覚えている、あの楽しい思い出全てが、

 まだ手に届く未来の事だと。。。これから受け取れる希望だと。。。

 すぐに手に入れることが出来る、
 優しい未来の事だと思い泣いていたと、何故か考え始めていた。

「そうだろぉおお。言っただろぉお!アレは、高級品だってさァァァァ。
 だから、もうちょっといいかなぁ。もう少しでもさぁ。少しでさぁ。」

(まあ。。売れないし、疲れた時に飲むだけだしなぁ。
 こんな子と仲良くなれるなら、使ったーって嘘をつけば貰えるよな。)

 女に与えられた薬は、普通に流通などされていない高級品だし、
 もしこの男が持っていると知られたら、
 目の色を変えて、襲ってくる命知らずもいるような物だった。

 もし売る事など出来たら、当分遊んで暮らせるお金に変わるか、
 売ってもらいたい人が、何をしてもいいと行列を作るような物だった。

 もちろん、そんな事を許してくれるような仕事をしていないし、
 本人だって、自分で使う事しかしていないので、最近の使い方は、
 ちょっと疲れた時に飲むような、滋養強壮剤になっていた。

 その薬が高級な理由は、さすがに欠損は無理だが、
 それ以下なら効果はあるし、男が感じたように、
 滋養強壮剤としても、魔法回復薬としても、
 普通に傷薬としても、速効性のある優秀な物だった。

「俺って優秀だからさぁあ。アハハハハハ。オレ様ってさぁああ。
 俺様ざっ。イテッ。だいきょぉおお。だから、薬も高級品なんダァ。
 俺って、最強だからぁ。持っているのも高級でごめんねぇえ。アハハ。」

 マイルズが優秀だから貰えているのか、
 コレを渡しての結果だから、何が起きても仕方ないと見捨てられたのか、
 単独行動を許されるほどには、この男も組織から信頼を得ていた。

 もちろん、自分が優秀で、高級な薬を使って治してやったと、
 彼女に恩着せがましいことを言う、
 全裸の寝ている女を犯して喜ぶような、変態強姦魔の言う事など、
 普通なら身震いがする程に嫌だし、すぐに逃げ出すはずなのだが、
 何故か心はザワつかないし、冷静なのも変わっていなかった。

「ああ、いいですよ。お好きなだけ、私を抱いていただいて結構です。
 好きな事をして貰っても、好きな所に出して貰ってもいいですよ。
 あはは、だって私は何も持っていません。あははは。何もありませんね。
 お返し出来る物など、それぐらいしか持っていませんしね。アハハハ。」

 さっきとは違い、戸惑ってもいないし、泣いてもいない、
 怒ってもいないが、何故か希望を持っているような顔になっていた。

「ああ。じゃあいいかなぁ。アハハハハハ。イヤァ。じゃあ、いいよぉ。」

 その顔を見ているマイルズが、何かを思い出して嫌そうな顔をすると、
 さっきまでは、彼女に続きをと頼んでいたのに、
 もう必要が無いと、焦った声で断っていた。

「えっ。。。」
「ガチャ。。そうだなああぁあぁ。ありがとう。この部屋なら、
 何時までいて、もたって、もたっていいしィイ、

 フロントにも、ずっと暮らす連れがいると言っておくからぁああ!
 ここには、好きなだけ居てくれてイイよ。いてねぇ。アハハハ。

 何か使いたい事が出来たな。。ならぁあ、部屋に付けてくれぇえ!

 部屋に付けてくれたら、大丈夫だからねぇええ。
 アハハ。いやぁぁァあ。お金は、好きに使っていいよぉお。オゴルよぉ。」

(コレだよな。やっぱり、そうなるんだよなぁ。ハァァ。ダメかあぁ。
 ハァ。神様ぁあ。これで良かったでしょうか?これで大丈夫ですよねぇ。
 使徒として頑張りましたよ。これ以上は頼みますよ。神さまぁあああ。)

 一度助けてしまったのだから、最後まで面倒を見てあげればいいのだが、
 この女から欲しかった情報は、全て受け取った後なので、
 優しい男は、素直に出来るだけの譲歩をして立ち去ろうとしていた。

「えっ。。なにも。。まだ何も?」
「いやぁ。アハハ。俺は旅行者だからぁ、またすぐに会えるよぉお。
 その時に、また。アハハハ。。いやぁあ。仕事なんだよおぉぉ。
 アハハハ。スグに仕事に行かなきゃ。ほんっとうに、ごめんねぇえ。」

「そんなぁぁ!じゃあ、お名前だけでもぉ。。」「ヒュン。。」

 逃げ出した理由は、この男が欲しいような物など女が持っていないし、
 今回助けたのも、使徒としての義務と多少の褒美だと思っていた。

 それと、あの顔をした人に訪れる未来は、
 何度味わっても、見ているだけで苦しいので、
 その時の気持ちを味わってまで、
 続きを受け取ろうとは思えなくて、素直に彼女の前から逃げ出していた。

 。

「。。。」

(どうして?私が悪かったの?どうしていなくなったの?これから?)

 この世界での、唯一の繋がりが消えてしまい、
 これからの未来が切れてしまったように感じて、彼女も戸惑っていた。

 しかし、あの恩人が、この部屋に何時までもいていいと言っていたので、
 このまま待ち続けていたら、何かが変わると思っていた。

(でも。いつまで待てばいいの?何をしたらいいの?どうしたらいいの?)

 彼女が部屋で待ち続けていても、
 何も変わらないし、何も起こらないし、誰も助けてくれなかったが、
 この部屋に漂う美味しそうな匂いが、身体を刺激していた。

(これって、食べ物?。食べてもいいの?。。誰もいないし、いいよね。)

 彼女が見ている机の上には、何かが置かれた皿が複数置かれ、
 それは冷たくなっているし、見た事も、食べた記憶も無いのだが、
 美味しそうな匂いだけが、これが食べ物だと教えてくれた。

 その美味しそうな匂いが誘い、感じた身体が食べろと指示を出し、
 それに抗う事が出来ない彼女が、生きる為に必要な物を、
 手で掴み、口に放り込み、貪るように飲み込んでいた。

 。

(美味しかったけど。。どうして?これって、何だったの?私のために?)

 その事など気付かずに、そんな物など探さずに、
 あの事など忘れて暮らせば、楽しい未来が訪れていた。

 もちろん、一番良かったのは、すぐに部屋を出て全てを忘れ、
 今の記憶のまま、新しい出会いや未来を掴めば良かったが、

 身体の乾きが満たされてしまうと、どうしても考えてしまうのは、
 あの手に入りそうな、あの消えかかっていた、あの温かい思い出だった。

(コレ!あったぁあ。やっぱり、やっぱりそうよ!これって、そうよ!!)

 その絵は普通の部屋に有る物で、自分にとっては祈りの対象なのだが、
 何故か顔が見えないように、床に向かって伏せるように倒されていた。

「パタン。」

 それを元の姿に戻すと、これが当たり前な事だと思い出し、
 いつものように手を組み、女神に祈りを捧げていた。

 今から絶望を受け入れようとしている事など、少しも思っていない女が、
 また優しい未来に、あの時に帰して貰おうと、女神に祈りを捧げていた。

「女神様。。わ。。」

 もちろん、この悲しい世界からの旅立ちを拒んだ女の顔から光が消え、
 闇が全身包み込み、まだこの狂った世界が続くと答えてくれた。

「ウゥウゲェエエ。ベチャ。ウゲェエエエ。ゲェエエエ。ベジャァア。」

 全身を駆け巡る記憶。寝ていた時に感じた違和感。
 あの笑い顔の意味。あの嘲笑。全身を舐め回すような視線。
 もちろん、触られ。嬲られ。何度も壊されていた。

 その後、全てを綺麗に癒されて身体だけは元に戻っていた。

 しかも、曖昧な男の顔をハッキリ思い出した途端に感じてしまうのは、
 全身が泡立つような気持ち悪さに、
 嫌悪感、不快感、拒絶反応、心の痛み、身体が引き裂かれていく痛み、
 全てを洗い流せばいい、全てを吐き出せば治るかもという、微かな希望、
 安寧、それさえも女神は与えてくれないのか、
 必死に身体が、いや心の全てが、この世界を呪っていた。

 残ったのは、この世界を壊すことしか出来ない人形の祈りだった。


 祈り②
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