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閑話 竜の牙の引退!?

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 これは、竜の牙の三人が。想真のダンジョンに戻るまでのお話。
 因みに、三人のまとめ役なアリアが主な視点で、話は進む。


「よう、ミーニャ。今回もきっちり依頼を完了したぜ」 

 ソルが依頼完了の報告を、受付で行う。

「あ、ソルさん! 今回の依頼もお疲れ様です!」

「おう! ……それでな、ちょっとギルドマスターに伝えたいことがあるんだけど。出来れば、竜の牙の三人で」

「はい、分かりました。竜の牙の三人で、ですね? 今、ギルドマスターに確認してきますので、少し待っていてください」

 そう言って、ミーニャと呼ばれる女性は、冒険者ギルドの2階へと上がっていった。

「ようし、報告終わったぜ」

「はいはい、お疲れ様」

「……お疲れ」

 此処は冒険者ギルド。
 世界中に存在する。数多の依頼を管理し、冒険者達に適切な依頼を受けさせるギルド。
 ランクは下から数えてFからSまであり。
 冒険者ギルドはそのランクに沿って依頼が分けられている。

 そんな、トゥーリスの町支部の冒険者ギルドで。
 Cランクパーティー竜の牙は、コラク草原での依頼の完了報告を終えると。ある目的でギルドマスターに会おうとしていた。

「それで? ギルドマスターには会えそうなの?」

 私は、ギルドマスターに会えるのかを、ソルに聞く。

「うーん……。多分、無理じゃないか? 確か今の時期って、ギルドマスター会議がある時期だろ?」

「あー。そういえばそうだったわね」

 ギルドマスター会議とは。一つの国に存在する冒険者ギルドのギルドマスター達が、その国の首都に在る冒険者ギルド本部に集まり、それぞれ報告と議案をする会議の事。

「そうねぇ。出来れば伝えて起きたかったけど……。ま、それなら普通に、受付で申請しちゃいましょうか」

「ん、そうするのが一番いい気がする」

 ほら、シルもこう言ってることだし。さっさと引退・・申請をしちゃいましょ。

「よし、じゃあいくぞ」

「ええ」

「……(コクッ)」

 私たちが、受付に着くと。丁度2階からミーニャが降りてくる。
 彼女は猫の獣人で、その栗色の髪からは、立派な猫耳が生えている。

「あっ、皆さん! すいません。只今ギルドマスターは本部の会議に出席中でして、皆さんにお会い出来ませんでした……」

「いいのいいの。そこまで伝えたい事でもないしね。別にあなたでも全然いいのよ」

「あっ、そうですか! もう。それなら、そうと言ってくださいよ。……それで、ご用件は一体なんでしょうか?」

 ミーニャが不安そうな顔をする。ふふ、そんな顔をしてちゃあまだまだね。

「大丈夫よ、そんな重い話ではないから。実は私たち三人。今日をもって、冒険者を引退することにしたの」

「え?」

 その日は、依頼終りの冒険者が多くギルドに滞在しており。
 他の受付や、三人の後ろに並んでいた冒険者達に、アリアが放ったその声は聞き取られてしまう。

「ええー!?」

「あのベテラン冒険者パーティー『竜の牙』の引退だとぉ!?」

「嘘……ソル様……」

「あの若さでCランクに上がってからは、順調に依頼をこなしていたはずなのに、一体どうして!」

「最近は、ギルドマスターからBランクへの推薦を受けていたとも聞いているぞ!?」

「アリアお姉さまぁー!」

「シルヴィちゅわーん!」

「お前ら、なんで引退なんかを!」

 突然の引退宣言に。周りの冒険者達や受付嬢が疑問の声を上げ。それを聞いた者たちも次々と叫びだしていく始末。……弱何人かは悲鳴に近い声を上げているが。

「ど、どうしてですか!? 竜の牙の皆さんはとっても優秀で、お金に困っていないのは知っていますが……」

 ミーニャがそう私に聞いてくると。隣の受付から、私たちがよく知っている人物が声を掛けてきた。

「ちょっとちょっと、あなた達。本当にどうしちゃったの? なんか悩みでもあるなら私に相談してみなさいよ」

 彼女の名前はエリス。容姿は、金髪にストレートロングのお嬢様っぽい姿で。元貴族令嬢らしいけれど、今はこの町のギルド職員やってくれているの。
 そんな、彼女は。私達が駆け出しの頃から、よく話し相手や相談相手になってくれるから、よく知っている。

 私たちは、エリスに引退する理由を伝える。

「実は私たち、冒険者を引退して。ある方に仕えて、働くことにしたの」

「そうだな。これが終わったら宿に戻って、明日、この町を出ていくんだ」

「ん、楽しみ」

 その言葉に、エリスやミーニャ。その周りで見ていた者はとても驚く。
 そう言うアリア達の表情が、凄く、輝いて見えたのだ。あの、普段が無表情のシルヴィまで、顔がほころんで見える。

「そう……。ギルドマスターがいたなら、なんとしてでも止めようとしたし。私も説得したかもだけど。……その顔を見たら、もう止める気にもなれないわね」

 エリスが苦笑をしながら、そう言い。私たちからギルドカードを受け取ると、ある魔道具にギルドカードを翳す。
 少し待つと、引退登録が終わったのか、私たちにカードが返ってきた。

「これで、あなたたちは、元Cランク冒険者よ。でも、このカードを渡して再試験を受ければ、冒険者に戻れるから。辛くなったらいつでも帰ってきなさいよ」

 エリスが目を潤ませて、私たちにそう伝える。

「ありがとねエリス。それじゃ、私たちは引っ越しの準備があるから。またいつか会いましょう」

「ええ、いってらっしゃい」

 エリスが笑顔で、言ってくれたので。私たちはギルドの出口に向かって歩きだす。
 周りの冒険者からも。祝いの声やありがとうの声が聞こえてくる。
 ソルとシルが、ギルドの外に出て。私も出ようとすると、ミーニャが声を掛けてくる。

「アリアさん! ソルさん! シルヴィさん! 頑張ってください! それでなんですけど、皆さんはどこで働かれるんですか? ヒントでも良いので教えて下さい!」

 その質問を聞いて、私の顔がこわばるのが分かる。

「こら! せっかく笑顔よく送り出そうとしたのに、詮索しちゃ悪いじゃない。ごめんねアリア。ミーニャも悪気があったわけじゃないの」

「ええ、分かってるわ。でも、あなた達には言えない仕事なのは確かね」

「そう、ですか……」

 ミーニャが、耳をぺたんっ、として悲しそうな顔をする。
 それを、見た私は考え。結果、ヒントを忠告として教えることにする。

「そうねぇ、ただ一つだけ教えて上げるわ」 

「は、はい!」

 ミーニャが嬉しそうな顔に変化する。……ごめんなさいね。

「私たちは、この町の近くで働くことになるの。そして、これは私からのお願いと忠告よ。絶対にとある選択を間違えない事を薦めるわ。もし、間違えてしまったら。最悪、私たちはあなた達を殺さないといけなくなるから」

 私はおそらく怖い顔をして喋っていたのだろう。
 彼女達は、酷く、困惑や恐怖した表情をする

「それじゃあね。出来ればあなた達とは、戦いたくないわ」

 そう言うと、私は冒険者ギルドを出た。
 外で、私の声を聞いていたソルとシルも、どうやら同じ思いだったみたいね。
 ふぅ、この町とは争いたくないけれど……。
 頼むわよ。エリス。みんな。


 私たちは、すぐにこの町を出ることにした。
 じゃないと、質問攻めに合うと予想したから。

 幸い、私たちの荷物はそこまで多くなかったからか、三人のマジックバックに余裕で入った。
 途中、看板娘のネネちゃんに引き止めらたけど。また会おうと再開を約束して、行かせてもらう。
 私たちは今日。長年過ごした思い出深い宿を引き払い。町の門を出て、とある場所へ向かう。
 私たちのが仕える、あの子のいるダンジョンへ。


 こうして、半日を使い。早朝にあの子のダンジョンがある、コラク草原の端まで帰って来た私たち。
 さぁ、これからあの子の為にも、頑張るわよ!

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