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第一章『格闘家編』

格闘家、堕つ♡

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 沈み込みすぎない、爽やかな石鹸の匂いがするベッドにネロを押し倒す。
 活発なネロのことだ、休む為のベッドには拘るのだろう。

 息を荒げ、目を潤ませ、頬を染める彼女は、恥ずかしいのか顔を隠して目を逸らす。
 最強とは思えない乙女らしさに、言葉が漏れる。

「かわいい……」
「あ、あまり言われ慣れないね」
「嫌だった?」
「別に、そういうのは」

 誤魔化す彼女に顔を寄せる。
 ネグリジェはすっかり汗ばみ、谷間にも小さく水溜りができていた。
 呼吸するたび揺れる胸に、生唾を飲む。

「先に言っておくけど、僕もアルカ以外にしたこと無いから、うまくいくかは」
「こういう時に他の女の名前を呼ぶな。それに未経験より一回経験がある方がましだよ」
「……わかった」

 嗜められ、息を呑む。
 0と1に大きな差があることは殆どの事柄において事実、アルカにも上手いと褒められはしたが、まだ自信は定着していない。

 だからといって、委ねられたら拒むこともできない。
 ネロは既に震えながら目を閉じている。
 アルカとした時の唯一の後悔、そして彼女がおそらく望んでいるものをかなえるように、唇を重ねる。

「んっ……」

 ネロの唇から、鼻を鳴らすような声が漏れる。
 激しく押し付けることも、舌を絡めることもせず、ただ唇の柔らかさを交換する。
 永遠とも思える数秒、唇を離すと、ネロはすぐに自らの口元を隠した。

「恥ずかしいぞ」
「え?」
「ファーストキス」
「……そっちも初めてだったか」

 てっきりキスくらいは誰かとしているものかと。
 まあでも、恋愛にうつつを抜かす余裕もないほど、戦闘に明け暮れたと言うのなら仕方ない。
 それでも心配になり、尋ねる。

「大丈夫だったかな、初めてが僕で」
「今更だよ。これからキスより大切なものを捧げるんだから。勇者に一泡吹かせるんだろ」
「君の意思は」
「…………」

 忘れかけていたことを尋ねてみる。
 実際、目的を果たすだけなら気にしなくても良いが、彼女に対しては考えておきたい。
 短い関わりだが、彼女には悪感情はあまり無い。
 その意思に返すように、ネロは照れつつ呟く。

「たった二日なのに、今はキミなら良いと思えるくらいには、その……頼りたくなる」
「それは、つまり」
「……好きだよ。一時間にも満たない問答だし、これが正しい恋愛感情かはわからないが」

 反応はとても愛くるしい。
 耐えきれず、再び唇を重ねてしまうほどに。

「ちょっ、いきなり! 待っ……ん、ちゅ……くちゅ、ふぅ……っ♡!」

 我慢ができず、舌を絡めてしまう。
 声では嫌がっているが、ネロも合わせるように舌を出してくる。
 しかも、かなり積極的に。
 仕掛けてきた僕が、溺れてしまいそうになる。

「ちゅ、んぷぁっ♡ はぁ、はぁむっ♡ れる、れぇ……っ♡ い、いきなり、びっくりするだろっ♡」
「そうだけど、やけに積極的じゃなかった?」
「だってそれは、ムラムラしてる状態でこんな、強引に来られたら!」

 そうだ、彼女の目的は催淫の効果を鎮めることだった。
 それでも僕に好意を抱いてくれたことは嬉しいが、彼女が自分に求めてくれていることを遂行しなければ。
 しかし、興奮状態を口で示させると、こちらもどうしようもなく乗せられてしまう。
 ネグリジェの脱がせ方などわからないまま、一気にたくし上げ、本能的に脱がせてしまった。

「ひゃあっ♡!」

 恥じらいに満ちた乙女の声。
 咄嗟に胸元を隠すネロだが、エイムがずれて桃色の乳首がはみ出す。
 褐色肌に咲く鮮やかな色は、美しい花のよう。
 欲情に任せネロの手を退けるが、彼女の抵抗はあまりに弱々しい。

「なんでキミはっ、そう全部唐突なんだぁっ♡」
「ネロの誘い方がエロすぎるから」
「誘ってるつもりなんて」

 言うより早く、おっぱいに手を添える。
 めちゃくちゃ大きいわけではないが、明らかに巨乳の部類だ。
 しかも鍛えられた胸筋のおかげか、形もつんと上を向いていてエロい。
 我慢なんてできるはずもなく、労わるように、円を描くように、優しく揉んでいく。

「や、ぁっ♡ 胸、そんなに……っ♡!」
「痛くないか?」
「恥ずかしい……っ♡」

 経験値にある乱れ方と違う。
 胸を揉む経験は無いからか、上手く感じさせられていないのか。
 ならば、頭の中にあるアルカとの経験を踏まえ、片方の乳首に唇を寄せ、甘噛みしてみる。

「ふ、あぁっ♡!? んくっ♡! ち、乳首、だめっ♡!」

 反応が良い、催淫と感覚強化の余韻もあるだろうが、しっかり引き出せてよかった。
 安心しながら片乳を吸いつつ、もう片方のおっぱいは指の隙間で挟み、揉みながら摘み上げる。

「んぐぅぅぅっ♡ あたま、ひりひりするっ♡!」

 にしては、少し反応が良すぎるかもしれない。
 腰は半ば浮いて、シーツは千切れんばかりに引っ張られている。
 胸でこれなら、下はどうなのだろう。
 悪戯心に任せ、パンティを脱がす。

 破裂はもう、ぐしょぐしょに湿っていた。
 パンツの間に糸どころか、水溜りができてしまっている。
 そういえばオナニーしても満たされなかったと言っていたが、その名残もあるのだろうか。
 息を呑み、胸から手を離し、秘部に沿わす。

「っ、ンッ、くぅぅぅぅぅぅぅううううっっ♡!」

 堪える声と共に弧を描く腰。
 秘裂からはジュッ、と音を立て、瑞々しい愛液が飛び散る。
 力を入れすぎたのか、シーツが小さく破ける。
 鍛え上げられた細脚はその力強さを感じさせないほど弱々しく、震えて崩れた。

「フ──ッ♡ フ──ッ♡ フ──……ッ♡ ……はっ、ま、またっ!」
「ごめん、また不意打ちしちゃった」
「本当にずるいぞっ! それで、なんなんだ……今の、すごくゾクゾクする感じ……」
「たぶんイッたんだと思うよ。初めて?」
「い、今のが……さっき自分で慰めてた時には、こんなことは……」
「そっか。良かった、イかせられて」
「……ぅぅ、なんか負けた気持ちになるな」

 一回絶頂したからか、ネロの様子が落ち着いたものになる。
 まだ本番前、こっちも準備万端だが、少しだけ会話して彼女を解す。

「イくの自体が初めてだったって事か」
「……そうだが、あんまり言うな……恥ずかしいだろ……」
「言われてもなぁ。むしろ恥ずかしがってるところ、もっと見たいし」
「鬼畜め。戦闘より早くこんなに気持ちいいものを知らなくて良かった……」
「そんな人生観変わるほど?」
「ああ。キミだからかも知れないが」

 ……ダメだ、やっぱりネロは天然でエロい。
 そんなナチュラルに認められてしまったら、薄っぺらな自己欲求が愛撫されてしまう。
 確かに彼女は戦闘を先に知っていて良かった。
 そうでなければ、とんでもない性女が生まれていたかも知れない。

 はにかみ笑うネロの前で、耐えきれず逸物を晒すと、彼女はたちまち恥じらいに頬を染める。
 顔を隠そうとする手を抑え、秘部に逸物をあてがうと、性懲りも無く甘い声を漏らす。

「ふ、ゃっ♡! ま、待って、心の準備がっ♡!」
「我慢できないんだ。早く、して」
「……わ、わかった。ただ、ゆっくり挿れてほしい」

 限界を伝えるこちらの懇願に、ネロは根負けして許してくれる。
 甘えてゆっくりと腰を突き出していく。
 ずぶ、にゅぷぷ……肉音が、部屋に響く。

「ぁ、ぐぅッ……♡ なか、押し広げられ、て……ッ♡」
「ネロの、熱いっ」
「ま、魔王……♡ 痛く、ないか……っ♡? 締めるの、我慢できない……ッ♡」
「きついけど、心配しないで」

 こちらを気遣ってくれる優しさに、頭を撫でて返す。
 実際、少し痛いほどには締め付けてくるが、耐えられる程度だ。
 それよりも伝わる熱が凄まじい。
 彼女の溌剌さを内に秘めたようで、焼けて蕩けてしまいそうだ。

「ネロこそ、大丈夫?」
「…………」
「ネロ?」
「……だから、我慢できないって言ったのにぃっ」

 今にも泣きそうで、折れそうなほど弱々しい声。
 意味を察するのは容易く、彼女を凝視する。
 腕での抵抗を封じられているからか、こちらを見ようともしない。
 しかし蜜壺は正直に、跳ねるように痙攣していた。

「もしかして、感じやすい?」
「言うなぁっ♡ き、キミの能力のせいだろっ♡」
「いやぁ、淫魔の術は総合的実力差が離れているほど効かなくなるって言うし、それに……」

 比較はするなと言われたが、戦闘中でもアルカにかけた催淫と感覚増大の数分の一程度しか使用していない。
 含むように話を窄めたおかげで、彼女にもそれは伝わったようだ。
 すると観念したかのように、これまでとは違う気怠げで蕩けた様子で、語る。

「今後、キミ以外に抱かれることは無いと思うけれど……誰にも言わないでくれよ」
「言わないよ、なんでそんなこと」
「まだ……ちょっとだけ。一度敵対した同士として、弱みを握るためなんじゃ無いかと疑っているから」
「心外だなぁ」

 言いながら、腰を軽く突き出してみる。
 彼女が感じやすいのは既に明かされていた。
 だからこれは、反発代わりだ。

「く、ふぁっ♡ おく、突くなぁっ♡!」
「一度セックスした子をぞんざいに扱うほど、僕は愛のない男じゃ無いよ。むしろ死ぬまで抱え込みたい」
「死ぬまで、って……ぅ、やぁっ♡!」
「決めた。相手に思惑があったり、元々ハニートラップだったって時以外、これからセックスした相手は僕が責任を持って保護する」

 ぐりぐりとネロの奥をねぶりながら、突発的に決めた意思を表示する。
 ネロはかなり蕩け、悶絶した表情を浮かべるが、それでもギリギリの知性で返してくる。

「そ、それじゃぁ……ハニーちゃん、は……っ♡」
「あの子は特別だけど、ネロも、これから勇者から奪っていく子たちも、等しく愛していくよ。僕を好きになってもらえるように」
「そう、かっ♡!」

 続けた答えに、ネロの表情は僅かに明るくなる。
 そして不意打ちのように、封じていた手足の力が一気に強まり、僕の腕を弾く。
 ネロを心外といいながら、咄嗟に身構えかけるが、彼女の手足はいつの間にか僕の体を捉えていた。
 痛みはなく、しかし離れることは決してできない力で抑えられ、耳元で囁かれる。

「なら、存分に頼らせてくれ……っ♡」
「ね、ネロ?」
「戦いでも、政治のやり方でも、エッチでも……♡ 頼りたくなってしまうのは、初めてなんだ……っ♡」

 戦っていた時の覇気も、語り合っていた時の淑やかさもない、快楽にだらけきった顔で告げるネロ。
 驚きもあるが、納得する。
 戦闘から語らいに移り、実際に敗北を与えたのではなく、負けを認めさせたように。

 彼女は、頼りたかったんだ。
 常に強者、勝者という立場から、少しだけ離れたかった。
 良くも悪くも、人並みの器と責任感では背負いきれない、最強であり勇者の仲間という重圧から。

 二日という短い期間、ネロと向き合ってたどり着いた答えに、気づけば僕の手は彼女の頭を撫でていた。

「頑張ったね。向いてないことを、こんなになるまで」
「褒められて、こんなに気持ちいいなんて……♡」

 繋がったまま、激励される喜びにネロは打ちひしがれている。
 蜜壺は常に細かく痙攣しっぱなしだ。
 果たして催淫や感覚増大の効果が生きているのかはもうわからないが、ネロが僕を本心から求めてくれているのは間違いない。

 なら今は、求められるがままにしよう。
 目の前の彼女を労るように、これまでの忍耐を祝福するように。

「魔王……」
「アークスでいいよ」
「……アークス、優しく、気持ち良くさせて♡」

 幸い、経験のある注文だった。
 昨日の晩、眠ってしまう寸前のセックスを、意図的にする。
 意識しながらだと難しいが、それでも静かに、腰を前後させる。

 ぬちゅり、ぬぷり、にゅるる……。
 肉を叩く音はなく、滑る水音が響く。
 ネロの喘ぎ声も激しいものではなく、上ずるような甘美な音色に変わった。

「ぁ、えへぇ……っ♡ これ、すきだ……♡」
「だらしない顔になってるけど」
「いいよ……♡ アークスには、見せてもいいってわかったんだ……♡ ぅ、ぐぅ……おへそのおく、ぐりぐりされるの……クる……っ♡」
「なら、もっと」
「ん、ぐぅぅぅぅっ♡ はぁ、はぇ……♡ また、くる……ぅ♡」

 脈動するように早くなる蜜壺の痙攣。
 逸物は搾るように、襞に扱き上げられる。
 腹が焼けそうなほどの熱と襞の感触に、射精感が高まる。
 だが僕が絶頂するより早く、ネロが大きく身を逸らす。

「あ゛ッ♡! あ゛、はぁ……っ♡! また、イかされてしまった……♡」
「すごい声だったね、大丈夫」
「私はな。アークスこそ、イけそうだったんじゃないか?」
「僕は大丈夫だよ。のんびり射精までいけるから」
「そう、か。じゃあ」
「うん。ネロももう一回くらい、絶頂したいでしょ」

 問いかけに、ネロは静かに頷く。
 すぐにまた、意識が曖昧になりそうなほど遅く、ピストンを再開する。

「あ゛、あ゛ぁ……♡ ダメ、アークスのが、気持ち良すぎて……♡ なにも、考えられない……♡」
「ネロも、気持ちいいよ」
「……ふ、へへ……そっか……♡!」

 抱き合い、体を密着させ合い、求められただけ与え、甘えさせる。
 触れる身体の筋肉の硬さとは正反対な、ナイーブな彼女の心に、快感が染み渡るように。
 ゆっくり埋め、優しく撫で引き抜く。
 その度に、ぞぞぞっ……と、ネロの肉体の震えは強くなっていった。

「きもちぃ……♡ ぎも、ちぃ゛……っ♡ アークス、ま、た……ッ♡!」
「……うん。今度は僕も、イけそうっ」
「来て、来てくれ……ッ♡ あーくす、ッ♡!」

 速度は遅いが、捩じ込む力は篭っていく。
 ネロの肉壺も震えきり、無数の舌で舐められているかのような快感だ。
 四方八方から舐め上げるようになぞられる快感。
 限界は弾け、ネロの最奥を貫く。

「出すよ、ネロッ!」

 瞬間、逸物が弾けるように、勢いよく吐精する。
 ネロも同時に絶頂し、褐色の肌にブワッと汗が纏われ、全身の筋肉が引き攣ったように跳ねた。

「ん゛くっ♡! あ゛っ゛♡♡゛!」

 最後の絶頂に可愛げはなく、正しく快感に貫かれるような、腹から一気に声を絞り出した断末魔に似た嬌声だった。
 肉壺は根本から蠢き、たった一度の射精だというのに、一滴残らず絞り出される。
 そのグリップだけで動けず、ネロの上に覆い被さると、彼女は僕の体を抱き止めた。

「ハァ、ハァ……ごめん、すぐに退くから」
「大丈夫……むしろ、このままがいい」
「重くないと思うけど、労りたいんだ」
「そっ、か…… じゃあ、寂しいけれど」

 覆い被さる姿勢から、逸物を抜いて横に転がる。
 あまり動いたつもりはないが、全力で行動した後のように、息は上がりきっていた。
 言葉をかける余裕すらなく、ぼーっとする。
 そんな意識を、指を絡め握ってくるネロの手が繋ぐ。

「フフッ、不思議だな。二日でこんなことになるなんて」

 欲求から解放されたのだろう。
 語りかける優しげなネロの声に、応答するように手を握り返す。

「会ったのは最後の戦いの時だから、まあ目が合っただけだけれど」
「あの日からの運命、というのはロマンチストすぎるか?」
「ロマンというよりは、重いかな」
「重っ……そんな……」
「抱え込みすぎるヤツって、ソイツ自身も重いこと多いから」

 それに、と握る手の力を強めながら、続ける。

「ネロの重さは、僕が肩代わりするから」
「……ありがとう、アークス」

 向かい合った僕たちは、微睡の中に口づけをした。
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