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将来のアタッカー

ミナトの性癖

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 ♦︎♢♦︎

 瞳を開くと、そこは夢だった。
 暗闇の中、心配そうに顔を覗き込んでくるサリエスは俺の意識があることを確認すると、にんまりと微笑んだ。

「よかった、パパもこっち側に来れたんだね! 三人同時は初めてだったから、不安だったんだ~」

 おい、いい加減やめるんだ。
 無限天獄《ヘル・トゥ・ヘブン》は人間に使わない、それが俺たちファミリーの約束だろ? ママも──て、あれ?

「ごめんねーパパの声は封じさせてもらったよん。面倒臭い説教は聞きたくないからね」
「──!!」
「怖い顔してもダーメ、パパが弱いのが悪いんだよ? 私がいなきゃ、死んじゃってたんだから感謝してよねー」
 
 もっと素を正せば言う事を聞かず勝手に出てきたサリエスが……と、言いたいが。
 でも、ごもっともである。俺に力があれば、こんなことにはならなかった。
 それに、彼女はやんちゃだが親思いな一面もある。俺の責任だ……だからこそ、止めないと。

「ッ……っ!!」
「手足も拘束させてもらったからね、親子水入らずの拘束プレイってやつ? まー今回パパには、指を咥えて見てて欲しいんだ」
「……?」
「私も大人になったってとこ!!」
「──ッ!?」

 パチンッと指を弾く音が脳を揺らす。
 刹那、まるで本のページが捲れるように景色が一変した。
 空の上、街全体を見晴らせる位置に俺達は立っている。

(王国……か)

 街の中心には巨大で堅固な城が建ち、その周辺を瓦礫製の民家が囲っていた。
 俺の記憶にある王国よりも規模は大きく、歩く人々の服装、憲兵の装備も充実している。ならば、これは。

「うわ~すっごい! 外の世界には、こんな場所もあるんだね!」

 無邪気に声を上げるサリエス。
 もっと情勢が安定したら、いつか人間の世界も見せなきゃと思っていたが……夢の世界で見せることになるとは。

「ちょっと探検したい! パパ、着いてきて!」
「──!」

 そう言うと、サリエスは身動きのとれない俺の引っ張り宙に浮いたまま街中へと飛び立った。
 すれ違う老若男女、店頭で販売されている様々な商品を彼女は興味深そうに手に取る。
 目を輝かせながら、食べてみたり、嗅いでみたり、触ってみたり。
 まるで、見た目相応の女の子……だが、実際は200歳を超えている。
 サキュバスは精神体に近い存在故、姿形を変えられるし、経験や知能がそのまま肉体に反映されるのだという。
 もしかしたら、これを機にサリエスも大人っぽい見た目に成長するかも知れないな。
 子の成長を楽しみにしない親はいない。勿論、俺も例外じゃないさ。ふふ。

(──っと、違う違う! そうじゃなくて)

 俺は唯一動く首をぶんぶんと振り、ここが淫魔の夢の中だということを自分に再認識させた。
 街行く人々も、俺たちの存在に気が付かない。口にした果実の味や、肉の焼ける匂いなど、全ての情報はミナトの記憶に依存する。
 だから、ここはどこまでいっても偽物なのだ。
 全く持って意味のない世界、と言い切れる。

「────!!」
「なぁに、パパは黙ってて……って、黙ってた。言いたいことはわかるよ? あの女が何処にいるか知りたいんでしょ?」

 そう言えば、淫夢だというのに彼女の姿が見えない……どういうことだ。

「パパは早漏だからなぁ~もっと余興を楽しまないと」
(お、俺は早漏じゃねぇ!)
「まぁまぁ、そろそろ来ると思うよ……ほら、噂をすれば──」
「このクソガキィィィィィイ゛ッ!!!」

 怒声と共に強襲してくるミナト。
 建物の隙間から現れ突貫。刃を真っ直ぐサリエスへと突き刺した。グザ。
 腹を突き抜け貫通する剣には、ベットリと紅が塗られた。だが。

「うわーやーらーれーたー……なんてね」
「チィッ!!」

 霧のように消えるサリエス。
 ここは夢の中、物理攻撃は全く意味をなさない。

「どこだ!? 逃げるか卑怯者!!」
「逃げないよ? ほら、遊ぼ」
「──ッ、そこかァァ!!」

 気が付けば後ろに、前に、下に、上に。
 神出鬼没の彼女に対し、ミナトはとにかく剣を振るった。
 ……太刀筋が雑過ぎる。こんなんじゃ、現実でも当たらないだろう。
 なんだ? 何故こんなに錯乱している?
 怒り……じゃない、恐怖とも感じられない……これは……悲しみ?

「ミナちゃんだっけ? ほら、ここだよ? もっと頑張らないと、だーれも助けられないよ?」
「はぁ、はぁ……き、貴様ァ!!」

 サリエスはミナトの感情の正体を知っているようだ。当然か、夢を支配しているのだから。

「この……クソッ、クソォ!!」
「ミナちゃん、ざっこ~! 私、そろそろ飽きちゃったぁ」
「まだだ……まだ負けてない!!」
「あ、そ。じゃ、正座して」
「なッ──ぅあ!?」

 パチン。彼女がまた指を鳴らすと、ミナトはピタッと攻撃を止め、忠実に命令を聞いた。

「ん~……へぇ、私よりは下だけどミナちゃんも中々可愛いね」
「貴様……!」
「安心していいよ、『私は』意識まで奪わないから。でもぉ~」

 ふんふん、と鼻歌混じりにミナトの身体を眺めるとゆっくりと腕を伸ばした。

「な、何をする気だ……」
「分かってるでしょ? だって、散々に開発されてるじゃん……ミナちゃんのせ・い・へ・き♡」
「──ぁ、きゃぁあ!」

 サリエスは獣のように爪を伸ばすと、ミナトの胸元を引き裂いた。
 そして、悲鳴と共に露わになる乳房が飛び出してくる。
 ぃ、意外とデカい……というか、サラシを巻いて抑えていたのか。

「わぁ、びっくらポン! 下品な乳だ!」
「ゃ、やめろ! 見るな!」
「ほんとぉ~ふふ、身体は期待しちゃってるみたいだねぇ」
「ち、違う違う違う!!」

 ミナト自身は否定するが、彼女の乳首は空気に触れた瞬間、ぷくぷくと膨らみ始めていた。

「可愛いぃ~ちんちんみたいだね♡ 興奮してるんだ」
「これは貴様の術で──」
「嘘はいけないよ? 私は身動きを封じているだけだもん。パパ、感想の一つでも言ってあげたら?」
「──!!」
「そうだ、喋れないんだった。けど、表情で分かるよ。とってもスケベで、エッチだよね~」
「黙れ……黙れ黙れ!!」

 真っ赤に顔を染め、悔しそうに歯軋りをする。だが、乳首はどんどん硬くなりピンッと立ち上がっていた。まるで、触って欲しいと言わんばかりに。

「ッ……拙者はあの日から……復讐を誓ったあの日から女は捨てたのだ! この程度の恥辱には屈さぬ……!」
「でも、貴女に刻まれた呪縛は残されたまま。例え、自らに嘘を吐こうと抗うことはできないよ」
「クソッ……淫魔などに、クソッ……!!」
「さて、こわーい話はここまでにして、そろそろお楽しみの時間始めようかな。みんなー集まれー!♡」
「──ッ、な!?」

 サリエスが手を挙げると、さっきまで俺たちを見向きもしなかった夢の住人達がぞろぞろと集まり、乳を露見させたミナトを囲んだ。

「なんだ、この女おっぱい出してるぞ?」
「へ、変態だ……」
「すげー下品な乳してやがる」

 沢山の男が思い思いの言葉を呟き、舐めるような視線でミナトの乳を視姦した。
 それに応えるように、言葉を耳にした彼女はビクッ、ビクッと身体を小さく跳ねらせる。

「こ、こんなの幻影だ! 夢の中だということは理解している……貴様が言わせてるだけだろうに!!」
「うん、そうだよ? だから、恥ずかしいことなんて、何一つないよね?♡」
「……当然だ」
「じゃあ、やっちゃうね?」

 そして、サリエスは淫妖な笑みを浮かべると、スゥーっと息を吸い込み大声で宣言した。

「みんなー! これからミナちゃんの、公開オナニーショーを始めちゃうよォん!♡」
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