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様々な問題
サイゴン伯爵の思惑
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「シャルム侯爵、ジングラム伯爵」
謁見を済ませて2人が帰路に就こうと廊下を歩いていると、サイゴン伯爵の従者、オーシロンに呼び止められる。
「そなたは?」
「申し遅れました。私はサイゴン伯爵に仕えるオーシロンと申します」
「サイゴン伯爵の? で、何か用か?」
「はい。もしお時間がありましたら、主が是非お会いしたいと申しておりますが、いかがでしょうか?」
「時間は、少しなら無い事は無いが。どんな用件だ?」
「今回陛下が推し進めようとなさっておられる教育改革の件です」
「分かった。会おう」
教育改革と聞き、ジングラム伯爵は即座に返事をした。だがシャルム侯爵は少し考える素振りを見せた。
「シャルム侯爵はいかがでしょう? 何か、お急ぎの御用時でもおありでしょうか?」
「いや……。先程陛下とその話をさせてもらって来たところだ。私なりに色々と考えるところはあるのだが……」
「それでしたら是非、我が主とも話を交わしていただきたく存じます。主は今回の陛下の教育改革における問題点を、いたく心配しておいでなのです」
「……そうか。分かった、参ろう」
シャルム侯爵の承諾にオーシロンはホッとした表情になり、2人を案内すべく、先に立って歩き出した。
サイゴン伯爵の邸宅は、王宮より少し離れた位置に在している。オーシロンは待たせていた馬車に二人を乗せ、主の待つ邸宅へと向かった。
馬車が伯爵邸に着いた時、すぐにサイゴン伯爵自らが出迎えた。その様子から、サイゴン伯爵がいかに今回の改革案を不安視しているのかが見て取れる。
「シャルム侯爵、ジングラム伯爵もよくお出でいただいた。どうぞこちらへ」
サイゴン伯爵は自ら客間へと案内し、侍従にワインを持ってくるよう命じた。
「早速ですが、今日お二人は陛下にお会いになられたのですよね? お話合いはどうなりましたか?」
サイゴン伯爵の問いかけに、ジングラム伯爵が今まで溜まっていた鬱憤を晴らさんとばかりに喋り出した。
「どうもこうもありません。陛下のお考えには、ほとほと困惑しております。あれでは生まれが生まれだから仕方がないと、皆に陰口を叩かれてもしょうがないですな。下々の者を我らと同様に扱おうと考えるなどと、片腹痛い。陛下は人は平等だと仰っていたが、そんな馬鹿な事があるわけがない。貴族は貴族、平民には平民の在りようがあるというのに……っ」
よほど腹に据えかねていたのだろう。話していくうちに段々と、ジングラム伯爵の口調が変わっていた。その様子に隣で聞いていたシャルム侯爵が苦笑いをしている。
「それには、全くの同意見です。私は彼ら平民にも高い教育を与えるのには賛成ですが、それ以上の自由を与えるのには反対の立場です。……シャルム侯爵はどうですかな?」
「私ですか? 私も最初はサイゴン伯爵と同意見でした。私にとって一番大切な事は、代々続く誇り高い己の家を守ること、それを崩すような平民への過剰な自由を与えるべきでは無いと思っておりました」
「……思っておりましたとは、過去形ですね? 何か、お考えに変化があったのですか?」
サイゴン伯爵にあらためて問われて、シャルム侯爵は少し考える素振りを見せる。その様子には、迷いが見て取れた。
「……変化、とまで言って良いのかは分かりませんが、陛下の仰ることも尤もだと思えたのです。この国を強くするために経済力の強化を図る。そのための努力がこの改革の基になっているのだとしたら、ある程度の妥協も必要では無いかとも思えたのです」
「……さようですか」
「甘い、甘いですぞシャルム侯爵! 陛下の傍に居たあの第一秘書を見たでしょう! あんな農民が傍に居るから、陛下はあんな馬鹿な事を考えるようになったんですよ。大体農民を王宮に上げるという事自体、私には考えられません。全くもって忌々しい!」
ジングラム伯爵は眉間にしわを寄せ、机をドンッと叩く。セレンに会った時の苛立ちが、未だ治まらないようだ。
そこに先程の侍従が入って来て、彼らの前にグラスを置きワインを注いでいく。
「どうぞ。これは、我が領地で収穫されたブドウから作っております。口当たりもよく、飲みやすいですよ」
このサイゴン伯爵の勧めには、さすがのジングラム伯爵も頬を緩めた。
2人は勧められるままグラスを持ち、香りを楽しんだ後グラスに口を付ける。白ワインらしく、フルーティなさっぱりとした味わいが口の中に広がった。
「美味い……」
「美味しいですな。飲みやすくて、癖になりそうです」
「有難うございます」
サイゴン伯爵は2人の感想に満足そうに微笑んで、自分もグラスを手に取った。
「……そう言えば」
グラスをテーブルの上に置き、シャルム侯爵がポツリと呟く。だが、そのまま続きを言うでもなく、テーブルの上をじっと見ている。
「どうかされましたか?」
途中で言葉を飲み込んだシャルム侯爵の事が気になり、サイゴン伯爵が続きを促す。それに、苦笑いをしながらシャルム侯爵が言葉を続けた。
「いや、……陛下の秘書のあのルウクとかいう青年も、凄く美味しい紅茶を淹れていたなと思い出しまして……」
シャルム侯爵のその言葉に、2人は眉間にしわを寄せた。
「……私もジングラム伯爵同様、あの青年は、陛下にとって為にはならないと考えていますよ」
「……と言いますと?」
「考えてもごらんなさい。確かに陛下御自身も農業に興味があると仰っていましたけど、それだけでは平民の地位向上までは考えないとは思いませんか?」
「それではサイゴン伯爵は、陛下がそのルウクとかいう秘書の為にあんな改革案を出したとお思いなので?」
「そう考えるのが妥当でしょう。おそらく彼の家族や出身地の生活を良くして欲しいとか、そんな事を頼んだといったところでは無いかと思いますよ」
「……そうですよ。きっと、そうに違いありません。あの秘書め、大人しそうな顔をして随分な事を考えてくれるものだ」
ジングラム伯爵は執務室での控えめな態度のルウクを思い出し、あれが演技だったのだとしたら忌々しい奴だと苦々しい顔つきになる。
「…………」
だがその隣では、シャルム侯爵が顎に手を当てて神妙な表情をしていた。
サイゴン伯爵は、そんなシャルム侯爵を横目で見つつ、そ知らぬふりで話を進める。
「何にしても、彼は陛下に影響を与え過ぎなのは間違いないでしょう。それだから庶子王に農民出身の従者と一括りにされ、陰で色々言われることになっているのですよ。……全く、どうにかならないものでしょうかねぇ」
「秘書を脅して、辞めるように言い聞かせましょうか」
「ジングラム伯爵、それは拙いですよ。陛下のお耳に入りでもしたら、それこそ厄介な事になりかねませんぞ」
「それは、そうですが……」
サイゴン伯爵に諭されて、ジングラム伯爵は「う~ん」と唸りながらソファの背持たせに体を預けた。その隣のシャルム侯爵は、未だに神妙な顔つきで何かを考えこんでいる風情だ。
それを横目でチラリとみて、サイゴン伯爵は少し冷えた眼差しを床に落とした。そして「ふっ」と息を吐き、気持ちを切り替えたように顔を上げる。
「お二人とも今日はお忙しいところ、私の我がままを聞いていただきいらしてくれてありがとうございました。陛下へのご注進はゆっくり考えることにして……。良ければ、ワインのお変わりはいかがですかな?」
そのサイゴン伯爵の勧めに、2人とも愛好を崩す。
「それは有り難いですな。あれは、実に美味かった」
お世辞では無いその表情に、サイゴン伯爵も嬉しそうに頷き、ベルを鳴らして侍従を呼んだ。
謁見を済ませて2人が帰路に就こうと廊下を歩いていると、サイゴン伯爵の従者、オーシロンに呼び止められる。
「そなたは?」
「申し遅れました。私はサイゴン伯爵に仕えるオーシロンと申します」
「サイゴン伯爵の? で、何か用か?」
「はい。もしお時間がありましたら、主が是非お会いしたいと申しておりますが、いかがでしょうか?」
「時間は、少しなら無い事は無いが。どんな用件だ?」
「今回陛下が推し進めようとなさっておられる教育改革の件です」
「分かった。会おう」
教育改革と聞き、ジングラム伯爵は即座に返事をした。だがシャルム侯爵は少し考える素振りを見せた。
「シャルム侯爵はいかがでしょう? 何か、お急ぎの御用時でもおありでしょうか?」
「いや……。先程陛下とその話をさせてもらって来たところだ。私なりに色々と考えるところはあるのだが……」
「それでしたら是非、我が主とも話を交わしていただきたく存じます。主は今回の陛下の教育改革における問題点を、いたく心配しておいでなのです」
「……そうか。分かった、参ろう」
シャルム侯爵の承諾にオーシロンはホッとした表情になり、2人を案内すべく、先に立って歩き出した。
サイゴン伯爵の邸宅は、王宮より少し離れた位置に在している。オーシロンは待たせていた馬車に二人を乗せ、主の待つ邸宅へと向かった。
馬車が伯爵邸に着いた時、すぐにサイゴン伯爵自らが出迎えた。その様子から、サイゴン伯爵がいかに今回の改革案を不安視しているのかが見て取れる。
「シャルム侯爵、ジングラム伯爵もよくお出でいただいた。どうぞこちらへ」
サイゴン伯爵は自ら客間へと案内し、侍従にワインを持ってくるよう命じた。
「早速ですが、今日お二人は陛下にお会いになられたのですよね? お話合いはどうなりましたか?」
サイゴン伯爵の問いかけに、ジングラム伯爵が今まで溜まっていた鬱憤を晴らさんとばかりに喋り出した。
「どうもこうもありません。陛下のお考えには、ほとほと困惑しております。あれでは生まれが生まれだから仕方がないと、皆に陰口を叩かれてもしょうがないですな。下々の者を我らと同様に扱おうと考えるなどと、片腹痛い。陛下は人は平等だと仰っていたが、そんな馬鹿な事があるわけがない。貴族は貴族、平民には平民の在りようがあるというのに……っ」
よほど腹に据えかねていたのだろう。話していくうちに段々と、ジングラム伯爵の口調が変わっていた。その様子に隣で聞いていたシャルム侯爵が苦笑いをしている。
「それには、全くの同意見です。私は彼ら平民にも高い教育を与えるのには賛成ですが、それ以上の自由を与えるのには反対の立場です。……シャルム侯爵はどうですかな?」
「私ですか? 私も最初はサイゴン伯爵と同意見でした。私にとって一番大切な事は、代々続く誇り高い己の家を守ること、それを崩すような平民への過剰な自由を与えるべきでは無いと思っておりました」
「……思っておりましたとは、過去形ですね? 何か、お考えに変化があったのですか?」
サイゴン伯爵にあらためて問われて、シャルム侯爵は少し考える素振りを見せる。その様子には、迷いが見て取れた。
「……変化、とまで言って良いのかは分かりませんが、陛下の仰ることも尤もだと思えたのです。この国を強くするために経済力の強化を図る。そのための努力がこの改革の基になっているのだとしたら、ある程度の妥協も必要では無いかとも思えたのです」
「……さようですか」
「甘い、甘いですぞシャルム侯爵! 陛下の傍に居たあの第一秘書を見たでしょう! あんな農民が傍に居るから、陛下はあんな馬鹿な事を考えるようになったんですよ。大体農民を王宮に上げるという事自体、私には考えられません。全くもって忌々しい!」
ジングラム伯爵は眉間にしわを寄せ、机をドンッと叩く。セレンに会った時の苛立ちが、未だ治まらないようだ。
そこに先程の侍従が入って来て、彼らの前にグラスを置きワインを注いでいく。
「どうぞ。これは、我が領地で収穫されたブドウから作っております。口当たりもよく、飲みやすいですよ」
このサイゴン伯爵の勧めには、さすがのジングラム伯爵も頬を緩めた。
2人は勧められるままグラスを持ち、香りを楽しんだ後グラスに口を付ける。白ワインらしく、フルーティなさっぱりとした味わいが口の中に広がった。
「美味い……」
「美味しいですな。飲みやすくて、癖になりそうです」
「有難うございます」
サイゴン伯爵は2人の感想に満足そうに微笑んで、自分もグラスを手に取った。
「……そう言えば」
グラスをテーブルの上に置き、シャルム侯爵がポツリと呟く。だが、そのまま続きを言うでもなく、テーブルの上をじっと見ている。
「どうかされましたか?」
途中で言葉を飲み込んだシャルム侯爵の事が気になり、サイゴン伯爵が続きを促す。それに、苦笑いをしながらシャルム侯爵が言葉を続けた。
「いや、……陛下の秘書のあのルウクとかいう青年も、凄く美味しい紅茶を淹れていたなと思い出しまして……」
シャルム侯爵のその言葉に、2人は眉間にしわを寄せた。
「……私もジングラム伯爵同様、あの青年は、陛下にとって為にはならないと考えていますよ」
「……と言いますと?」
「考えてもごらんなさい。確かに陛下御自身も農業に興味があると仰っていましたけど、それだけでは平民の地位向上までは考えないとは思いませんか?」
「それではサイゴン伯爵は、陛下がそのルウクとかいう秘書の為にあんな改革案を出したとお思いなので?」
「そう考えるのが妥当でしょう。おそらく彼の家族や出身地の生活を良くして欲しいとか、そんな事を頼んだといったところでは無いかと思いますよ」
「……そうですよ。きっと、そうに違いありません。あの秘書め、大人しそうな顔をして随分な事を考えてくれるものだ」
ジングラム伯爵は執務室での控えめな態度のルウクを思い出し、あれが演技だったのだとしたら忌々しい奴だと苦々しい顔つきになる。
「…………」
だがその隣では、シャルム侯爵が顎に手を当てて神妙な表情をしていた。
サイゴン伯爵は、そんなシャルム侯爵を横目で見つつ、そ知らぬふりで話を進める。
「何にしても、彼は陛下に影響を与え過ぎなのは間違いないでしょう。それだから庶子王に農民出身の従者と一括りにされ、陰で色々言われることになっているのですよ。……全く、どうにかならないものでしょうかねぇ」
「秘書を脅して、辞めるように言い聞かせましょうか」
「ジングラム伯爵、それは拙いですよ。陛下のお耳に入りでもしたら、それこそ厄介な事になりかねませんぞ」
「それは、そうですが……」
サイゴン伯爵に諭されて、ジングラム伯爵は「う~ん」と唸りながらソファの背持たせに体を預けた。その隣のシャルム侯爵は、未だに神妙な顔つきで何かを考えこんでいる風情だ。
それを横目でチラリとみて、サイゴン伯爵は少し冷えた眼差しを床に落とした。そして「ふっ」と息を吐き、気持ちを切り替えたように顔を上げる。
「お二人とも今日はお忙しいところ、私の我がままを聞いていただきいらしてくれてありがとうございました。陛下へのご注進はゆっくり考えることにして……。良ければ、ワインのお変わりはいかがですかな?」
そのサイゴン伯爵の勧めに、2人とも愛好を崩す。
「それは有り難いですな。あれは、実に美味かった」
お世辞では無いその表情に、サイゴン伯爵も嬉しそうに頷き、ベルを鳴らして侍従を呼んだ。
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