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香子は俺のものだ!

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翔くん……。
どうしようかなー……。
そろそろもうヤキモチ焼いてもらうのは諦めて、翔くんにまた好き好きアピールしに行こうかな。

休み時間にぼんやり翔くんのことを考えていたら元木さんが走ってやって来た。
そして廊下から『来い、来い』と私に向かって手招きをする。

そろそろ翔くんの傍が恋しくなってきていたので、『え~っ』と思いつつ、チラリと翔くんを窺うも、翔くんはこちらを見てもいない。

……やっぱり翔くんは自分の所にくる子にしか興味が無いのかな。

――来るもの拒まず去るもの追わず……。

はあっ。

元木さんの方に目を向けると、切羽詰まった表情で一生懸命手招きしている。
いつもならもっと気にするだろう女子の視線も、なぜか今日はあまり目に入っていないようだ。

何かあったのかな?

しょうがないので私はため息を吐きつつ、女子の突き刺さるような視線をあえて無視して元木さんの所に歩いて行った。

「しのちゃん、もう遅いよ! ちょっと、こっちこっち」

これはどうやら犬のことだね。
どうも私は元木さんの中では、かっこつけないで良い、対象外の人認定をされているようだ。もちろん異論は無いけど。

「今日お昼休み、付き合ってくれないかな」
「え? お昼休み? なんでですか? 元木さんいつも女の子たちと一緒でしょ?」

不思議に思って聞き返すと、元木さんは声のトーンを落とした。

「実はさっき聞いたんだけど、例の学校で預かっている犬、あの二匹の行き先が決まったらしいんだよ」
「そうなんですか? 良かったですね!」
「……ああ。ちょっと寂しいけど、あいつらの幸せを考えたら喜ばないといけない事だよな」
「……元木さん」

本当に犬好きなんだね。
うれしいけど寂しくて仕方がないって顔してる。

「で、さ」
「はい」
「その引き渡しがお昼休みらしいんだ」
「そうなんですか」
「うん。……だからその、お別れ……だから、遠くからでもあいつらを見送ってやりたくて……」

なるほど。
それに付き合って欲しいってことね。

「いいですよ、付き合います。……で、どうしますか?」
「俺がしのちゃんを迎えに行くから一緒に飯食って、それから裏庭に直行しよう」
「分かりました。……ところで私、お弁当持ってきてないんですけど」
「俺もだ。……適当でいいなら俺が売店でしのちゃんのも見繕ってくるぞ。もちろん俺の奢りで」
「え! いいんですか?」
「俺の用事に付き合ってもらうんだからな。それくらいはさせろ」
「あ、ありがとうございます」

ここは素直にお礼を言っておこう。
元木さんは男前だ。

「じゃあ、そういうことで。俺は売店で買ってから、ここにしのちゃんを迎えに来るから」
「分かりました。じゃあ、待ってますね」
「ありがとう、よろしく頼むよ」

女の子大好きなのに、それ以上に犬好きなんだなあ。
今回は女子の視線にまったく応えずに、元木さんは私にホッとしたように笑いかけて手を振って、自分の教室に戻って行った。
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