65 / 82
異変
悪魔の血 2
しおりを挟む
意を決したようにあたしを見て、はっきりと言葉にされて背筋が寒くなった。
そして気づいた。
十字架を怖いと思ったあの気持ち。
あれは……そう言う事?
あたしの中で、何かが変化している……?
あたしはもう……人間じゃ、ないの?
カタカタと震えだす体。
気が……変になりそう……。
気分が悪く、震えも止まりそうになかった。
ベッドの上で体を温めようと、自分で自分の肩に腕を回した。
ギシッと音がしてベッドがへこむ。その反動で傾いた体を大石君が抱き寄せた。
「大丈夫だ。お前に悪い様には絶対にしない」
優しい声で呟くように言って、あたしをギュッと抱きしめてくれた。
密着した体に直に響く、トクントクンと規則正しい大石君の心音。
暖かい腕に抱かれて、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
「あたし……人間……だよね」
「……ああ」
「本当に?」
「本当だ」
大石君はそう言ってあたしを抱く腕に力を込める。そしてあたしの髪に顔をうずめた。
「……大石君?」
あまりにも強く抱きしめられて、息が苦しい。
だけど何度問いかけても大石君からの返事はなく、只々あたしを抱きしめ続けていた。
どのくらい時間が経ったんだろう。
あたしを抱きしめていた腕を緩めて、彼が唇を寄せてきた。目を瞑ってそれに応える。
何度か優しく啄まれて唇が離れて行く。
薄っすらと目を開けると、大石君が深い目であたしを見ていた。
「家まで送る」
大石君に手を差し伸べられて、あたしの手をそれに乗せると、ギュッと握りしめてくれた。
それに安堵して顔を上げて彼を見る。
その表情は、なんだか寂し気に見えた。
なぜ、彼がそんな表情をしたのか聞くべきだった。
だけどその時のあたしには自分のことで精一杯で、彼の気持ちを推し量る事が出来なかったんだ。
そして気づいた。
十字架を怖いと思ったあの気持ち。
あれは……そう言う事?
あたしの中で、何かが変化している……?
あたしはもう……人間じゃ、ないの?
カタカタと震えだす体。
気が……変になりそう……。
気分が悪く、震えも止まりそうになかった。
ベッドの上で体を温めようと、自分で自分の肩に腕を回した。
ギシッと音がしてベッドがへこむ。その反動で傾いた体を大石君が抱き寄せた。
「大丈夫だ。お前に悪い様には絶対にしない」
優しい声で呟くように言って、あたしをギュッと抱きしめてくれた。
密着した体に直に響く、トクントクンと規則正しい大石君の心音。
暖かい腕に抱かれて、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
「あたし……人間……だよね」
「……ああ」
「本当に?」
「本当だ」
大石君はそう言ってあたしを抱く腕に力を込める。そしてあたしの髪に顔をうずめた。
「……大石君?」
あまりにも強く抱きしめられて、息が苦しい。
だけど何度問いかけても大石君からの返事はなく、只々あたしを抱きしめ続けていた。
どのくらい時間が経ったんだろう。
あたしを抱きしめていた腕を緩めて、彼が唇を寄せてきた。目を瞑ってそれに応える。
何度か優しく啄まれて唇が離れて行く。
薄っすらと目を開けると、大石君が深い目であたしを見ていた。
「家まで送る」
大石君に手を差し伸べられて、あたしの手をそれに乗せると、ギュッと握りしめてくれた。
それに安堵して顔を上げて彼を見る。
その表情は、なんだか寂し気に見えた。
なぜ、彼がそんな表情をしたのか聞くべきだった。
だけどその時のあたしには自分のことで精一杯で、彼の気持ちを推し量る事が出来なかったんだ。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる