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サモン
エルザの許し
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「いい加減にしろよ、サモン」
怒気を孕んだスイークの声に、ビクリと2人で反応する。
「髪を解放したくらいのそんな微々たる魔力じゃ俺を止める事なんて出来ねえぞ。そんな翼も角も引っ込めて、魔力を封印した姿じゃ俺にかないっこねえって事くらいは分かってんだろ。いい加減に本気出せ! サモン」
怒りに満ちたスイークの体から怒気のように光が渦を巻く。
あっと、思った瞬間、2人して吹き飛ばされてしまった。
大石君がまた咄嗟にあたしを庇ってくれた。
だけどそのせいで彼はかなりのダメージを受けてしまったようで、あたしを抱きしめる力も弱くなっている。
ハッと振り返ると、またしてもスイークが腕を上げていた。
――これ以上大石君を痛めつけさせたりしない!
あたしは思いっきり大石君を押して体を離し、逆にスイークの前に出て大石君に覆いかぶさった。必死で抱き着いてギュッと目を閉じる。
「……いづみ……」
弱々しく抗議する彼の声は、あえて無視した。
あたしだって怖い。怖くて怖くてしかたないけど、それ以上に大石君がこれ以上傷つけられることの方が嫌だ。
大石君を絶対に守りたくて、あたしは息が止まるくらいの力を込めた。
――バシン!!
凄い衝撃音とともに、目を閉じていても分かる眩しい光。
震えながら必死で、大石君の盾になる事だけを考えていた。
「……?」
……あ、れ?
どういうこと?
来るはずの衝撃を受け止めようと必死の思いで体中に力を込めているのに、一向に何も起こらない。
恐る恐る目を開けると、スイークの盾になる形でエルザが立っていた。
背後から見ているのでよく分からないけど、耳が尖っているのが分かる。
――本性、というものを出しているようだ。
「兄さん、もういい」
「エルザ……」
「もともとサモンとは、なにも無いのよ」
エルザの出現にスイークも気が削がれたようで、悪魔の姿から人間のそれへと変貌した。
「おい」とスイークがあたしを呼んだ。
呼ばれて怯えながらも、臆しちゃだめだと自分を叱咤しながらスイークを睨み返す。
「お前分かってんのか? 人間の格好をしていても、こいつは悪魔だぞ?」
呆れたような、バカにしたようなスイークの声。
彼にあたしの大石君への気持ちの何が分かるというんだろう。
「たとえ悪魔でも、あたしにとっては大石君だもの。何も変わったりしない」
怖くて声が震える。だけど臆するわけにはいかなかった。
必死であたしを助けてくれる大石君の為にも。
「いづみ」
エルザに呼ばれて振り返ると、もう耳は尖ってはいなかった。
「びっくりしたわ。あの状態で、まさかあなたが身を挺してサモンを守ろうとするなんてね」
「エルザ……」
ふと大石君を見ると、傷が痛むのか下を向いて険しい顔をしていた。
「じゃあね、サモン。大王にはそれなりに報告はしておくけど上手くやってよね。あなたにはあなたのやり方があるのでしょう?」
エルザにそう話しかけられているのに、なぜだか大石君は下を向いたままで返事もしない。
だけどエルザはそんな大石君に苦笑いだけを残して、スイークと2人でその場から消えて行った。
怒気を孕んだスイークの声に、ビクリと2人で反応する。
「髪を解放したくらいのそんな微々たる魔力じゃ俺を止める事なんて出来ねえぞ。そんな翼も角も引っ込めて、魔力を封印した姿じゃ俺にかないっこねえって事くらいは分かってんだろ。いい加減に本気出せ! サモン」
怒りに満ちたスイークの体から怒気のように光が渦を巻く。
あっと、思った瞬間、2人して吹き飛ばされてしまった。
大石君がまた咄嗟にあたしを庇ってくれた。
だけどそのせいで彼はかなりのダメージを受けてしまったようで、あたしを抱きしめる力も弱くなっている。
ハッと振り返ると、またしてもスイークが腕を上げていた。
――これ以上大石君を痛めつけさせたりしない!
あたしは思いっきり大石君を押して体を離し、逆にスイークの前に出て大石君に覆いかぶさった。必死で抱き着いてギュッと目を閉じる。
「……いづみ……」
弱々しく抗議する彼の声は、あえて無視した。
あたしだって怖い。怖くて怖くてしかたないけど、それ以上に大石君がこれ以上傷つけられることの方が嫌だ。
大石君を絶対に守りたくて、あたしは息が止まるくらいの力を込めた。
――バシン!!
凄い衝撃音とともに、目を閉じていても分かる眩しい光。
震えながら必死で、大石君の盾になる事だけを考えていた。
「……?」
……あ、れ?
どういうこと?
来るはずの衝撃を受け止めようと必死の思いで体中に力を込めているのに、一向に何も起こらない。
恐る恐る目を開けると、スイークの盾になる形でエルザが立っていた。
背後から見ているのでよく分からないけど、耳が尖っているのが分かる。
――本性、というものを出しているようだ。
「兄さん、もういい」
「エルザ……」
「もともとサモンとは、なにも無いのよ」
エルザの出現にスイークも気が削がれたようで、悪魔の姿から人間のそれへと変貌した。
「おい」とスイークがあたしを呼んだ。
呼ばれて怯えながらも、臆しちゃだめだと自分を叱咤しながらスイークを睨み返す。
「お前分かってんのか? 人間の格好をしていても、こいつは悪魔だぞ?」
呆れたような、バカにしたようなスイークの声。
彼にあたしの大石君への気持ちの何が分かるというんだろう。
「たとえ悪魔でも、あたしにとっては大石君だもの。何も変わったりしない」
怖くて声が震える。だけど臆するわけにはいかなかった。
必死であたしを助けてくれる大石君の為にも。
「いづみ」
エルザに呼ばれて振り返ると、もう耳は尖ってはいなかった。
「びっくりしたわ。あの状態で、まさかあなたが身を挺してサモンを守ろうとするなんてね」
「エルザ……」
ふと大石君を見ると、傷が痛むのか下を向いて険しい顔をしていた。
「じゃあね、サモン。大王にはそれなりに報告はしておくけど上手くやってよね。あなたにはあなたのやり方があるのでしょう?」
エルザにそう話しかけられているのに、なぜだか大石君は下を向いたままで返事もしない。
だけどエルザはそんな大石君に苦笑いだけを残して、スイークと2人でその場から消えて行った。
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