たとえ神様に嫌われても

らいち

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夏休み

微睡(まどろみ)のひととき

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翌朝、真奈美と根津君、それに千夏ちゃんと武本君がそれぞれダブルスを組んでテニスコートにいる。
真奈美は運動は苦手だからと何度も拒んでいたんだけど、結局千夏ちゃんに説得されてコートに立っている。
 
とはいえ、根津君がびっくりするくらい運動神経が良く、上手く真奈美のフォローをしてくれているので、その内真奈美も乗ってきているようだった。

「ふわ……」
平林君があくびをかみ殺している。

「……眠いのか?」
 
大石君は平林君が寝不足な事を分かっているくせに、あえて尋ねている。もちろんあたしもその隣であくびをかみ殺していた。

「うん……。何だか知らないんだけど眠いんだよな」
「そうか」
「…………」
「…………」
 
3人で並んで真奈美たちのテニスを見ているのだけど会話が続かない。平林君を無視して2人で話をするのも気が引けて、あたしも黙ってその場にいた。

「あのさ」
 
沈黙に耐えかねたのか平林君が大石君に話しかけた。
呼ばれて大石君が、平林君に顔を向ける。

「……昨日は悪かったよ。その……ホントはさ、ちょっとでも隙があればなって下心もあったんだけど、なんていうか……分が無いっていうのも分かったら……さ」

「……平林」
「魔が差したって言うかさ、嫌な思いさせてゴメン」
 
潔く頭を下げる平林君にはさすがの大石君も驚いたようだ。一瞬目を見開いてキョトンとした後、すぐに苦笑いをこぼす。

「……いや、まあ、俺も狭量なのは自覚してるから。こいつに手出ししないんなら、気にしないから」
 
そう言いながら大石君がグイッとあたしを引き寄せた。

「ちょっと、大石君……!」
「なんだよ。別にいいだろ。公認なんだから」
 
平林君の目の前で当たり前のようにのろける大石君に焦っていると、平林君が困ったように頭を掻いた。

「あー、もう。目の毒だな。俺、先に行ってバーベキューの準備してくるよ」
「あ、あたしたちも……」
「いいから、あいつたちの応援、ちゃんとしてやって」
 
立ち上がろうとしたあたしを手で制して、平林君はそのまま別荘の方へと歩いて行った。

「せっかくそう言ってくれてるんだから、2人の時間を満喫しよう。ホラ、座って」
 
腕を引き寄せられて隣に座る。
顔を上げると、青く高い空が目に飛び込んできた。
 

言われてみれば、大石君と過ごすこういう穏やかな時間は貴重かもしれないな……。



あたしは素直に大石君の肩にもたれて、貴重な時間を味わう事にした。
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