たとえ神様に嫌われても

らいち

文字の大きさ
上 下
4 / 82
捕食する瞳

迷惑な大石君

しおりを挟む
正直、今まで大石君の事は綺麗でカッコイイけど自分には係わりの無い人だと思っていた。
……ていうか、正直係り合いたくない……。

あの日から、なんだか大石君に変に目を付けられてしまったような気がして困る。彼に悪気はないのかもしれないけれど、時々沙良に睨まれているように思うのはきっと気のせいなんかじゃない。


「おはよう、いづみ」

今日も教室のドアを開けて真っ直ぐあたしの机の前まで来た彼は、優しげに微笑んで挨拶をした。
女子の視線が一斉に集中する。

もうヤダ! 
なんでそう毎日、毎日、あたしの所に一直線で来るかな。きっと沙良が背後から凄い顔で睨んでいるに違いないのに。

だけどこの男が、あたしが挨拶を返すまで絶対に退こうとしないという事は、連日の挨拶攻撃で学習済みだったりする。

「……おはよう」

しぶしぶといった感じで返事をした。迷惑だという事を、大石君にも周りの女子にもちゃんと分かって欲しい。

だけどそんなあたしに動じる事も無く、彼は綺麗な二重で切れ長の瞳を嬉しそうに細めてにっこり笑い、満足したかのように自分の席へと歩いていった。

「気に入られちゃったね」
ご愁傷様とでも言いたげに、真奈美が声をかけてくる。

「だね~」
千夏ちゃんまで同意する。

「困るんだけど……」

あたしはハアッとため息を吐いて、こっそりと大石君を窺う。すると既にそこには沙良と由美が陣取っていて、異様な雰囲気があった。
だけど多分大石君は何も気にしてなんかいない。けだるそうに腰かけて、どこか冷めた笑顔で見ているだけだ。


「いづみ、呼んでるよ!」

真奈美に大声で呼ばれてびっくりした。振り返ると高坂さんが立っていた。

「いづみ! ほんっとーに申し訳ないんだけど、今日の図書当番変わって欲しいんだけど!」
「え?」
図書当番? あたし、図書委員じゃないんだけど。

「ちょっとー、いくらいづみが人が良いからって、関係ないいづみに頼むのはいくらなんでも無いんじゃないの?」

いつも、のほほんとしておっとりしている千夏ちゃんが珍しくあたしの代わりに抗議してくれている。ビックリとともにぽかんとして千夏ちゃんを見ていたら、高坂さんが慌てて言い訳をした。

「ゴメン。そうなんだけどさ、委員の子に頼みに行ったら用事があるから無理だって断られちゃったんだよ」

お願い! と、両手を顔の前で合わせて上目使いであたしを見る高坂さん。
ああ、もうこれはあたしには断れないか。

「良いよ。別に部活とかしてるわけじゃないから。去年やってたから問題ないし」
「ありがとう! ありがと、いづみ。じゃあ、今日の放課後お願いね」
「うん。分かった」

高坂さんが席に戻って行くと、真奈美と千夏ちゃんが呆れたような目であたしを見ていた。

「いや、まあ図書館嫌いじゃないし……。でも、ありがとね。千夏ちゃん」

千夏ちゃんの肩をポンポンと叩きながらお礼を言うと、照れたように、「別にいいし」と口をとがらす。子供っぽいその表情が可愛らしくて笑ったら、頭をぽかりと叩かれた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

処理中です...