たとえ神様に嫌われても

らいち

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捕食する瞳

キスの目撃 2

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「お帰りー、いづみ。って、何? どうしたの!」

ぜいぜいと肩で息して、言葉を紡げない。立っているのも億劫でしゃがみこんだあたしの顔を、真奈美が心配そうに覗き込んだ。

「真奈美~。とんでもない物見た」
あたしは今、きっとものすごく情けない顔をしていると思う。

「とんでもない物?」

小首を傾げながら、催促するように真奈美が右手を差し出した。だけど先ほどの、恐怖なのかパニックなのか分からないモヤモヤした気持ちを吐き出したいあたしは、それに構わず話を続けた。

「沙良が大石君とキスしてたの!」
「ああ、うん。で?」

……は?

あっけにとられて呆然と固まるあたしに、真奈美が呆れたようにつぶやいた。

「沙良と由美ってさ、大石君のこと取り合いしてるでしょ? 大石君だってそれを面白そうに流してるじゃない。そのくらいじゃ驚かないよ」

「……あたし、大石君は由美と付き合ってると思ってた。沙良に乗り換えたって事?」
「違うんじゃない? なんか大石君見てると、どっちとも本気って感じしないし」

真奈美のあっけらかんとした言葉に、なんだかモヤモヤする。

だけどきっと当たっている。
キスをしている時のあの大石君の表情は、とてもじゃないけど真剣に好きな人との行為に没頭しているようには思えなかった。

……怖いくらい、色っぽかったけど……。

「ね。だからいづみ、DVDは?」

あっ。

「もうー、ちょっとぉ。何しに行ったのよー」
「だ、だって! あんな最中に、入って行けるわけないじゃない」

真っ赤になって反論すると、「それもそっか」と素直にうなずいてくれた。

「じゃあ、今度は一緒に行こう」
「うん!」


心底ホッとしたあたしは元気よく頷いて、先に立って歩き出した真奈美を追いかけた。
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