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第三章
これからの関係♪
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「――怒り疲れちゃったわ。で? これから須和君どうするの?」
「ここに、残ろうかなと思っています」
「え?」
事が解決したから、てっきり須和君はまた元の妖の群れへと帰っていくものだとばかり思っていたから、ちょっぴり驚くとともに、素直に嬉しいと思った。
「でも、大丈夫なの? ご両親とか頭とか……」
ここに住むという事は、須和君のご両親や仲間たちと離れて暮らすという事だ。
私は嬉しいけど……。
「大丈夫です。今回の任務を与えられた時に、上手くいけば何でも願いを叶えてやると頭に言ってもらったんです。ここの生活も、意外と楽しいと思えましたし……。両親にしても、私も一人前なのだから好きにしなさいというスタンスで特に何も言ったりはしません」
「そう、なんだ。……もしかして、須和君はここに来るのには、やっぱ戸惑いとかあったの?」
「……まあ、それは。みつ姫を守りながら銀の妖の陰謀を阻止出来るのかとか、自信があったわけではありませんでしたから。それなりに重圧はありました」
「……そっか。なのに私ったら、何にも知らないで……、いっぱい困らせちゃったかな」
「いえっ! とんでもありません。私の方こそ姫とは知らず、体を拝借するなど……。とんでもない事を。なんとお詫びをすればいいのか」
「…………」
相変わらずの堅苦しく他人行儀な物言いに、いい加減イライラしてきた。
プチッと何かが切れる音がする。
「いい加減にしてよ、その敬語! 私は須和君には千秋って呼んで欲しいのよ! 八木でも良いけど」
「で、ですがっ」
暖簾に腕押しとは、こういう事を言うのかもしれない。
どんなに普通にしろと言っても聞く耳持たない須和君に、いい加減うんざりする。
「あっ」
「え?」
良いこと思いついた。
ふふっ、ふふふふっ。
思わず前のめりになって、須和君の肩に両手を置く。
須和君は、後ろに少し引いて顔を赤くした。
「な、なんですか姫。その不気味な笑いは……」
「いいこと考えちゃった。あのね、須和君が私のこと"姫"って呼んだらね、罰として私が須和君にキスしちゃうの」
「えっ!?」
須和君は耳をピクピクさせ真っ赤になり、口元を手で覆った。可愛らしい耳の反応に口角が上がる。
「もちろん敬語も駄目よ♪」
ダメ押しにそう言うと、須和君は真っ赤になって冷や汗を掻いている。
「わーい、真っ赤っか♪ あたしの勝ちー。やっぱ須和君って純情よねー」
「…………」
楽しく勝利宣言する私に、須和君は絶句したような表情をしていたけど、そのうち可笑しそうにクスリと笑った。
「――という事は、私が姫という度に、キスしてもらえるという事ですね」
ピクピクと反応していた耳は、今は偉そうにピンと立っている。
!?
はい?
「な、な、なんでそこで開き直るのよ!」
思いがけない突然の反撃に、私の顔が急激に熱くなる。
何なのー?
なんで私が赤くならなきゃならないの!?
今度は私が真っ赤になって引き攣っていると、須和君が楽しそうに近づいてきた。
「残念ですが、こちらの方が地なんです」
うそーっ!!
心臓がドキドキとすごく煩い。
真っ赤になって固まる私を壁際に追い詰めて、須和君が私の手を壁に押しつけた。
うわー!
ドキドキがピークに来て、目を開けていられずにギュッと目を瞑った。
息も止めた状態で固まっていると、須和君が笑う気配がする。こっそり目を開けて須和君を見上げると、スッと私に顔を寄せた。
「千秋の方が……、純情だ」
「須和く……」
ゆっくりと近づいてきた須和君の唇が、そっと私の唇に触れる。
暖かく柔らかな感触を、私はドキドキしながら受け入れていた。
そして――、
「俺にみつ姫を守る使命を与えてくれた頭には、感謝しなくちゃいけないな」
そう言って笑ってくれた須和君は、時々私の前でだけ耳と尻尾を出して寛いでくれる。
――私がもふもふするのが好きなことを、分かってくれているから♪
「ここに、残ろうかなと思っています」
「え?」
事が解決したから、てっきり須和君はまた元の妖の群れへと帰っていくものだとばかり思っていたから、ちょっぴり驚くとともに、素直に嬉しいと思った。
「でも、大丈夫なの? ご両親とか頭とか……」
ここに住むという事は、須和君のご両親や仲間たちと離れて暮らすという事だ。
私は嬉しいけど……。
「大丈夫です。今回の任務を与えられた時に、上手くいけば何でも願いを叶えてやると頭に言ってもらったんです。ここの生活も、意外と楽しいと思えましたし……。両親にしても、私も一人前なのだから好きにしなさいというスタンスで特に何も言ったりはしません」
「そう、なんだ。……もしかして、須和君はここに来るのには、やっぱ戸惑いとかあったの?」
「……まあ、それは。みつ姫を守りながら銀の妖の陰謀を阻止出来るのかとか、自信があったわけではありませんでしたから。それなりに重圧はありました」
「……そっか。なのに私ったら、何にも知らないで……、いっぱい困らせちゃったかな」
「いえっ! とんでもありません。私の方こそ姫とは知らず、体を拝借するなど……。とんでもない事を。なんとお詫びをすればいいのか」
「…………」
相変わらずの堅苦しく他人行儀な物言いに、いい加減イライラしてきた。
プチッと何かが切れる音がする。
「いい加減にしてよ、その敬語! 私は須和君には千秋って呼んで欲しいのよ! 八木でも良いけど」
「で、ですがっ」
暖簾に腕押しとは、こういう事を言うのかもしれない。
どんなに普通にしろと言っても聞く耳持たない須和君に、いい加減うんざりする。
「あっ」
「え?」
良いこと思いついた。
ふふっ、ふふふふっ。
思わず前のめりになって、須和君の肩に両手を置く。
須和君は、後ろに少し引いて顔を赤くした。
「な、なんですか姫。その不気味な笑いは……」
「いいこと考えちゃった。あのね、須和君が私のこと"姫"って呼んだらね、罰として私が須和君にキスしちゃうの」
「えっ!?」
須和君は耳をピクピクさせ真っ赤になり、口元を手で覆った。可愛らしい耳の反応に口角が上がる。
「もちろん敬語も駄目よ♪」
ダメ押しにそう言うと、須和君は真っ赤になって冷や汗を掻いている。
「わーい、真っ赤っか♪ あたしの勝ちー。やっぱ須和君って純情よねー」
「…………」
楽しく勝利宣言する私に、須和君は絶句したような表情をしていたけど、そのうち可笑しそうにクスリと笑った。
「――という事は、私が姫という度に、キスしてもらえるという事ですね」
ピクピクと反応していた耳は、今は偉そうにピンと立っている。
!?
はい?
「な、な、なんでそこで開き直るのよ!」
思いがけない突然の反撃に、私の顔が急激に熱くなる。
何なのー?
なんで私が赤くならなきゃならないの!?
今度は私が真っ赤になって引き攣っていると、須和君が楽しそうに近づいてきた。
「残念ですが、こちらの方が地なんです」
うそーっ!!
心臓がドキドキとすごく煩い。
真っ赤になって固まる私を壁際に追い詰めて、須和君が私の手を壁に押しつけた。
うわー!
ドキドキがピークに来て、目を開けていられずにギュッと目を瞑った。
息も止めた状態で固まっていると、須和君が笑う気配がする。こっそり目を開けて須和君を見上げると、スッと私に顔を寄せた。
「千秋の方が……、純情だ」
「須和く……」
ゆっくりと近づいてきた須和君の唇が、そっと私の唇に触れる。
暖かく柔らかな感触を、私はドキドキしながら受け入れていた。
そして――、
「俺にみつ姫を守る使命を与えてくれた頭には、感謝しなくちゃいけないな」
そう言って笑ってくれた須和君は、時々私の前でだけ耳と尻尾を出して寛いでくれる。
――私がもふもふするのが好きなことを、分かってくれているから♪
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