不思議な縁に導かれました

らいち

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第二章

ふたりでお出かけ 2

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 今日私が選んだ行き先の、『ふれあいワンニャンパーク』へは、車で一時間ほどの距離だ。高科さんとの間で会話があまりなされないのはいつもの事なので、私はさほど気にもせず、車窓を流れ行く景色をぼんやりと眺めていた。

 ガサゴソと何気なくバックに手を突っ込んでみたら、丸い感触にぶちあたる。
 飴だ。

「高科さん、眠気覚ましに飴玉どうですか?」
「え? 飴?」
「はい、ソーダ味です」
「じゃあそこの信号が赤になりそうだから、その時に渡してくれるか?」
「はい」

 私は車が停車した時に効率良く渡そうと、あらかじめ小袋に切れ目を入れ、チラリと高科さんの顔を見た。

 真っ直ぐ前を見る高科さんの横顔。綺麗な形をした少し高めの鼻と、長い睫毛が印象的だ。

「白山さん?」
「えっ、あっ、はい」

 恥ずかしい。知らない内に高科さんの顔に見とれていて、信号が赤になったことに気が付かなかった。私は慌てて、高科さんに飴を差し出した。

「サンキュ」

 サッと小袋を剥いて、口の中に飴玉を放り込んだ高科さんの口許がほころぶ。

「懐かしい味だな」
「そうですね。高科さんはあんまり、お菓子の類いは口にしませんよね」
「飴とかこういった物は大人になって口にしなくなったが、白山さんが来る前は菓子類とかよく食べていたぞ」
「えっ、そうなんで……、あ……、もしかしてご飯代わりですか?」
「まあ、そんなとこだ」
「もう、本当に困った人だったんですね」
「いいじゃないか。今は君がいてくれるから、ちゃんとした飯も食えてるし」

 明るく笑いながらそう言う高科さんに、また胸がキュウンと甘く痛んだ。

 格好良いってそれだけで罪だよね。きっとボサボサ頭の時の高科さんに同じ事を言われて胸がキュウンとしたとしても、それは母性本能のような庇護欲をそそるものだったに違いない。なのに今のこれは、明らかにイケメンに言われた時に生じるドキドキ感だ。

 ……そう言えばあの宮里さんという人も、格好良く変貌した高科さんに心奪われちゃった一人だよね。

「あの、高科さん」
「んー?」
「えっと、ですね……」
「何だ?」
「あっ、そのですね……、宮里さんって人とは、あれから……?」
「宮里?」
「ほら、あの食堂で一緒だった……」
「ああ、あの女か。あいつが何?」
「いえ、何って言うわけじゃないんですけど。あれからどうしたのかなと思って……」
「別にどうもしないぞ。たまに視界に入ってくるが、それだけだ」
「そう、なんですか」
「何だ? 白山さんも、大谷さん同様もっとコミュニケーションを取れと言いたいのか?」
「あっ、違います。ちょっと気になっただけで」
「ふうん?」

 少し不思議そうな表情をした後、高科さんはすぐに流した。
 確かに変な会話だよね。あの時の高科さんの態度は、およそ褒められたものではなかったのに、でもあれから何の変わりもないと聞いて私はホッとしている。

 なんだかこれって独占欲みたい。

「…………」 
「着いたぞ」
「あっ、はい!」

 高科さんの声に慌てて前を見ると、既に車は駐車場に止まっていた。私も高科さんに倣って、シートベルトを外し車を降りた。
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