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第六章

温かい仲間

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 入院して四日が過ぎたころ、美乃梨さんと万里香さん、それに京美さんと牧村君がお見舞いに来てくれた。

「大丈夫? 桐子さん、刺されたって聞いてびっくりしたわよ」
「高遠って奴をかばって刺されたって? 本当に無茶なことしやがって」
「ホント、びっくりしたよー。でも、元気そうでよかった」
「心配かけてごめんね。今日は、お見舞いに来てくれてありがとう」

 私が笑顔でお礼を言うと、みんな一様にほっとした表情をした。

「今日は、おばさまは? いらっしゃらないようだけど」

「……ええ。今日は、休んでもらったの。……いろいろ、ゴタゴタしていることがあるし、酷くお疲れのようだったから」

 代わりに坂崎さんを来させると言って下さったのだけど、それも断った。坂崎さんには私よりも大変な、お母さまの傍にいて欲しいと思ったから。

「桐子さん、……大学には、来るわよね?」

 万里香さんが、言いにくそうに、そして心配そうな表情で私に聞いた。他のみんなも、そのことを気にかけてくれていたようで、皆が一斉に私の顔を見る。

「……父のことは?」
「うん。……知ってるよ。……かなり驚いたけど、親父さんは親父さん、桐子は桐子だろ?」

「そうよ! もし、何か言ってくる奴がいたら私が相手してあげるから、桐子さんは、何も心配なんかしないで堂々と講義を受けに来たらいいのよ」

「もちろん、私も加勢するわよ!」
「それは、私も」

 皆の口々に力強く私を励ましてくれるその言葉に、涙がこぼれそうになって慌てた。

「……ありがとう。……ごめ、……っ、……がと」

 慌てて俯いてお礼を口にした途端、我慢して止めていたはずの涙がボロボロと零れ落ちてしまった。

「ヤ、ヤダ。桐子さん、泣かないでよっ」
「泣かせたのは、お前らだろう? 責任取れよな―」
「ハア? なに言ってんのよ、バカ牧村」
「ちょっと、あなたたちったら本当に変わらないわね」

 わざと明るく振る舞ってくれるみんなが嬉しくて、余計に涙が止まらなくなってしまった。泣きながら笑う私を見て、京美さんは私を抱きしめてくれた。

「今言ったことは、みんなの総意だからね。もちろん、今日ここに来れなかった山田君も杉田君も、安住君だって同じよ」

「そうだよー。桐子さんに、大学辞めたりするなって、ちゃんと説得するんだぞって何度も念押しされたんだからね」

「…………」
「とにかく、桐子さんには私たちが付いているってことは、間違いないからね」
「……ありがと」

 言葉が詰まって、上手く話せず困ってしまう。だけどそんな私の気持ちに、みんな気が付いてくれているのだろう。私を焦らしたりせず、のんびりとした雰囲気を作ってくれていた。

「……でも、大学の方は、まだどうしたらいいのか考えてないの」
「え? どういう事? まさか、やめちゃうってこと無いわよね?」
「そうだよ、後一年だろ、頑張れよ!」

「……ありがとう。でも、こればかりは私だけじゃ決められないから。……多分、これからは今まで通りの生活は出来なくなるんじゃないかと思って」

「……え? そうなの?」

 重苦しい真実に、みんな絶句した表情だ。

「多分今、お母さまが顧問弁護士に相談している最中だと思うのだけど、私はまだ詳しいことは聞いて無くて……」
「そう、……か」

「わかった! でも、大学をやめる前に私たちにちゃんと相談して? はっきり言って私達、桐子さんよりも生活力はあると思うから、絶対何か役に立てると思うよ?」

「……美乃梨さん」
「そうよね。バイタリティはあるわよね」
「そうよ~。それに関しては、そこらの男子よりもしっかりしてるわよ~」

 おどけて話す美乃梨さんに、みんなが笑った。そんなみんなに釣られるように、私も自然と笑顔になっていた。


 その後、絶対に皆に相談せずに大学をやめたりなんかしないと約束した私に安堵して、みんなはホッとしたように帰って行った。
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