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放っておけない
真相 2
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俺は一瞬耳を疑って、佐久田を見つめた。
佐久田は何となくバツが悪そうな顔をして、里奈ちゃんの代わりにと説明をしてくれた。
「実は俺の親父、若い頃に会社を立ち上げましてね。今や結構大きな会社に成長しちゃったんですよ。で、俺長男だからそれなりに期待されていて、会社を継ぐことになってんすよ。もちろん俺もそのつもりで勉強もしてきたんですけどね」
佐久田はそこで少しふうっと息を吐き、頭を掻いた。
「で、こないだ父に見合いして来いって言われて」
「え!?」
俺はつい、素っ頓狂な声を出してしまった。
佐久田はちょっと驚いて俺を見たが、ちょっぴり笑って先を続ける。
「もちろん断りましたよ。俺には付き合っている人が居るからって。でも、そのこわと話したら、里奈が別れた方が良いって」
そう言って、佐久田は責めるような目で里奈ちゃんを見た。
ああ、なるほど。大体どういう事なのか見えてきた。
きっと優しい里奈ちゃんは、佐久田の事を思って身を引こうとしていたわけだ。彼が期待されている事を知っていて。
しかも佐久田自身も後を継ぐことに前向きだという事を知っていたから。
「だって! 大切な取引先の銀行のお嬢さんなんでしょ? 断ったらまずいじゃない…。弘樹だってあんなに頑張って、会社継ぐことにも前向きだったの知ってるし…。私なんて、お荷物…」
「違うって何度も言ってるだろ! 俺には里奈がいないんじゃ意味が無いんだよ! 会社を継ぐことだって、里奈を認めてもらって頑張るから」
「だって…」
「里奈も俺と一緒に戦ってくれよ。一生懸命戦って、それでダメなら俺は家を出るから」
「だめよ!」
「ダメじゃない! あの会社は別に俺じゃなくても良いんだよ。俺だって、今まで勉強してきたこともあの会社じゃなくてもちゃんと役に立つんだから」
「弘樹…」
「それとも、大企業の跡取り息子じゃない俺じゃ興味ない?」
「そんな事ない!」
「だったら、受け入れてくれよ…頼むから」
「弘樹…」
佐久田は、里奈ちゃんを抱き寄せて二人して泣いている。
映画のワンシーンでも見ているような気分だ。
俺はボーッとそこに突っ立って、ただただ黙って二人を見ていた。
どこからどう見ても、俺はただの傍観者。
ここに居る俺は凄く滑稽だ。何やってんだろ俺。
「お邪魔だろうから消えるわ。頑張ってな」
そう声をかけると二人とも俺の存在をようやく思い出したようで、慌てて体を離した。
笑ってしまう。
「迷惑かけて、すみませんでした!」
「有難うございました」
二人とも、俺に向かって深々と頭を下げていた。
俺は、ふつふつとこみ上げてくる寂しさを誤魔化して、笑って「じゃあな」と声をかけて彼らに背を向けた。
佐久田は何となくバツが悪そうな顔をして、里奈ちゃんの代わりにと説明をしてくれた。
「実は俺の親父、若い頃に会社を立ち上げましてね。今や結構大きな会社に成長しちゃったんですよ。で、俺長男だからそれなりに期待されていて、会社を継ぐことになってんすよ。もちろん俺もそのつもりで勉強もしてきたんですけどね」
佐久田はそこで少しふうっと息を吐き、頭を掻いた。
「で、こないだ父に見合いして来いって言われて」
「え!?」
俺はつい、素っ頓狂な声を出してしまった。
佐久田はちょっと驚いて俺を見たが、ちょっぴり笑って先を続ける。
「もちろん断りましたよ。俺には付き合っている人が居るからって。でも、そのこわと話したら、里奈が別れた方が良いって」
そう言って、佐久田は責めるような目で里奈ちゃんを見た。
ああ、なるほど。大体どういう事なのか見えてきた。
きっと優しい里奈ちゃんは、佐久田の事を思って身を引こうとしていたわけだ。彼が期待されている事を知っていて。
しかも佐久田自身も後を継ぐことに前向きだという事を知っていたから。
「だって! 大切な取引先の銀行のお嬢さんなんでしょ? 断ったらまずいじゃない…。弘樹だってあんなに頑張って、会社継ぐことにも前向きだったの知ってるし…。私なんて、お荷物…」
「違うって何度も言ってるだろ! 俺には里奈がいないんじゃ意味が無いんだよ! 会社を継ぐことだって、里奈を認めてもらって頑張るから」
「だって…」
「里奈も俺と一緒に戦ってくれよ。一生懸命戦って、それでダメなら俺は家を出るから」
「だめよ!」
「ダメじゃない! あの会社は別に俺じゃなくても良いんだよ。俺だって、今まで勉強してきたこともあの会社じゃなくてもちゃんと役に立つんだから」
「弘樹…」
「それとも、大企業の跡取り息子じゃない俺じゃ興味ない?」
「そんな事ない!」
「だったら、受け入れてくれよ…頼むから」
「弘樹…」
佐久田は、里奈ちゃんを抱き寄せて二人して泣いている。
映画のワンシーンでも見ているような気分だ。
俺はボーッとそこに突っ立って、ただただ黙って二人を見ていた。
どこからどう見ても、俺はただの傍観者。
ここに居る俺は凄く滑稽だ。何やってんだろ俺。
「お邪魔だろうから消えるわ。頑張ってな」
そう声をかけると二人とも俺の存在をようやく思い出したようで、慌てて体を離した。
笑ってしまう。
「迷惑かけて、すみませんでした!」
「有難うございました」
二人とも、俺に向かって深々と頭を下げていた。
俺は、ふつふつとこみ上げてくる寂しさを誤魔化して、笑って「じゃあな」と声をかけて彼らに背を向けた。
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