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放っておけない
里奈ちゃんとのデート 3
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想像はしていたけど女子ばっかりだ。店の奥の方に一組のカップルが居るだけのようで、この店の客ではどうやら男は二人だけしかいないようだ。
まあ、いいか。甘いもの嫌いじゃないし。
「どれにします?」
楽しそうにショーケースを覘きながら、里菜ちゃんが俺に尋ねた。
「うーん、悩むなあ。お薦めどれ?」
「そうですねぇ。たくさんあって悩むけど、フレジェも良いし、ミルフィーユも美味しいですよ。あ、ここのモンブランはクリームたっぷりで美味しいです。あ~、どうしよ。私はモンブランにしようかなー、ラズベリータルトも良いし…」
甘いものに目がないようだな。なんかホント可愛いや。
「じゃあ、俺はラズベリータルトにアイスコーヒーで」
「え! もう決めちゃったんですか? えーと、じゃあ私はモンブランにアイスコーヒー」
「かしこまりました。後ほどお持ちしますので、席でお待ちください」
俺は空いている席へと里奈ちゃんをエスコートする。何だか本当にデートみたいだ。
こんな可愛い子を彼女に出来たら楽しいだろうなあ。
だけどそれでも浮ついた気持ちだけではいられない事も、俺はうすうす気が付いてはいた。里奈ちゃんは楽しそうに笑って話しかけてはくれるのだけど、時々何かを考えているように沈んだ表情をしていたから。
きっと例のストーカーの事で嫌な事があったに違いないと、俺は考えていた。
「…大丈夫だった?」
俺がそっと尋ねると、里奈ちゃんはハッとした顔になる。そして何故か俺から目線をそらし、気まずそうだ。
どうしたんだろうと里奈ちゃんを見つめていたら、目線を下にしたままぽつりと言葉を漏らした。
「迷惑かけてごめんなさい」
「迷惑だなんて、そんな事ないから!」
俺がイヤイヤ巻き込まれたとでも思っていたんだろうか。里奈ちゃんは、本当に心苦しそうだった。
安心させたくて否定したのに、里奈ちゃんは余計に恐縮しているようにも見える。
「お待たせいたしました」
ウエイトレスが、俺たちの注文したケーキとドリンクを持ってきた。
「食べよっか」
「はい」
固まりかけた雰囲気を変えたくて、俺はオーバーに大きく口を開けてぱくりと一口。
「うわっ、うっま!」
本当に美味しい。ラズベリーの甘酸っぱさが絶妙に口の中に広がっていく。これは本当に演技ではなく自然と顔がほころんだ。
「でしょ? でしょ? ここは、本当に外れが無いんですよー」
そう言って嬉しそうにマロンケーキにフォークを突き刺し、ぱくりと口に放り込み幸せそうな顔をしている。
俺は、その顔を見てホッとした。やっぱり里奈ちゃんは笑った顔の方が良い。
何だか嬉しくて里奈ちゃんの顔を見ていたら、パチッと目が合った。
「あの…?」
「あ、うん。笑った顔の方が良いなと思って」
正直な気持ちをそのまま伝えたのに、里奈ちゃんは一瞬あきらかに動揺したように固まって、それからみるみる涙を溢れさせていく。
「えっ? ど、どうしたの?」
「ご、ごめんなさ…っ、な…でも、いの…」
震える声でそう言いながら、里奈ちゃんはハンカチを手に握りしめて顔を押さえた。
肩を震わせながら必死で涙を堪えようとしているその仕草は、とてもなんでも無い状態ではなさそうだ。だけど明らかに俺には話す気は無さそうで、震える声で何度も、何でも無いと言い続けた。
結局俺は里奈ちゃんから何も聞けずに、最寄駅まで送ってそのまま帰路についた。
まあ、いいか。甘いもの嫌いじゃないし。
「どれにします?」
楽しそうにショーケースを覘きながら、里菜ちゃんが俺に尋ねた。
「うーん、悩むなあ。お薦めどれ?」
「そうですねぇ。たくさんあって悩むけど、フレジェも良いし、ミルフィーユも美味しいですよ。あ、ここのモンブランはクリームたっぷりで美味しいです。あ~、どうしよ。私はモンブランにしようかなー、ラズベリータルトも良いし…」
甘いものに目がないようだな。なんかホント可愛いや。
「じゃあ、俺はラズベリータルトにアイスコーヒーで」
「え! もう決めちゃったんですか? えーと、じゃあ私はモンブランにアイスコーヒー」
「かしこまりました。後ほどお持ちしますので、席でお待ちください」
俺は空いている席へと里奈ちゃんをエスコートする。何だか本当にデートみたいだ。
こんな可愛い子を彼女に出来たら楽しいだろうなあ。
だけどそれでも浮ついた気持ちだけではいられない事も、俺はうすうす気が付いてはいた。里奈ちゃんは楽しそうに笑って話しかけてはくれるのだけど、時々何かを考えているように沈んだ表情をしていたから。
きっと例のストーカーの事で嫌な事があったに違いないと、俺は考えていた。
「…大丈夫だった?」
俺がそっと尋ねると、里奈ちゃんはハッとした顔になる。そして何故か俺から目線をそらし、気まずそうだ。
どうしたんだろうと里奈ちゃんを見つめていたら、目線を下にしたままぽつりと言葉を漏らした。
「迷惑かけてごめんなさい」
「迷惑だなんて、そんな事ないから!」
俺がイヤイヤ巻き込まれたとでも思っていたんだろうか。里奈ちゃんは、本当に心苦しそうだった。
安心させたくて否定したのに、里奈ちゃんは余計に恐縮しているようにも見える。
「お待たせいたしました」
ウエイトレスが、俺たちの注文したケーキとドリンクを持ってきた。
「食べよっか」
「はい」
固まりかけた雰囲気を変えたくて、俺はオーバーに大きく口を開けてぱくりと一口。
「うわっ、うっま!」
本当に美味しい。ラズベリーの甘酸っぱさが絶妙に口の中に広がっていく。これは本当に演技ではなく自然と顔がほころんだ。
「でしょ? でしょ? ここは、本当に外れが無いんですよー」
そう言って嬉しそうにマロンケーキにフォークを突き刺し、ぱくりと口に放り込み幸せそうな顔をしている。
俺は、その顔を見てホッとした。やっぱり里奈ちゃんは笑った顔の方が良い。
何だか嬉しくて里奈ちゃんの顔を見ていたら、パチッと目が合った。
「あの…?」
「あ、うん。笑った顔の方が良いなと思って」
正直な気持ちをそのまま伝えたのに、里奈ちゃんは一瞬あきらかに動揺したように固まって、それからみるみる涙を溢れさせていく。
「えっ? ど、どうしたの?」
「ご、ごめんなさ…っ、な…でも、いの…」
震える声でそう言いながら、里奈ちゃんはハンカチを手に握りしめて顔を押さえた。
肩を震わせながら必死で涙を堪えようとしているその仕草は、とてもなんでも無い状態ではなさそうだ。だけど明らかに俺には話す気は無さそうで、震える声で何度も、何でも無いと言い続けた。
結局俺は里奈ちゃんから何も聞けずに、最寄駅まで送ってそのまま帰路についた。
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