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放っておけない
里奈ちゃんとのデート
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土曜日、天気は快晴でまさしくデート日和だ。
昨日の芙蓉の発言が気にならないわけでは無かったが、俺はうだうだと考え込むよりもとっとと行動を起こすタイプだ。
何かあったらその時に、一生懸命考えればいいだけの話だ。そもそも何かって何だって話だ。
「じゃあ、行ってくる」
そう芙蓉に声をかけると、「行ってらっしゃい」と普通にいつも通りの言葉が返って来た。
昨日のセリフが未だに気になっていた俺だったけど、案外たいした意味は無かったのかもしれない。
俺は玄関の扉を開けて、勢いよく飛び出した。
里奈ちゃんとは美術館近くの最寄駅で待ち合わせをしていた。女の子を待たせるのはマナーとしても宜しくないだろうと、俺は少し足早に歩いた。
十分前に到着。うん、良い時間だ。
里奈ちゃんは、まだ来ていないようだ。
通りが良く見える位置で待っていようと移動しかけた時、背後から声をかけられた。
「紫温さん」
振りかえるとレースアップのプルオーバーに、ガウチョパンツとカジュアルな格好をした里奈ちゃんが立っていた。
なんか、スッゲ可愛い。シンプルな格好が、里奈ちゃんの初々しさを引き立てている!
俺は、しばらくぼーっと里奈ちゃんを見つめていた。
「あ、あの?」
「あ、や、まだ来てないと思ったからビックリしちゃって!」
「紫温さんも、早いですよ?」
里奈ちゃんがくすくすと笑う。
ああ、可愛いなホント。これじゃあストーカーの一人や二人居ても、不思議じゃないわけだ。
里奈ちゃんさえ迷惑じゃなかったら、俺がしっかり守ってあげるんだけど。
でもそんな事、言葉に出来るはずもない。
まだ知り合ったばかりなんだ。相談に乗ってあげる、今はその位置で十分だ。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
気持ちを切り替えて里奈ちゃんに声をかけたが、里奈ちゃんはすぐには反応しなかった。
軽く握った右手を唇の近くに置いたまま、俯いて何かを考えている。
里奈ちゃんに声をかけようと思ったその時、スッと、彼女の右手が俺の左腕を取った。
「え?」
途端にうるさく鳴り始める心臓。里奈ちゃんの顔を見ると、恥ずかしそうに頬を染めてこちらを見ていた。
グラグラと沸騰しそうな気持ちを強引に脇に置いて、俺はにこやかに「行こうか」と、里奈ちゃんを促した。
昨日の芙蓉の発言が気にならないわけでは無かったが、俺はうだうだと考え込むよりもとっとと行動を起こすタイプだ。
何かあったらその時に、一生懸命考えればいいだけの話だ。そもそも何かって何だって話だ。
「じゃあ、行ってくる」
そう芙蓉に声をかけると、「行ってらっしゃい」と普通にいつも通りの言葉が返って来た。
昨日のセリフが未だに気になっていた俺だったけど、案外たいした意味は無かったのかもしれない。
俺は玄関の扉を開けて、勢いよく飛び出した。
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十分前に到着。うん、良い時間だ。
里奈ちゃんは、まだ来ていないようだ。
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「紫温さん」
振りかえるとレースアップのプルオーバーに、ガウチョパンツとカジュアルな格好をした里奈ちゃんが立っていた。
なんか、スッゲ可愛い。シンプルな格好が、里奈ちゃんの初々しさを引き立てている!
俺は、しばらくぼーっと里奈ちゃんを見つめていた。
「あ、あの?」
「あ、や、まだ来てないと思ったからビックリしちゃって!」
「紫温さんも、早いですよ?」
里奈ちゃんがくすくすと笑う。
ああ、可愛いなホント。これじゃあストーカーの一人や二人居ても、不思議じゃないわけだ。
里奈ちゃんさえ迷惑じゃなかったら、俺がしっかり守ってあげるんだけど。
でもそんな事、言葉に出来るはずもない。
まだ知り合ったばかりなんだ。相談に乗ってあげる、今はその位置で十分だ。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
気持ちを切り替えて里奈ちゃんに声をかけたが、里奈ちゃんはすぐには反応しなかった。
軽く握った右手を唇の近くに置いたまま、俯いて何かを考えている。
里奈ちゃんに声をかけようと思ったその時、スッと、彼女の右手が俺の左腕を取った。
「え?」
途端にうるさく鳴り始める心臓。里奈ちゃんの顔を見ると、恥ずかしそうに頬を染めてこちらを見ていた。
グラグラと沸騰しそうな気持ちを強引に脇に置いて、俺はにこやかに「行こうか」と、里奈ちゃんを促した。
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