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天使と悪魔
やっぱりヤな奴!
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マンションに帰って部屋に入った俺は、意外な光景に目を点にする。リビングには、無表情でまるで人形のように正座している、早野さんの姿があった。
「え!? 何あれ」
「あいつに、操られてたんだよ」
あいつ…?って、まさかユウマ?
びっくりして芙蓉を見上げると、言外にそうだと頷いた。
「俺をこの子に靡かせて、お前を邪魔に思わせたかったんだろ」
そして、芙蓉は早野さんをじっと見た。
『出ていけ』
先ほどユウマにしたように、あの冷たい声で命令した。すると早野さんは黙って立ち上がり、玄関に向かって歩いていく。
「えっ? えっ?」
動揺する俺の目の前を通り過ぎ、早野さんは玄関を出て行ってしまった。完全に芙蓉に動かされている。しかも自分の意志がない。
「だ、大丈夫なのか、あれ」
さすがに心配になって芙蓉に聞くと、表情も無く俺を見る。
「すぐ正気に戻る」
「ええ~!? 何、ここどこ! 何で私、こんなとこいるの~!?」
玄関の外から、パニックになり大声で叫ぶ早野さんの声が聞こえてきた。
「そう言う事だ」
想像を超えるあまりの出来事に、俺はぽかんとするしかなかった。今日は芙蓉に驚かされてばかりいる。
何だかなーと、脱力していると、隣の芙蓉が俺の顔をじっと見つめていた。
芙蓉には助けてもらってばかりだ。ドジでお荷物な俺が対等になりたいだなんて、恥ずかしすぎてとても口になんて出来やしない。
「よ…、良かったのかよ? あの子…可愛かっただろ。芙蓉だって満更でも無かったんじゃないのか?」
「はあ?」
芙蓉は心底呆れたような声を出した。
そして俺の額を親指でグイッと押し、顔を上げさせ真正面から俺を見た。
「お前以外に、俺が気を向けるわけないだろう」
え!?
―――お前には渡さない
あの時、ユウマに告げた言葉を思い出してしまった。
「ふ、芙蓉…」
これって、もしかして少しは自惚れても良いのか? 芙蓉も俺のこと友達だって、思ってくれてるって…。
期待に胸を膨らませて芙蓉を見ていると、芙蓉がまた、いつもの思い出し笑いをしやがった。
「お前、ほんっとドジだからな。見張ってなきゃヤバいだろ」
前言撤回!! やっぱこいつはヤな奴だー!
「え!? 何あれ」
「あいつに、操られてたんだよ」
あいつ…?って、まさかユウマ?
びっくりして芙蓉を見上げると、言外にそうだと頷いた。
「俺をこの子に靡かせて、お前を邪魔に思わせたかったんだろ」
そして、芙蓉は早野さんをじっと見た。
『出ていけ』
先ほどユウマにしたように、あの冷たい声で命令した。すると早野さんは黙って立ち上がり、玄関に向かって歩いていく。
「えっ? えっ?」
動揺する俺の目の前を通り過ぎ、早野さんは玄関を出て行ってしまった。完全に芙蓉に動かされている。しかも自分の意志がない。
「だ、大丈夫なのか、あれ」
さすがに心配になって芙蓉に聞くと、表情も無く俺を見る。
「すぐ正気に戻る」
「ええ~!? 何、ここどこ! 何で私、こんなとこいるの~!?」
玄関の外から、パニックになり大声で叫ぶ早野さんの声が聞こえてきた。
「そう言う事だ」
想像を超えるあまりの出来事に、俺はぽかんとするしかなかった。今日は芙蓉に驚かされてばかりいる。
何だかなーと、脱力していると、隣の芙蓉が俺の顔をじっと見つめていた。
芙蓉には助けてもらってばかりだ。ドジでお荷物な俺が対等になりたいだなんて、恥ずかしすぎてとても口になんて出来やしない。
「よ…、良かったのかよ? あの子…可愛かっただろ。芙蓉だって満更でも無かったんじゃないのか?」
「はあ?」
芙蓉は心底呆れたような声を出した。
そして俺の額を親指でグイッと押し、顔を上げさせ真正面から俺を見た。
「お前以外に、俺が気を向けるわけないだろう」
え!?
―――お前には渡さない
あの時、ユウマに告げた言葉を思い出してしまった。
「ふ、芙蓉…」
これって、もしかして少しは自惚れても良いのか? 芙蓉も俺のこと友達だって、思ってくれてるって…。
期待に胸を膨らませて芙蓉を見ていると、芙蓉がまた、いつもの思い出し笑いをしやがった。
「お前、ほんっとドジだからな。見張ってなきゃヤバいだろ」
前言撤回!! やっぱこいつはヤな奴だー!
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