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天使と悪魔

魔界からのストーカー

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―――ツキン

まるで射抜くような鋭い視線に、ギョッとして俺は振り返った。身に覚えのある気配に、まるで全身が心臓になってしまったかのように、ドクドクと体中から心音が鳴り響く。

だが、振り返ったそこには誰も居ず、気配も消えてなくなっている。

…気のせいか?

だけど、あの思い出したくもない嫌な気配は、どう考えてもあいつだ。
全身から嫌な汗が流れて落ちる。俺は恐怖のあまり身を強張らせていた。

突然、グイッと右腕を強い力で引っ張られた。振り返ると芙蓉が、いつもの無表情に近い顔で俺の後ろに立っていた。

「帰るぞ」

抑揚のない声で言われて、ホッとする。

「う、うん」

…? あれ? なんで芙蓉の顔を見ただけでホッとしてるんだ俺。

思わず芙蓉の顔をじっと見る。表情のない冷めた顔。

ああ、そうか。この冷徹な顔を見たから、きっと俺も平常心になれたのかもしれない。

本当にそう言う理由なのかは分からないが、面倒臭いのでそれで納得する事にしておいた。


俺は行き場のない所を芙蓉に拾われて、芙蓉のマンションに同居(居候ともいう)している。
その部屋のドアの前に立った芙蓉が、呆れたようにため息を吐いて俺を見た。

「お前、どんだけ気に入られてるんだよ」
「し、知らねえよ」

明らかにこの部屋の中から、先ほど感じた嫌な気配が感じとれる。おそらくあいつが先回りして、この中に入っているのだろう。
芙蓉は、ドアに手を伸ばした。

「しょうがないな」
「あっ」

動揺した俺は、咄嗟に芙蓉のシャツを握りしめてしまった。
芙蓉が少し驚いた顔をして俺を見る。俺は咄嗟の自分の行為に恥ずかしくなり、慌てて手を離した。

「ごっ、ごめ…」
「いい、そのくらい。その方が安心できるんだろ。そのままにしてろ」

普段の芙蓉からは想像できない優しい言葉にびっくりする。らしくない芙蓉や自分の行為に恥ずかしさは倍増したけど、それでも本当にありがたかったので、俺は素直に聞き入れた。

「…あり…がと」

言った自分でもびっくりするくらいの小さくか細い声だった。
おかげで、余計に顔の温度が上昇する。だけど俺は、その恥ずかしさを脇に除けて芙蓉のシャツをギュッと握りしめた。

玄関を開けて中に入ると、やはり案の定、ユウマが部屋で待ち構えていた。 
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