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第一章

らしくなさ過ぎだよ、私

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 お昼休み、私たちがお弁当を持ってくる時は、秋永君や椎名君が加わるのがもう普通なことになっていた。

「……秋永君たち、なにのんびりしてるんだろ?」

 雅乃はいつものように私の席の隣に来たものの、秋永君たちが未だ自分たちの席でぐずぐずしているのが気になるようだ。

「秋永君、椎名君もー、おそーい。待ってるんだけど」

 ぶんぶんと大きく手を振る雅乃に、ハッとした表情で秋永君が席を立った。その隣では椎名君が、ポンポンと彼の背中を叩いて「売店行ってくる!」と私たちに告げて廊下へと出て行った。
 秋永君はちょっぴりバツの悪そうな表情をしながらも、こちらへと歩いてきた。

「あれ? 秋永君は売店行かなくていいの?」
「あ、うん。……未花ちゃんにお弁当作ってもらったから」

 そう言って、私が手渡しておいたお弁当を机の上に置く。雅乃は、目を見開いて私を見た。

「あ、お礼だってば。……秋永君には、ホント感謝してるから」
「……本当に? 今日からも送るって話、ちゃんと有効?」
「え? うん」

 なんでそんなこと聞くんだろ? 朝ちゃんと話したのに。

「ならいいんだけど。……もしかしたら、状況変わって躊躇してるのかなって思っちゃたから」
「ああー、それ! 大丈夫、大丈夫。意識はしてても躊躇はしてないから、ね? 未花!」
「ちょっと、雅乃! 何よそれっ」

 もう! 意識してるって何よ。間違ってないけど、そんなハッキリ秋永君に言わなくたっていいじゃない!

 あまりにも恥ずかしくて、顔に熱がカーッと集まる。そんな私の顔を見た秋永君は少し目を見開いて、でもすぐにホッとしたようにその表情を崩した。
 そして秋永君は私と目が合うと、にこりとほほ笑む。そのとたんに、心臓がキュッてなった。

 ……どうしよう。雅乃が言っていたのは本当だ。意識しまくりだよ私……。

 そんなことに気が付いたら、なんだかとても恥ずかしくなってしまって、まともに目が合わせられなくなってしまった。らしくもなく目を泳がせて、自分の弁当箱に視線を移す。

 ……ああ、もう本当に何なの私。らしくないどころか、秋永君に変な風に思われちゃうよ。さっき躊躇してないかって心配されたばっかなのに……!

「椎名君遅いねー」

 一人でわたわたする私の隣で、雅乃がのんびりとした感じで秋永君に声をかけた。はああ~と、肩の力が抜けるのを感じる。

「うん。でもさっきダッシュで走ってったから、すぐ戻ってくるんじゃないかな」

「そっか。そういえば秋永君、未花をストーカーから守ってくれたんだってね。ホントありがとうね。さすがボディガードだよ」

「いや、まあ。守るって約束してたし、当然のことだから」
「お待たせー。何が当然だって?」

 椎名君が売店から戻ってきた。袋を机に置きながら、秋永君を見る。

「ん? 話したろ? 未花ちゃんのストーカー、今朝見つけたって」

「ああ、アレ。よかったね糸魚川さん。こいつやる時はやる奴だから、ずっとそばに置いとくといいよ。その方が安心だ。な?」

「おう」

 椎名君の言葉にすぐさま同意した秋永君が、二人そろって私を見る。それには私も素直にこくんと頷いた。
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