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第一章
現れた男 2
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目の前に立ちふさがるその男の表情が気持ち悪くて、不覚にもゾッとした。そんな私にお構いなく、男は言葉を続ける。
「未花ちゃんを本当に理解して守ってやれるのは俺だけだから。陰ながら守ってあげようと思っていたのに、急に追いかけられて気持ちの準備が出来てなくて。つい逃げちゃったけど、失望させちゃったかい?」
背筋にゾゾゾと悪寒が走った。
……失望って、何? おかしいよ、この人。何言ってんの? それに未花ちゃんって、何!? なんで私の名前まで知ってんの?
もしかしなくても、これはかなりヤバい人だ。本当に正真正銘のストーカーだったんだ……!
私は男から距離を取ろうと、少しずつ後ずさった。そしてなるべく刺激しないようにと、私なりに言葉を選びながら返事をした。
「……ボディガードなら間に合ってますから気にしないでください。私のことちゃんと守ってくれてますし……、!?」
「秋永とかいうやつのこと言ってんのかよ!」
刺激しないようにと気を使って丁寧に話をしていたのに、男は急に激高して私に足早に近づき掴みかかろうとする。それには私もいつものように反応して、反射的に拳を繰り出した。
どうやら久しぶりの私の拳を、男はまともに食らったようだ。ガツッという鈍い音と共に、男が地面に転がっている。
今だ、逃げなきゃ!
走り出そうと思い、何かが足りないことに気が付いた。ランチバッグだ。慌てて周りを見渡すと、あろうことか倒れた男のすぐそばに落ちている。
小走りに近寄ってランチバッグを掴み、逃げようとしたところでグワシッと足首を掴まれた。いきなり引っ張られてバランスを崩し、そのままバタンと転ばされてしまった。
なんとか腕で受け身をとれたので顔面を地面に叩きつけられずには済んだけど、その代わり腕をもろに打ってしまった。
「……った~」
「未花ちゃんは何もわかってない!」
訳の分からないことを言いながら、蹲って痛がっている私に圧し掛かってきた。気持ち悪くて必死で払いのけようとしたけど、打たれ強いのか男はびくともしない。
「離してっ! ヤダってば!」
「俺が守ってやるって言ってるのが分からないのかよ! 天使なんだよ、未花ちゃんは! だからみんなが狙ってるんだ! あいつだってそうだ!!」
「離して! 離せってば!!」
気持ち悪いほどに意思の疎通が出来ないうえに、こっちの力が通用しない。圧し掛かられて、気持ち悪くて泣きそうだ。
必死でジタバタ暴れたせいで、自分の肘や膝が硬いアスファルトに当たり痛かった。
「未花ちゃんを本当に理解して守ってやれるのは俺だけだから。陰ながら守ってあげようと思っていたのに、急に追いかけられて気持ちの準備が出来てなくて。つい逃げちゃったけど、失望させちゃったかい?」
背筋にゾゾゾと悪寒が走った。
……失望って、何? おかしいよ、この人。何言ってんの? それに未花ちゃんって、何!? なんで私の名前まで知ってんの?
もしかしなくても、これはかなりヤバい人だ。本当に正真正銘のストーカーだったんだ……!
私は男から距離を取ろうと、少しずつ後ずさった。そしてなるべく刺激しないようにと、私なりに言葉を選びながら返事をした。
「……ボディガードなら間に合ってますから気にしないでください。私のことちゃんと守ってくれてますし……、!?」
「秋永とかいうやつのこと言ってんのかよ!」
刺激しないようにと気を使って丁寧に話をしていたのに、男は急に激高して私に足早に近づき掴みかかろうとする。それには私もいつものように反応して、反射的に拳を繰り出した。
どうやら久しぶりの私の拳を、男はまともに食らったようだ。ガツッという鈍い音と共に、男が地面に転がっている。
今だ、逃げなきゃ!
走り出そうと思い、何かが足りないことに気が付いた。ランチバッグだ。慌てて周りを見渡すと、あろうことか倒れた男のすぐそばに落ちている。
小走りに近寄ってランチバッグを掴み、逃げようとしたところでグワシッと足首を掴まれた。いきなり引っ張られてバランスを崩し、そのままバタンと転ばされてしまった。
なんとか腕で受け身をとれたので顔面を地面に叩きつけられずには済んだけど、その代わり腕をもろに打ってしまった。
「……った~」
「未花ちゃんは何もわかってない!」
訳の分からないことを言いながら、蹲って痛がっている私に圧し掛かってきた。気持ち悪くて必死で払いのけようとしたけど、打たれ強いのか男はびくともしない。
「離してっ! ヤダってば!」
「俺が守ってやるって言ってるのが分からないのかよ! 天使なんだよ、未花ちゃんは! だからみんなが狙ってるんだ! あいつだってそうだ!!」
「離して! 離せってば!!」
気持ち悪いほどに意思の疎通が出来ないうえに、こっちの力が通用しない。圧し掛かられて、気持ち悪くて泣きそうだ。
必死でジタバタ暴れたせいで、自分の肘や膝が硬いアスファルトに当たり痛かった。
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