上 下
4 / 27
第一章

体育の授業

しおりを挟む
「それでは、二人一組になってオーバーハンドパスの練習をしてください。先ほど言ったコツを、忘れないようにしくださいね」

 今は体育の授業中。先生の一言で、みんな動きだした。

 こういうとき、友達と一緒に組むのが楽なのだけど、私と佳奈では差があり過ぎるんだよな。将来のバレーボール部のエースと、体育の授業ですらやる気のない私とでは。

「楓!」
「佳奈、私と組んで」
「あっ、えっ?」
 私を誘いに来てくれた佳奈を、吉田よしだゆかりが誘いにきた。
「あ~」
 吉田さんは気まずそうに、チラリと私に視線をよこす。

「あっ、いいよ吉田さん。私じゃ佳奈に釣り合わないから、下手すぎて」
「ちょっと、楓!」
「あ、ごめん。本当のこと言っただけで、悪い意味じゃないから」
 へへへと笑ってごまかして、手を振ってその場を離れた。

 たぶん、まだほかに余っている人はいるはずだ。
 きょろっと辺りを見回していたら、周藤美穂すとうみほと目が合った。彼女は本当に運動が苦手なようで、いつも体育の時間はびくびくしている感じがある。

「美穂さん! よかったら組んでくれる?」
「あっ、うん。よかったあ。誰もいなかったらどうしようかと思った」
「あはは、分かる分かる」
「わたし本当に下手くそだから、中山さんの足引っ張ったらごめんね」
「それは、こっちこそだよ」
「……それにしても、今日は嫌だな」
「えっ?」
「だってさ……」

 美穂さんは、チラリと視線を右に向けた。私たちから少し離れたところで、男子がサッカーをしている。

「かっこ悪い奴がいるって、男子にまで思われそう。いちいち見るとは思わないけどさ……」
「ああ、そういう……」

 本気で運動神経の悪い人は、なるべく人に見られたくないものなのだろう。美穂さんを騙そうと思っているわけじゃないけど、なんだか変な気分になった。

「まあ、離れているから分からないということにしておこうよ。私もそう思うことにするから」
「そうだね」
 美穂さんが笑顔になったのでホッとして、適当に空いている場所に移動して練習を始めた。
  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...