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第一章
体育の授業
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「それでは、二人一組になってオーバーハンドパスの練習をしてください。先ほど言ったコツを、忘れないようにしくださいね」
今は体育の授業中。先生の一言で、みんな動きだした。
こういうとき、友達と一緒に組むのが楽なのだけど、私と佳奈では差があり過ぎるんだよな。将来のバレーボール部のエースと、体育の授業ですらやる気のない私とでは。
「楓!」
「佳奈、私と組んで」
「あっ、えっ?」
私を誘いに来てくれた佳奈を、吉田ゆかりが誘いにきた。
「あ~」
吉田さんは気まずそうに、チラリと私に視線をよこす。
「あっ、いいよ吉田さん。私じゃ佳奈に釣り合わないから、下手すぎて」
「ちょっと、楓!」
「あ、ごめん。本当のこと言っただけで、悪い意味じゃないから」
へへへと笑ってごまかして、手を振ってその場を離れた。
たぶん、まだほかに余っている人はいるはずだ。
きょろっと辺りを見回していたら、周藤美穂と目が合った。彼女は本当に運動が苦手なようで、いつも体育の時間はびくびくしている感じがある。
「美穂さん! よかったら組んでくれる?」
「あっ、うん。よかったあ。誰もいなかったらどうしようかと思った」
「あはは、分かる分かる」
「わたし本当に下手くそだから、中山さんの足引っ張ったらごめんね」
「それは、こっちこそだよ」
「……それにしても、今日は嫌だな」
「えっ?」
「だってさ……」
美穂さんは、チラリと視線を右に向けた。私たちから少し離れたところで、男子がサッカーをしている。
「かっこ悪い奴がいるって、男子にまで思われそう。いちいち見るとは思わないけどさ……」
「ああ、そういう……」
本気で運動神経の悪い人は、なるべく人に見られたくないものなのだろう。美穂さんを騙そうと思っているわけじゃないけど、なんだか変な気分になった。
「まあ、離れているから分からないということにしておこうよ。私もそう思うことにするから」
「そうだね」
美穂さんが笑顔になったのでホッとして、適当に空いている場所に移動して練習を始めた。
今は体育の授業中。先生の一言で、みんな動きだした。
こういうとき、友達と一緒に組むのが楽なのだけど、私と佳奈では差があり過ぎるんだよな。将来のバレーボール部のエースと、体育の授業ですらやる気のない私とでは。
「楓!」
「佳奈、私と組んで」
「あっ、えっ?」
私を誘いに来てくれた佳奈を、吉田ゆかりが誘いにきた。
「あ~」
吉田さんは気まずそうに、チラリと私に視線をよこす。
「あっ、いいよ吉田さん。私じゃ佳奈に釣り合わないから、下手すぎて」
「ちょっと、楓!」
「あ、ごめん。本当のこと言っただけで、悪い意味じゃないから」
へへへと笑ってごまかして、手を振ってその場を離れた。
たぶん、まだほかに余っている人はいるはずだ。
きょろっと辺りを見回していたら、周藤美穂と目が合った。彼女は本当に運動が苦手なようで、いつも体育の時間はびくびくしている感じがある。
「美穂さん! よかったら組んでくれる?」
「あっ、うん。よかったあ。誰もいなかったらどうしようかと思った」
「あはは、分かる分かる」
「わたし本当に下手くそだから、中山さんの足引っ張ったらごめんね」
「それは、こっちこそだよ」
「……それにしても、今日は嫌だな」
「えっ?」
「だってさ……」
美穂さんは、チラリと視線を右に向けた。私たちから少し離れたところで、男子がサッカーをしている。
「かっこ悪い奴がいるって、男子にまで思われそう。いちいち見るとは思わないけどさ……」
「ああ、そういう……」
本気で運動神経の悪い人は、なるべく人に見られたくないものなのだろう。美穂さんを騙そうと思っているわけじゃないけど、なんだか変な気分になった。
「まあ、離れているから分からないということにしておこうよ。私もそう思うことにするから」
「そうだね」
美穂さんが笑顔になったのでホッとして、適当に空いている場所に移動して練習を始めた。
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