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第四章

衣装合わせをしよう

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 「加代子最近、機嫌いい」
 神を家に呼んだ時のことを思い出しながらニヤニヤしていたら、琴に呆れたように指摘された。

「えーっ、そうかなあ?」
「何かいい事あったんじゃないの?」
「まあ……ね」
「何々、それ。やっぱり神絡み?」
「んー、ふふふっ」

 含み笑いでごまかす私を、琴が嫌そうな顔で見る。私は素知らぬふりで手を動かした。

 だってさ、あの嘘みたいな幸せは、もう少し自分一人だけで噛みしめていたいんだもん。だってあの神が、後ろからギュッて抱きしめてくれたんだよ? 信じられる?
 あーそう言えば神、あの時何かを言おうとしてたんだよね。お父さんが入って来なかったら、嬉しい何かを言ってくれたのかなあ。

「あっ!」
 神のことで頭がいっぱいだったので、手元がおろそかになっていた。手の中のペーパーフラワーが、ぐしゃりと潰れている。

  今は、いよいよ明日から始まる学園祭の準備の時間で、私はペーパーフラワーを作る琴たちのグループに入ってその手伝いをしていた。私を含めたモデルを務める八人は担当こそ割り当てられてはいなかったけれど、準備期間が暇だからと、各々好きな作業にあたっているのだ。

「モデル担当のみんなー、衣装が届いたから着てみてくれない?」

 衣装担当の小林さん達が、手を叩きながら大声で呼び掛けた。

 一応私もモデルだけど、私の衣装はもう決まっているから関係ないかな。ただ小林さんから衣装を一式持ってくるように言われたから、持っては来たけど。

 でも神のウエディング姿はとても興味があるので、手は動かしながら集まっているみんなの方に視線を向けた。

「加代子、何やってるのよ。衣装持って来たよね? それ持って来てよ」
「えっ? 私も?」
「そうだよ、ほら早く」

 小林さんにせかされて、家から持ってきた衣装の入った袋を持って前に出た。

「男子はさ、隅に行って後ろ向いて着替えて。女子はブレザーを脱いで上だけ着替えてくれる?」

 小林さんのテキパキとした指示に、誰も文句を言う者はいなかった。彼女にはそのくらい貫録があったのだ。

 私はベストにロングジャケットを羽織り蝶ネクタイを付けた。ベストは私の物。このジャケットに合ったので、今日持って来てみたのだ。

「わあ、格好いいじゃない田野中さん!」
「そう言う雛子こそ。王様、素敵だよ」

 女子の方は上だけの着替えでいいという事もあり、みんなすぐに着替え終わった。

「学生服の方も、女子が着ると感じ変わるね」
「本当だね」

 わいわいと燥ぐ私達を、小林さんが顎に手をやり考える素振りをしながら見ている。

「んー、やっぱりみんなさ、悪いけどトイレに行って下も履き替えてみてくれる?」
「えー?」
「サイズも確認したいし、それにどんな感じかちゃんとやっぱり見てみたい」
「ああ、そうだね。パンツのウエスト合わなかったらヤバいよね」

 そう言ってみんな、ぞろぞろと歩き始めた。私は自前のパンツだから必要ないだろうとのんびりしていたけれど、結局小林さんに急かされて、私もトイレに着替えに行く羽目になった。
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