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第二章

女子の群れ

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「あっ、そうだ神、今日一緒にお昼ご飯食べようね!」
「ああ、いいよ」

 神はいつものように、気安く軽く頷いた。その軽さにムッとして、私はしつこく念を押す。

「ちゃんと聞いてる? 絶対だからね」
「わかったってば!」

 煩いなあといった感じの神に、やっぱりちゃんと聞いてないじゃないと思って、神の腕を掴んだ。

「だって神ってば、これくらい念押ししないと他の子に誘われたらさっさといなくなっちゃうじゃないの」
「そうだっけ?」
「そうだよ! もう!」

 私がこんなふうにお強請りのような文句を言っている時、いっつも神は可笑しそうに笑っているだけで真剣に聞いてはくれない。愚痴る私に、優作お兄さんが笑いながら話し掛けてきた。

「ああそうだ、加代子ちゃん」
「ん? なんですか?」
「昨日デザートを作り過ぎちゃったから神にマカロンを持たせたんだけど、加代子ちゃんの分も分けてあるから一緒に食べて」
「ええっ? いいの?」
「もちろん、そのつもりで二人分用意したから」
「やったー! 優作お兄さん大好き!」
「ハハッ、オーバーだなあ」

 マカロン、マカロン! しかもお兄さんの!

  真剣に向き合ってくれない神にモヤモヤしていたけれど、優作お兄さんのスイーツが食べられると聞いて、そんなものはどこかに吹っ飛んでしまった。機嫌良く隣の神を見ると、今度は神の方がなんだか面白くなさそうな顔をしている。

  ……なんだろう。もしかして神のお兄さんなのに、私にまで気を遣っていることに怒っているの? そんなにブラコンなんかじゃなかったと思ったけど……。

  学校に着くと、相変わらず女子の群れが神を待ちわびていた。壮観だ。
  こうやって自分をアピールすることに積極的な子たちは、みんな自分に自信のある綺麗系の子たちばかりだ。だからみんな校則違反にならない程度の完璧なメイクで、しかもヘアアレンジさえ忘れないという徹底ぶりで神を待っている。おかげで朝の校門前は、いつも気合いの入った女子の集団で、無駄にキラキラと輝いているのだ。
 
 で、私はどうしているかって? 私も一度みんなの頑張りっぷりに触発されて、ナチュラルメイクにハーフアップのスタイルにしてみたんだけど、なぜか神には不評だった。みんなには言わないけれど、もしかしたら神は、化粧する女の子はあんまり好きじゃないのかもしれない。……でも、それにしては結構嬉しそうに、女の子たちを見ているんだよね。

「神、おはよう」
「神先輩おはようございます」

 神に気が付いたみんなが、我先にと駆け寄ってくる。この時ばかりは、下級生すら遠慮というものを知らない。それに対して神は、めっちゃ笑顔だ。

  女の子に対して心底優しい彼は、分け隔てることなくみんなに平等な態度を取るため、神と接したことのある子は大体が彼に夢中になってしまう。彼自身がお世辞抜きで格好良いからよけいにね。
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