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第一章
そこは私の場所なの!
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「家に来るのは久し振りだなあ……」
日曜日の午後、なんとなく暇を持て余して神に会いたくなった私は、久し振りに彼の家を訪れてみた。連絡なんてしていない。居なければ居ないでいいと思ったから。明日は学校だし、しかも私達は同じクラスで、絶対に会えるわけだから。
ピンポーンとチャイムを鳴らすと、二十代前半の綺麗な男の人が顔を出した。神のお兄さんだ。
ヤバい。元々よく似た兄弟だと思っていたけど、しばらく会わない内に神を大人にして色気倍増させた風貌になっている。
もちろん私が好きなのは神だけど、こんなによく似て、しかも神より格好良いとあってはドキドキしちゃうのも無理ないよね。
「あれっ? もしかして加代子ちゃん? 久しぶりだね」
「優作お兄さん、お久しぶりです。あの、神いますか?」
「神ね……。いるよ、どうぞ入って」
「失礼します」
靴を脱ごうとしてふと見ると、どう見ても女子の物だとしか思えないスニーカーがある。
この家に女の人はおばさんしかいないし、おばさんの物かもしれないけど……。なんか違和感。
「ちょっと待ってて」
お兄さんは私をリビングで待たせて、奥の部屋へと入って行った。
それから待つこと数分。だけど神は、ちっとも顔を見せようとはしなかった。
そう言えばお兄さんの様子、少しおかしかったよね。おまけにあのスニーカー。
ちょっと見に行ってみよう。
私は待つのを止めにして、神の部屋に向かうことにした。
小学校のころまでは、よく家族と一緒にこの家に遊びに来たものだ。だから神の部屋がどこなのか、ちゃんと覚えている。
リビングを横切って、階段を上る。確かその二番目の部屋が、神の部屋だ。近付くと、中から話し声が漏れてきた。よく見ると、ドアはほんの少しだけ開いている。
「……だからさ、先約がいるんだから加代子にはうまく断ってよ」
「そうは言ってもな、せっかく加代子ちゃんが来てるんだぞ」
「加代子が来たからって、美人の有理奈さんとの時間を放棄出来るわけないじゃないか、なあ?」
「ねー?」
「なんですって!」
相変わらずの神の態度にぶち切れて、思いっきりドアをバタンと開けた。
「うわっ! びっくりしたー。いたんだそこに」
急に私が現れたのに神も驚いていたけど、有理奈さんなんて心底驚いていて、神に飛びついていた。
ちょっと~。……失敗した。もっと静かに入ってくれば良かった!
……て、私だと分かってもう落ち着いたはずなのに、有理奈さんは未だに神にしがみついたままだ。
「そこ! そこ私の場所なんだから離れて!」
「はい~?」
美人な顔を歪め、有理奈さんが下から私の顔をねめつける。
「離れてよー」
「嫌ぁ」
「いーやーだー」
なんとか有理奈さんを神から引きはがそうと躍起になるのだけど、彼女の腕はさっきよりも神の腕に固く絡まっている。
「もう~!」
学校一の美女だか何だか知らないけど、彼女はいつも強気だ。三年生のくせに年下に譲ろうという気なんてこれっぽっちも無い。
日曜日の午後、なんとなく暇を持て余して神に会いたくなった私は、久し振りに彼の家を訪れてみた。連絡なんてしていない。居なければ居ないでいいと思ったから。明日は学校だし、しかも私達は同じクラスで、絶対に会えるわけだから。
ピンポーンとチャイムを鳴らすと、二十代前半の綺麗な男の人が顔を出した。神のお兄さんだ。
ヤバい。元々よく似た兄弟だと思っていたけど、しばらく会わない内に神を大人にして色気倍増させた風貌になっている。
もちろん私が好きなのは神だけど、こんなによく似て、しかも神より格好良いとあってはドキドキしちゃうのも無理ないよね。
「あれっ? もしかして加代子ちゃん? 久しぶりだね」
「優作お兄さん、お久しぶりです。あの、神いますか?」
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「失礼します」
靴を脱ごうとしてふと見ると、どう見ても女子の物だとしか思えないスニーカーがある。
この家に女の人はおばさんしかいないし、おばさんの物かもしれないけど……。なんか違和感。
「ちょっと待ってて」
お兄さんは私をリビングで待たせて、奥の部屋へと入って行った。
それから待つこと数分。だけど神は、ちっとも顔を見せようとはしなかった。
そう言えばお兄さんの様子、少しおかしかったよね。おまけにあのスニーカー。
ちょっと見に行ってみよう。
私は待つのを止めにして、神の部屋に向かうことにした。
小学校のころまでは、よく家族と一緒にこの家に遊びに来たものだ。だから神の部屋がどこなのか、ちゃんと覚えている。
リビングを横切って、階段を上る。確かその二番目の部屋が、神の部屋だ。近付くと、中から話し声が漏れてきた。よく見ると、ドアはほんの少しだけ開いている。
「……だからさ、先約がいるんだから加代子にはうまく断ってよ」
「そうは言ってもな、せっかく加代子ちゃんが来てるんだぞ」
「加代子が来たからって、美人の有理奈さんとの時間を放棄出来るわけないじゃないか、なあ?」
「ねー?」
「なんですって!」
相変わらずの神の態度にぶち切れて、思いっきりドアをバタンと開けた。
「うわっ! びっくりしたー。いたんだそこに」
急に私が現れたのに神も驚いていたけど、有理奈さんなんて心底驚いていて、神に飛びついていた。
ちょっと~。……失敗した。もっと静かに入ってくれば良かった!
……て、私だと分かってもう落ち着いたはずなのに、有理奈さんは未だに神にしがみついたままだ。
「そこ! そこ私の場所なんだから離れて!」
「はい~?」
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「離れてよー」
「嫌ぁ」
「いーやーだー」
なんとか有理奈さんを神から引きはがそうと躍起になるのだけど、彼女の腕はさっきよりも神の腕に固く絡まっている。
「もう~!」
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