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Dルート
1日目 核石
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[王城:牢獄]
現在俺、ワキオ、マルタの三人は牢屋に放り込まれている。
こうなった経由を説明しよう。
まず突然この世界の上空に飛ばされた俺達はそのまま垂直落下(序章参照)。そこでリリスって女性になんか宙に浮かされて一命を取り留める。が、何故か焦った様子で俺達をデカい魔法陣の中に放り投げると、いつの間にか俺達はこの牢屋の中にいた。
この間約5分。
「なんなんだよ!突然変な森に落ちたと思ったら即牢屋に入れられるなんて」
「で、でもなんかあの女性魔法陣っぽいのだしてましたよね...僕ら一瞬でこの場所に飛ばされましたよね」
「一体全体なにが起きてんのかわかんないが、とりあえず全員生きててよかった」
怒るワキオとパニクるマルタをみると、なんだか安心感が湧いてくる。まああの女性がやっていたのがガチの魔法かどうかは分からないが、とりあえず置いといて、今はここから出ることに専念しよう。
すると誰かが牢屋の前にやってくる。
「今からお前たちの取り調べをするガンテだ。お前たちは質問された内容に対し正直に話せ、嘘をついても俺の魔法ですぐにわかるぞ」
ひげを生やした40代ほどの見た目のガンタと言う男は椅子に豪快に座ると、俺達三人をゆっくりと見回す。
その気迫で場は一気に緊張感で溢れた。
「まず最初に、お前たちの名前は?」
それに対しワキオが、
「俺はワキオ!こっちはカナタで、そっちがマルタ」
と俺とマルタの方を指差す。
「ふむ、ではお前たちは何処から来た?何故空から降ってきた?」
「え~と、多分伝わんないと思うんですけど...僕たちは日本って所の学校って場所で突然怪物に襲われて、怪物を退治したらなぜか森に落下してました」(序章参照)
ガンテは首をかしげる。そりゃそうだ。突然こんなこと言われても絶対信じないだろう。
「...まあいい」
いいんだ...
「次の質問だ。お前たちは蝶の羽根を生やした男を知っているか?」
俺達はお互いに顔を見合うが、全員これに思い当たるものがないかのように首を横に振る。
その様子をガンテはじっくりと見た後次の質問をする。
「...そうだな...ではお前たちは何か特殊な力を持っているか?」
「ふっ、分かりますか?この有り余るパワーが!」
ワキオが突然立ち上がり、ガンテに対して変なポーズをする。
何やってんだこいつ...
「そんな力持ってませんよ。それより、なんで僕たちは牢屋に入れられてるんですか?」
逆にこっちが質問してみる。ここに来てから一番の疑問だ。
「突然空から落ちてきた人間、しかも魔力を持っていない人間が落ちてきたら誰でも怪しむだろう?」
「貴方がさっきから言ってる魔力とか魔法ってなんなんですか!?」
ワキオが元気よく質問する。
「...本当に何も知らないようだな。魔法とはこの星の全員が生まれながらもつ”魔力”というエネルギーを出力することで使うことができるものだ」
俺達の世界で言う機械と電力みたいなもんか。まあ名前からして薄々そんなイメージはあったが、この言葉を聞いて本当に別の世界に来たんだなと感じられる。
続けてガンテは手から小さな炎を出しながら言う。
「これは初歩的な魔法だ。強力な魔法は仕組みが細かく詠唱が必要な上魔力消費量が多い分、道具に保存したり様々な用途に使用できてとても利便性がある」
徐ろにガンテは懐から一冊の本を取り出すと
『アクティベートマジック:メガフレアの書』
と詠唱する。すると本から業火の炎が現れ、牢屋の中まで熱気が感じられるほどの熱さで燃え上がる。
「これがその魔法を保存した道具、魔道具だ。これがあれば本来複雑で使えない魔法でも魔力消費なしで扱える。一般兵や戦士、さらには一般人も自衛用にもつくらい便利だぞ」
俺達はその魔道具に釘付けになっており、あまり話が入ってきてない。
「つまりこれがあれば俺達でも魔法が使えるってことか!?おっさん!!」
「おっさんじゃなくてガンテだ。そうだな、お前らでもおそらく使えるだろうな」
興奮するワキオに満更でもない表情で返すガンテ。
たしかにこれは便利だ。是非元の世界に戻る際に持ち帰りたい。
「この反応を見るに、どうやらお前たちは無関係のようだな」
ガンテそう言うとポケットから鍵を取り出し俺達の牢屋を開けてくれた。
「すまなかったな、少年たちよ。実は昨夜、お前たちと同じくこの星の人間ではないものがこの国に襲撃したため、現在厳戒態勢になっていてな。怪しい者は全員牢屋に入れろと命令されているんだ」
俺達と同じ、この星の人間でないもの...?
「それって、なんか黒い霧で覆われた巨大な化け物とかですか?」
「いや、蝶の羽根を背中に生やした長身の男だ」
なら俺達を元の世界で襲ったやつではないか...
「てか俺達ってここからでたらどこ行けばいいんだ!?おっさん!」
「この国の一般市民は全員近くの闘技場に避難している。恐らくお前たちはVIPルームで王様から話があるだろうから無礼のないようにな」
「お、王様...」
マルタが若干声を震わせながら呟く。
とりあえず俺達はガンテについていき、闘技場に向かった。
途中中世の街並みのような景色があったが人気はなく、一定の間隔を空けて均等に兵士が並んでいるのだ見える。
無事に闘技場の入り口に入った俺達はそのままVIPルームのドアの前まで進んだ。
[闘技場:VIPルーム]
コンコンコンコンとノックし、中に入る。
中にはいると、豪華な空席の椅子が10個ほどと壁にはいくつもの絵画、そして奥には二人の男女が座っていた。
一人は60代くらいの白髪の男性。明らかにこれまであった人の中で存在感が違い、すぐにこの国の王様だと理解できる。
もう一人は10代くらいのロングヘアのドレスを着て首に金色に光る石が装飾されているネックレスを付けた女性。可愛らしくも美しい顔立ちはつい見惚れてしまうほどだ。
「よく来たな。詳しいことは牢屋での話で把握しておる」
王様がもつステッキの先には白いもやと共に俺達がさっきいた牢屋が映っている。
「そこの空席を座りなさい」
王様の言葉に甘えて俺達は空いている席に礼儀よく座る。
「さて、本来なら無関係のお主達を元の星に帰す方法を探すべきなのだが、見ての通りこの状況じゃ」
王様が指さした窓ガラスの先には、数万は入るだろう観客席が満員になるほど埋まっているのが見える。
「戦える者と兵士を全員国中に配置してこの量じゃ」
「あの、先程ガンテさんからも聞いたんですけど、昨夜この国を襲撃した奴ってそんなにヤバい奴なんですか?」
話聞く限り襲撃者は一人だけっぽいし、たった一人にこの対応は少しやりすぎな気がする。
「賊はこの星の全ての人間を皆殺しにすると言っていたようじゃ」
「え、とんでもなくヤバい人じゃないですか!色んな意味で!」
「で、でもハッタリって線も...」
ワキオとマルタが王様の言葉に反応する。
「勿論それだけならこんな大事にはならんよ、実はこの星では500年前からある予言があってな」
王様はそういうと宙に一冊の本を浮かせる。すると開かれたページから文字と絵が浮き上がっていく。
ー今より遠く。星からの黒い兵地に落ち、この星赤く染まるー
その文字と共に白黒の水墨画のような絵がアニメーションのように空中に描かれていく。
最初は国。繁栄しており民達が豊かに暮らしている。
次に場面が空に変わると、突然空は真っ黒になり、そこから沢山の黒い雨が国に降っていく。
黒い雨は黒い兵士に変化すると町の人々を襲っていき、やがて戦争が始まる。
最後に場面が星全体が見渡されるほどに引かれると、景色豊かな星は一瞬で真っ赤に塗りつぶされて、消滅してしまう。
「これは...一体...」
「大預言者マーリンが残したと言われている最後の予言じゃ。じゃがこの500年でそんなことは一度も起きず次第にただの作り話だと言われ忘れ去られてきた」
王様は顔をうつむきながら言う。
「昨夜まではの...」
「それで、突然落ちてきた俺達を警戒して牢屋に突っ込んだんだな!」
「ワキオ君、シッ!!」
興奮するワキオの口を塞ぎ黙らせているマルタ。
「今のところ異常はないが、いつその賊が仲間を連れて現れるかわからん。だから我々はこうすることしか出来ないのじゃ」
「そう...ですか」
俺は最後の質問をする。俺達の中でいちばん大事な質問だ。
「先ほどと話は変わりますが、俺達って元の世界にはどのように帰ればよいのでしょうか?」
「それがのぉ...実はほぼ無理なんじゃ」
「え?」
返ってきた返事は非情であった。
「いままでお主たちのように別の星から来た者は一人もいない。来た事例がなければ帰る事例も必然的にないのじゃよ」
「カナタ、どうする?このままこの星にいるのも悪くないって思ってたけど、なんかヤバそうな雰囲気あるし」
ワキオがマルタの手を振りほどいて俺に耳打ちしてくる。
「わかんねえよ!でもどうにか帰る方法見つけるしかねえだろ!」
ワキオに小声で返す。
これは結構まずい状況だ。いままでの話を聞く限りこのままだとこの星で戦争が起きてヤバいことになるし、俺達は帰れないからそれに巻き込まれる。つまり人生終了ってことだ。
「お父様、少し話してよろしいでしょうか?」
すると、王様の隣に座っていた少女が初めて口を開く。国王のことをお父様と呼ぶってことは、この少女はこの国の姫様ってことだろうか。
「どうしたアリスよ」
「そこの、カナタさん?でよろしいでしょうか」
「え、ハイ!よろしいです!」
突然美少女に名前を呼ばれたためキョドってしまった。
我ながら情けない返事を返してしまったな。
アリスと呼ばれた少女は立ち上がると俺の目の前まで来る。
一体何が起きようとしてるんだ...
俺はただ謎の緊張感とともにアリスを見つめる。
アリスは前かがみの体制になると、そのまま俺の胸に手を当てる。
何が起きようとしているんだぁ!?
自分の心臓の音がバクバクと聞こえてくる。
「やはり、貴方も私と同じく、核石を持っているようですね」
...え?
カクセキ?
突然謎の用語が飛び出でてきたのでびっくりする。
「核石をご存知ないのですか?」
「...えぇ、はい」
アリスはとてもびっくりした表情になる。俺もびっくりした表情にしてみる。
「アリスよ...今核石と言ったか?」
「はい、先程部屋に入ったときからカナタさんの体から私と同じものを感じられました」
俺はとりあえずワキオとマルタに小声で聞いてみる。
「なあ、核石って何?」
「知らん」
「ぼ、僕も知らないかなぁ」
「だよな...」
するとアリスが小声で会話に混ざる。
「核石とは、それぞれの星が誕生する際に固有で持っている特別な石のことです」
うわっと俺達は驚き後ろに跳ねる。
「私達はその恩恵を得て暮らしています。この星でいうと魔力と言われている概念。これは核石を体内に含んだ人間にのみ発症した新たなエネルギーのことなんです。核石は何千年を経て人類に広がっていき、今ではすでにこの星のほぼ全ての核石は消えてしまいましたが、代わりに私達全員が魔力と呼ぶエネルギーを使うことができるようになりました。」
話が飛躍しすぎてよく分からない。それはマルタもワキオも同じようだ。
「なのでこの星の核石が体内にない貴方達は当然魔力を扱えません」
「な、なるほど」
とりあえず納得しておく。
「そして、貴方からはその核石の反応が感じられます」
それがいまいち理解できない。
俺と同じ疑問を持ったマルタがアリスに質問する。
「ど、とうしてカナタ君だけなのでしょうか、僕たちにはその核石?の反応はないのですか?」
「ええ、貴方達の星では核石の使い道が違うのかも」
「ハハ!!じゃあもしかしたらカナタはそこら辺の石を食っちまったってことか!?」
ワキオが悪ノリを始める。
「バカ言うなよ。でもなんで俺だけ...てか俺達の世界ではそんな核石なんて言葉聞いたことないし見たことないですよ?」
「それは私には分かりかねません。ただ貴方が核石を体内に含んでいるのは事実」
「てか、王様とか他の人は分からなかったんですか?俺にその核石があること」
「わし達には全くわからんよ。アリスは特別でのぉ、この星での核石の最大の適合者と言われておる」
核石の適合者...?
「とりあえず話は後じゃ、今会場で兵士が全員分のご飯を配膳するようじゃぞ」
俺達は魔法で空中を浮きながら配膳されたご飯を食べながら話を続けた...
[戦艦]
ガラス窓からは無数の星が見える。
戦艦は雲のさらに上に隠れるようにその星に浮いていた。
「申し訳ありません、デストローク様...」
一人の男の前に蝶の羽根を生やした男が頭を垂らしている。
「降り立った先にまさかあのような強者がいるとは...」
「それよりもこの星への本格的な攻撃にこちらの存在が露呈したことのほうが問題だ」
「申し訳ありません!」
蝶男はそのまま土下座する。
だがデストロークと呼ばれる男は見向きもせず窓を見つめる。
「あの警戒ではそう易々と堕とせまい...貴様に再度命令をする」
「ハッ!!」
「あの国に潜入し、できるだけ多くの人間の気を引け。殺せるものは全員殺して構わん」
「それは...私一人ででしょうか?」
「勿論だ、次は無いと思え」
「ハッ!!」
蝶男はすぐにその場から姿を消す。
戦艦は不気味な機械音をあげながら確実に、少しずつ地上へと降りていった。
現在俺、ワキオ、マルタの三人は牢屋に放り込まれている。
こうなった経由を説明しよう。
まず突然この世界の上空に飛ばされた俺達はそのまま垂直落下(序章参照)。そこでリリスって女性になんか宙に浮かされて一命を取り留める。が、何故か焦った様子で俺達をデカい魔法陣の中に放り投げると、いつの間にか俺達はこの牢屋の中にいた。
この間約5分。
「なんなんだよ!突然変な森に落ちたと思ったら即牢屋に入れられるなんて」
「で、でもなんかあの女性魔法陣っぽいのだしてましたよね...僕ら一瞬でこの場所に飛ばされましたよね」
「一体全体なにが起きてんのかわかんないが、とりあえず全員生きててよかった」
怒るワキオとパニクるマルタをみると、なんだか安心感が湧いてくる。まああの女性がやっていたのがガチの魔法かどうかは分からないが、とりあえず置いといて、今はここから出ることに専念しよう。
すると誰かが牢屋の前にやってくる。
「今からお前たちの取り調べをするガンテだ。お前たちは質問された内容に対し正直に話せ、嘘をついても俺の魔法ですぐにわかるぞ」
ひげを生やした40代ほどの見た目のガンタと言う男は椅子に豪快に座ると、俺達三人をゆっくりと見回す。
その気迫で場は一気に緊張感で溢れた。
「まず最初に、お前たちの名前は?」
それに対しワキオが、
「俺はワキオ!こっちはカナタで、そっちがマルタ」
と俺とマルタの方を指差す。
「ふむ、ではお前たちは何処から来た?何故空から降ってきた?」
「え~と、多分伝わんないと思うんですけど...僕たちは日本って所の学校って場所で突然怪物に襲われて、怪物を退治したらなぜか森に落下してました」(序章参照)
ガンテは首をかしげる。そりゃそうだ。突然こんなこと言われても絶対信じないだろう。
「...まあいい」
いいんだ...
「次の質問だ。お前たちは蝶の羽根を生やした男を知っているか?」
俺達はお互いに顔を見合うが、全員これに思い当たるものがないかのように首を横に振る。
その様子をガンテはじっくりと見た後次の質問をする。
「...そうだな...ではお前たちは何か特殊な力を持っているか?」
「ふっ、分かりますか?この有り余るパワーが!」
ワキオが突然立ち上がり、ガンテに対して変なポーズをする。
何やってんだこいつ...
「そんな力持ってませんよ。それより、なんで僕たちは牢屋に入れられてるんですか?」
逆にこっちが質問してみる。ここに来てから一番の疑問だ。
「突然空から落ちてきた人間、しかも魔力を持っていない人間が落ちてきたら誰でも怪しむだろう?」
「貴方がさっきから言ってる魔力とか魔法ってなんなんですか!?」
ワキオが元気よく質問する。
「...本当に何も知らないようだな。魔法とはこの星の全員が生まれながらもつ”魔力”というエネルギーを出力することで使うことができるものだ」
俺達の世界で言う機械と電力みたいなもんか。まあ名前からして薄々そんなイメージはあったが、この言葉を聞いて本当に別の世界に来たんだなと感じられる。
続けてガンテは手から小さな炎を出しながら言う。
「これは初歩的な魔法だ。強力な魔法は仕組みが細かく詠唱が必要な上魔力消費量が多い分、道具に保存したり様々な用途に使用できてとても利便性がある」
徐ろにガンテは懐から一冊の本を取り出すと
『アクティベートマジック:メガフレアの書』
と詠唱する。すると本から業火の炎が現れ、牢屋の中まで熱気が感じられるほどの熱さで燃え上がる。
「これがその魔法を保存した道具、魔道具だ。これがあれば本来複雑で使えない魔法でも魔力消費なしで扱える。一般兵や戦士、さらには一般人も自衛用にもつくらい便利だぞ」
俺達はその魔道具に釘付けになっており、あまり話が入ってきてない。
「つまりこれがあれば俺達でも魔法が使えるってことか!?おっさん!!」
「おっさんじゃなくてガンテだ。そうだな、お前らでもおそらく使えるだろうな」
興奮するワキオに満更でもない表情で返すガンテ。
たしかにこれは便利だ。是非元の世界に戻る際に持ち帰りたい。
「この反応を見るに、どうやらお前たちは無関係のようだな」
ガンテそう言うとポケットから鍵を取り出し俺達の牢屋を開けてくれた。
「すまなかったな、少年たちよ。実は昨夜、お前たちと同じくこの星の人間ではないものがこの国に襲撃したため、現在厳戒態勢になっていてな。怪しい者は全員牢屋に入れろと命令されているんだ」
俺達と同じ、この星の人間でないもの...?
「それって、なんか黒い霧で覆われた巨大な化け物とかですか?」
「いや、蝶の羽根を背中に生やした長身の男だ」
なら俺達を元の世界で襲ったやつではないか...
「てか俺達ってここからでたらどこ行けばいいんだ!?おっさん!」
「この国の一般市民は全員近くの闘技場に避難している。恐らくお前たちはVIPルームで王様から話があるだろうから無礼のないようにな」
「お、王様...」
マルタが若干声を震わせながら呟く。
とりあえず俺達はガンテについていき、闘技場に向かった。
途中中世の街並みのような景色があったが人気はなく、一定の間隔を空けて均等に兵士が並んでいるのだ見える。
無事に闘技場の入り口に入った俺達はそのままVIPルームのドアの前まで進んだ。
[闘技場:VIPルーム]
コンコンコンコンとノックし、中に入る。
中にはいると、豪華な空席の椅子が10個ほどと壁にはいくつもの絵画、そして奥には二人の男女が座っていた。
一人は60代くらいの白髪の男性。明らかにこれまであった人の中で存在感が違い、すぐにこの国の王様だと理解できる。
もう一人は10代くらいのロングヘアのドレスを着て首に金色に光る石が装飾されているネックレスを付けた女性。可愛らしくも美しい顔立ちはつい見惚れてしまうほどだ。
「よく来たな。詳しいことは牢屋での話で把握しておる」
王様がもつステッキの先には白いもやと共に俺達がさっきいた牢屋が映っている。
「そこの空席を座りなさい」
王様の言葉に甘えて俺達は空いている席に礼儀よく座る。
「さて、本来なら無関係のお主達を元の星に帰す方法を探すべきなのだが、見ての通りこの状況じゃ」
王様が指さした窓ガラスの先には、数万は入るだろう観客席が満員になるほど埋まっているのが見える。
「戦える者と兵士を全員国中に配置してこの量じゃ」
「あの、先程ガンテさんからも聞いたんですけど、昨夜この国を襲撃した奴ってそんなにヤバい奴なんですか?」
話聞く限り襲撃者は一人だけっぽいし、たった一人にこの対応は少しやりすぎな気がする。
「賊はこの星の全ての人間を皆殺しにすると言っていたようじゃ」
「え、とんでもなくヤバい人じゃないですか!色んな意味で!」
「で、でもハッタリって線も...」
ワキオとマルタが王様の言葉に反応する。
「勿論それだけならこんな大事にはならんよ、実はこの星では500年前からある予言があってな」
王様はそういうと宙に一冊の本を浮かせる。すると開かれたページから文字と絵が浮き上がっていく。
ー今より遠く。星からの黒い兵地に落ち、この星赤く染まるー
その文字と共に白黒の水墨画のような絵がアニメーションのように空中に描かれていく。
最初は国。繁栄しており民達が豊かに暮らしている。
次に場面が空に変わると、突然空は真っ黒になり、そこから沢山の黒い雨が国に降っていく。
黒い雨は黒い兵士に変化すると町の人々を襲っていき、やがて戦争が始まる。
最後に場面が星全体が見渡されるほどに引かれると、景色豊かな星は一瞬で真っ赤に塗りつぶされて、消滅してしまう。
「これは...一体...」
「大預言者マーリンが残したと言われている最後の予言じゃ。じゃがこの500年でそんなことは一度も起きず次第にただの作り話だと言われ忘れ去られてきた」
王様は顔をうつむきながら言う。
「昨夜まではの...」
「それで、突然落ちてきた俺達を警戒して牢屋に突っ込んだんだな!」
「ワキオ君、シッ!!」
興奮するワキオの口を塞ぎ黙らせているマルタ。
「今のところ異常はないが、いつその賊が仲間を連れて現れるかわからん。だから我々はこうすることしか出来ないのじゃ」
「そう...ですか」
俺は最後の質問をする。俺達の中でいちばん大事な質問だ。
「先ほどと話は変わりますが、俺達って元の世界にはどのように帰ればよいのでしょうか?」
「それがのぉ...実はほぼ無理なんじゃ」
「え?」
返ってきた返事は非情であった。
「いままでお主たちのように別の星から来た者は一人もいない。来た事例がなければ帰る事例も必然的にないのじゃよ」
「カナタ、どうする?このままこの星にいるのも悪くないって思ってたけど、なんかヤバそうな雰囲気あるし」
ワキオがマルタの手を振りほどいて俺に耳打ちしてくる。
「わかんねえよ!でもどうにか帰る方法見つけるしかねえだろ!」
ワキオに小声で返す。
これは結構まずい状況だ。いままでの話を聞く限りこのままだとこの星で戦争が起きてヤバいことになるし、俺達は帰れないからそれに巻き込まれる。つまり人生終了ってことだ。
「お父様、少し話してよろしいでしょうか?」
すると、王様の隣に座っていた少女が初めて口を開く。国王のことをお父様と呼ぶってことは、この少女はこの国の姫様ってことだろうか。
「どうしたアリスよ」
「そこの、カナタさん?でよろしいでしょうか」
「え、ハイ!よろしいです!」
突然美少女に名前を呼ばれたためキョドってしまった。
我ながら情けない返事を返してしまったな。
アリスと呼ばれた少女は立ち上がると俺の目の前まで来る。
一体何が起きようとしてるんだ...
俺はただ謎の緊張感とともにアリスを見つめる。
アリスは前かがみの体制になると、そのまま俺の胸に手を当てる。
何が起きようとしているんだぁ!?
自分の心臓の音がバクバクと聞こえてくる。
「やはり、貴方も私と同じく、核石を持っているようですね」
...え?
カクセキ?
突然謎の用語が飛び出でてきたのでびっくりする。
「核石をご存知ないのですか?」
「...えぇ、はい」
アリスはとてもびっくりした表情になる。俺もびっくりした表情にしてみる。
「アリスよ...今核石と言ったか?」
「はい、先程部屋に入ったときからカナタさんの体から私と同じものを感じられました」
俺はとりあえずワキオとマルタに小声で聞いてみる。
「なあ、核石って何?」
「知らん」
「ぼ、僕も知らないかなぁ」
「だよな...」
するとアリスが小声で会話に混ざる。
「核石とは、それぞれの星が誕生する際に固有で持っている特別な石のことです」
うわっと俺達は驚き後ろに跳ねる。
「私達はその恩恵を得て暮らしています。この星でいうと魔力と言われている概念。これは核石を体内に含んだ人間にのみ発症した新たなエネルギーのことなんです。核石は何千年を経て人類に広がっていき、今ではすでにこの星のほぼ全ての核石は消えてしまいましたが、代わりに私達全員が魔力と呼ぶエネルギーを使うことができるようになりました。」
話が飛躍しすぎてよく分からない。それはマルタもワキオも同じようだ。
「なのでこの星の核石が体内にない貴方達は当然魔力を扱えません」
「な、なるほど」
とりあえず納得しておく。
「そして、貴方からはその核石の反応が感じられます」
それがいまいち理解できない。
俺と同じ疑問を持ったマルタがアリスに質問する。
「ど、とうしてカナタ君だけなのでしょうか、僕たちにはその核石?の反応はないのですか?」
「ええ、貴方達の星では核石の使い道が違うのかも」
「ハハ!!じゃあもしかしたらカナタはそこら辺の石を食っちまったってことか!?」
ワキオが悪ノリを始める。
「バカ言うなよ。でもなんで俺だけ...てか俺達の世界ではそんな核石なんて言葉聞いたことないし見たことないですよ?」
「それは私には分かりかねません。ただ貴方が核石を体内に含んでいるのは事実」
「てか、王様とか他の人は分からなかったんですか?俺にその核石があること」
「わし達には全くわからんよ。アリスは特別でのぉ、この星での核石の最大の適合者と言われておる」
核石の適合者...?
「とりあえず話は後じゃ、今会場で兵士が全員分のご飯を配膳するようじゃぞ」
俺達は魔法で空中を浮きながら配膳されたご飯を食べながら話を続けた...
[戦艦]
ガラス窓からは無数の星が見える。
戦艦は雲のさらに上に隠れるようにその星に浮いていた。
「申し訳ありません、デストローク様...」
一人の男の前に蝶の羽根を生やした男が頭を垂らしている。
「降り立った先にまさかあのような強者がいるとは...」
「それよりもこの星への本格的な攻撃にこちらの存在が露呈したことのほうが問題だ」
「申し訳ありません!」
蝶男はそのまま土下座する。
だがデストロークと呼ばれる男は見向きもせず窓を見つめる。
「あの警戒ではそう易々と堕とせまい...貴様に再度命令をする」
「ハッ!!」
「あの国に潜入し、できるだけ多くの人間の気を引け。殺せるものは全員殺して構わん」
「それは...私一人ででしょうか?」
「勿論だ、次は無いと思え」
「ハッ!!」
蝶男はすぐにその場から姿を消す。
戦艦は不気味な機械音をあげながら確実に、少しずつ地上へと降りていった。
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