無自覚な

ネオン

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家のこと

 1' 大悟目線 

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 小さい頃から大好きで、可愛い可愛い俺の義兄。艶のある黒い髪に零れそうな大きな瞳、ツンと上を向いた小さい鼻にぽってりとした赤い小さな唇。背丈は平均よりも少し低くて所々が折れそうな程細い。義兄らしくない義兄、梓が俺の初恋であり最愛の人だ。小さい頃から周りの奴に、梓の気を引きたいという子供じみた感情でいじめられていた。当の本人はいじめられていた理由も、学校でちょっとした嫌がらせに合ってる理由も周りに嫌われてるからだと思っている。そんな梓は無防備で危なっかしい。だから俺は兄貴と一緒に梓を守ってきた。大事な花を手折られてしまわないように。

 俺は朝に弱かった。今はそれを恨めしく思う。低血圧だから治し難いんだけど絶対治すと心に決めた。というのも普段は1階から声をかけて起こしたり、兄貴が起こしに来たりするのだが今日は梓が起こしに来た。俺は夢だと思い手を伸ばしてしまったんだ。
 
「だ…いちゃ…起き…ごは…出来て…」

 途切れ途切れに声が聞こえた気がした。その後すぐに、心地よい暗さだった部屋が光に包まれた。

「う”ぅ…まぶし」

俺は無意識にそう呟いて、布団に逃げ込む。

「ダメだよ寝ちゃ!学校に遅れちゃう。ご飯も冷めちゃうよ。」

「う、あずさ…おはよ。」
(今度はちゃんと聞こえた、さっきの声も梓のものか。梓の声は心地がいい。)

俺は挨拶も終え、幸せなまま二度寝を決め込んだ。だが俺の体温で暖まった布団が剥ぎ取られた。目を向けるとベットのすぐそばに梓がいて俺を揺すっていた。細い眉は八の字になっていて困り顔だった。

「おはよう、大ちゃん、起きてよ。」

(声だけじゃなく姿も出てきたか、今日は吉夢だな。)

俺は手を伸ばしビスクドールの様な滑らかな頬に添えて、梓の顔を近づける。近くで見る梓はあっけに取られた顔をしていて愛らしかった。そんな梓の艶々とした厚めの唇に誘われ噛みつくようにキスをする。唇を重ねる前に梓がなにか言おうとしてたがその言葉を俺が呑み込んだ。梓は息を吸いたかったのか口を開けた。そこを狙い舌をねじ込む、歯列をなぞり梓の甘い舌に俺の舌を絡ませる。

「はっぅ、う…ぅん!」
(違和感がある喘ぐ梓の声もだし、やけに感触が生っぽい?)

胸をどんどんと叩かれ、違和感が確信に変わる。俺は名残惜しく、頭に浮かんだ想像が当たってないことを願い、ゆっくり離れた。大当たりだった。すると2人の間に銀糸がかかり、ぷつりと途切れ梓の口元へと垂れる。息が出来なかったのか目が潤み、頬が桃色に染まっていた。とても扇情的で色っぽかった。俺は冷静に物事を考える暇もなく、ただ焦った。

「っん!あ、梓?」

睨み付けてくる梓は上目遣いになっていて、凄んでいるというよりは煽っている様だった。すると頭を軽く叩かれた。

「女の子と間違えない!呼び捨てにしない!僕はお兄ちゃんだよ!」

とぷるぷると振るえながら小動物のように怒っていた。

(別に女と間違えた訳じゃ無い。そもそも呼び捨てにしてるのも弟扱いから、変えてもらうためだ。てか。)
「何で入って来てんだよ、梓。」

「呼んでも起きないからだよ!ちゃんと入るよって言ったからね。起きない大ちゃんが悪い。」

頬を膨らませて梓が怒る。

「大ちゃんって呼ぶな。」
(弟のような風貌じゃあ無いだろうに、まだ弟扱いか。)

「今までそう呼んで来たんだから、変えないよ。」

拗ねて顔をそらす。するとなにかが目にとまったのか急に声を上げて慌て始める。

「あぁ!遅れちゃう。ほら大ちゃん着替えて、着替えて!」

(弟という認識は変えないんだな。でも俺が変えればいいのか。まず大ちゃん呼びから止めさせる。)
「だから、大ちゃんって」

「ご飯出来てるから支度して下来てよ。ご飯冷めちゃうからね。」

言いたかった言葉を梓に遮られ、最後まで言えないまま梓はバタバタとして部屋を出ていった。
 
 1人になり思い返すと、今更後悔の念が渦巻く。無意識とはいえ梓に手を出してしまった。引かれてないと良いが。兄貴にばれたら殺されるな。だけど色っぽかったな、梓。1人きりなら何度でも可愛いと言えるのに本人の前だと素っ気なくなってしまうのは思春期だからか?そんなことばかり考えていたが、とりあえず言われた通りに制服に着替えてカバンを持ち、梓より少し遅れて下へ行く。





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